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両親ともオスの赤ちゃんマウス誕生

2023-04-18 10:38:16 | 自然
iPS細胞の利用については、私はこのところやや疑念を持っています。

万能細胞であるiPS細胞から必要な臓器の細胞が作れることは、再生医療の分野で大きな進展を期待していたのですが、それほど簡単なことではないようです。

最近オスを両親に持つ赤ちゃんマウスが誕生したことがニュースになっています。これは大阪大学や九州大学などの研究チームが、iPS細胞の技術を使ってオスの身体の細胞から卵子を作ったというものです。原理上は人間でも男性同士の間にも子供ができる可能性があるとしています。

一般にヒトやマウスなどの哺乳類は、オスでXY、メスでXXの2本の性染色体を持っています。オス由来のiPS細胞のXYをXXに変えることができれば、成長して卵子になるはずです。大阪大学のチームは、「Y染色体の消去」と「X染色体の複製」に挑みました。

Y染色体はX染色体より短く、分裂を重ねると自然に消滅することがあります。そこでチームはオスのマウスの皮膚から作ったiPS細胞を長時間培養し、YがなくなりXが1本だけ残った細胞を選び出しました。

さらにX染色体が1本だけになった細胞が二つに分裂する過程で、2本に複製されたXが誤って片方の細胞だけに入り込み、偶然XXができる現象を利用し全く同じX染色体を2本持つオス由来の卵子に育て上げました。

これは素晴らしい成果だとは思いますが、人工的な工夫があるわけではなく、あくまで自然現象を利用したという点でもう少し工夫の余地があるような気もします。まあ自然にできたというところに価値があるのかもしれません。

チームは別のオスの精子とこの卵子を体外受精させ、受精卵630個を十数匹のメスのマウスの子宮に移植しました。その結果遺伝的には両親ともオスであるマウスが7匹誕生しました。いずれも順調に成長し、うち2匹は他のマウスと交配して子供を作ることもできたとしています。

これは非常に興味ある研究結果ですが、果たして応用する分野があるのでしょうか。前述の男性同士の間に子供を作るという事が考えられますが、一方の男性の細胞からのiPS細胞から卵子を作ることは可能でしょう。

これを受精卵とした後にこれを胎児とするためには、誰か女性の子宮が必要となります。こういった代理母が簡単に見つかるのか、また見つかったとしても着床率が低いことから赤ちゃんができる可能性は非常に低いと考えられます。

またiPS細胞から卵子にするだけでおそらく何千万円ものコストの負担が必要となります。つまり現実的には不可能といえる気がします。

今回の研究成果は、研究としては評価できるもののあまり現実的なものではないといえます。どうもiPS細胞研究には、こういった問題点が常に付きまとっているような気がします。


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