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眼科における再生医療の進歩「iPS細胞」への期待

2023-01-25 10:33:34 | 健康・医療
少し前に私は初めて「眼科検診」を受け、その結果黄斑部をはじめ異常がないことを確認しました。当分は眼に関しては問題がないとお墨付きをもらったことになります。

2014年に理化学研究所の研究グループが、滲出性加齢黄斑変性の患者に対するiPS細胞由来の網膜色素上皮の移植を成功させたことが大きく報道されました。

網膜は視細胞を起点とした神経細胞ネットワークでできていて、そこに入った信号は視神経に集約されて脳に送られ、初めて「見える」ことになります。つまり見えることに貢献する主役は網膜の神経細胞(神経網膜)です。

一方網膜色素上皮細胞は網膜の土台であり、脈絡膜側から主に網膜の視細胞に栄養を送る役割をして網膜機能を支えています。前述の手術で移植された細胞は、iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞でした。

加齢黄斑変性やほかのさまざまな網膜の病気では、視機能が侵される一因がこの網膜色素細胞が機能不全に陥ったことですので、そこに新鮮な色素細胞を移植することで網膜機能を維持しようとする狙いです。

理研の研究グループは、適応症例を「網膜色素上皮不全症」という範疇に限定して研究を進めています。この研究は見えるための主役である神経網膜を移植したわけではないという点です。

神経網膜がすでに大幅なダメージを受けてしまった網膜や視神経の病気では、この治療は無意味で治療の対象者は非常に限定的なるわけです。網膜神経細胞を作ることができれば、緑内障や視神経症などの網膜疾患といった視覚障害に至る多数の病気に応用できます。

しかし神経細胞はそもそも再生能力がほとんどありません。網膜の神経細胞は特化した何種類かの細胞で構成され、それらが整然とネットワークを形成して初めて機能します。

また網膜内でうまく機能しても、網膜で受けた視覚情報が適切に脳へと伝わらなければ見えることにはなりません。網膜神経細胞の再生医療に関しては、こういったまだ長い道のりが残っていますが、角膜の上皮については近年目立った進歩があります。

角膜は外界と接する角膜上皮細胞、角膜実質、角膜内皮細胞層とで構成される透明な器官です。濁りが高度になった場合には角膜移植という手段が古くから用いられていますが、拒絶反応や再発の問題が常にありました。

最近では角膜の全層ではなく、層別に移植する技術も進んでいます。しかしこうした移植には角膜提供者が必要であり、そこで胎盤由来や患者自身の口腔粘膜の上皮や角膜輪部の上皮を培養して増やし、シート状にして移植するなどの挑戦が行われています。

眼の病気については先のiPS細胞由来の移植で解決するのかと思っていましたが、現実的にはまだまだ難しい課題が残っているようで、ヒトの組織というものはそれほど簡単ではないという証拠かもしれません。


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