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尿検査でここまで分かる

2020-12-08 10:31:37 | 化学
通常の健康診断でも必ず尿検査をしますが、尿を詳しく検査すると非常に多くの病気がわかるように進歩しています。

検診では試験紙で判定できる、タンパク尿や潜血反応しか見ていませんが、しっかりした解析をすると内臓疾患や精神神経科の病気まで判定できるようです。

私が現役のころ、開発中の薬剤が尿中にどのくらい排泄されているかを調べてほしいという依頼を受けたことがあります。当時は高速液体クロマト(HPLC)がかなり進歩していましたので、簡単にできるだろうとラットの尿をいくつか送ってもらいました。

この薬剤はUV吸収がありましたので、その検出器で調べたところ数十の物質が検出されましたが、なんとか目的とする薬剤の定量法を作ることができました。

この時尿中にはどのくらい物質が出ているのか、より感度が高くどんな物質でも検出できる検出器に代え分析してみました。するとこのHPLCで分離できるものだけでも、百種類以上もの物質が出ていることが分かりました。

また何回かの尿が来ていたのですが、その採尿時期によって全くパターンが異なっていました。データベースによりこの内十数種は何であるか同定できましたが、尿の分析というのは本当に奥深いものだと感じました。

さて現在の「尿検査」でわかる病気は、腎臓病や膀胱・尿管・尿道の病気のほか、血液の病気や心臓病、肝臓病、膵臓病などが判定できるようです。

さらにホルモンバランスの崩れによる病気、体内にできた腫瘍、ストレスなど精神神経科の病気の一部も尿の成分からわかるようになりました。

サプリメントの製造・販売を手掛けるファンケルは、今年2月尿から不足する栄養素を識別し、オーダーメイドでサプリメントを提供する事業を開始しました。このサービスはネットから申し込み、食生活や生活習慣に関する45問のアンケートに回答すると、自宅に検査キットが届きます。

検体(尿)は採尿当日中にポストに投函すればよくなっています。約1週間で不足する栄養素が報告され、最適なサプリの組み合わせの提案を受けられます。サプリは全33種類で、価格は検査キットが5000円、サプリが月額4000円からとなっています。

これは従来の尿検査ではできなかった亜鉛や鉄などのミネラルが新たに検出できるようになり、ビタミンB1やカルシウムなど6種類の栄養素の過不足が判定できるとしています。

さらに今年8月国立国際医療研究センターの研究グループは、新型コロナの重症化リスクを尿検査で予測できる可能性があるとの研究成果を発表しています。

このように尿に含まれる多種の物質を正確に測定できるようになりましたので、予想以上の多くの病気が尿検査だけで判定できるようになるのかもしれません。この文章の一部は「日経電子版」に掲載の記事をもとにしています。


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