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知見が深まるほど増えてくる「遺伝子」の謎

2022-05-01 10:25:54 | 自然
最近は「遺伝子」という言葉が一般的になり、例えば新型コロナも遺伝子解析によりどの部位が変異した変異株かなどが簡単にわかるようになってきました。

また新型コロナのワクチンはRNAからできていることも広まり、DNAやRNAという言葉も普通に使われています。

しかし遺伝子は本当に奥が深く、新しい知見が出てくるとまだまだ謎が深まるという状況のようです。ここではやや専門的になりますが、「遺伝子とは何か」の最新情報を紹介します。

ヒトゲノムの解読が最初に発表されたのは2001年ですが、その時の2つの報告では遺伝子の数は約31,000個および26,588個と予想されていました。次いで2003年にはより詳細なゲノム配列情報が確定されましたが、それに基づき推定されたヒトの遺伝子数は22,287個でした。

さらに約20年後の現在ではアメリカのデータベースで20,203個、ヨーロッパを中心としたデータベースで19,982個となっています。このようにヒトゲノムの塩基配列自体は、2003年度版から大きく変わっていないにもかかわらず、遺伝子の数は少しずつ異なっています。

ここに遺伝子というものの難しさがあるようです。この遺伝子の歴史はメンデルがエンドウの花の色や種子の色などの形質を、親から子供へと伝えていく「因子」に相当する言葉として1909年に遺伝子は定義されています。

そこから遺伝子とタンパク質を結びつけるための研究が進み、その研究成果の結晶として確立されたのが「セントラルドグマ」でした。

これは簡単にすると、DNA上の塩基配列をコピーしたmRNAが核で転写され、細胞質のリボソームへと運ばれ、その塩基配列の並びに従ってアミノ酸が結合されて、酵素などのタンパク質になるというものです。

つまり遺伝子はタンパク質をコードするDNAとして完全に解明されたこととなりました。しかしその後ノンコーディングRNA(ncRNA)と呼ばれるタンパク質をコードしないRNAが、生物の形質を左右する事例が次々と報告されるようになりました。

つまりタンパク質をコードしないDNAも遺伝子であることが分かり、遺伝子の定義はどんどん複雑化していったのです。

例えばヒトのGAS5という遺伝子を例にとりますと詳細は省略しますが、当初一つの遺伝子と考えられていましたが、その中にはncRNAが複雑な形で含まれており、現在では10個のncRNAがあり、計11個の遺伝子が存在していることが判明しています。

その後もncRNAだけではなく同様の働きをするsnoRNAなどという部位も見つかり、ますます遺伝子とは何かが難しい問題となっているようです。

多分これからも新しい働きのDNAの一部が見つかったりすれば、また遺伝子の数や定義は違ってくるのかもしれません。なじみのある遺伝子ですが、その奥はまだまだ深いといえそうです。


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