ごっとさんのブログ

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通常時にも出現するオートファジーの仕組み

2022-02-25 10:25:45 | 健康・医療
細胞が自己を食べてしまうという「オートファジー」は飢餓時の栄養源確保と考えられていましたが、通常時にも生じていることが徐々に分かってきたようです。

飢餓状態ではオートファジーによって成分を包み込んだ袋「オートファゴソーム」が急にたくさん出現するため、オートファジーが起きていることが分かりやすくなります。

この時LC3というタンパク質がオートファゴソームの膜に特異的に結合することを見出し、LC3を蛍光で光らせることでオートファゴソームを光学顕微鏡で簡単に観察できるようになりました。

体重60キロの成人の場合、体の中で1日に約240グラムのタンパク質が作られています。ところが食事から摂取するタンパク質は約70グラムで、これを分解してできるアミノ酸だけでは材料が足りなくなります。

この不足分を細胞中のタンパク質をオートファジーなどで分解してアミノ酸にしているのです。240グラムのタンパク質というとステーキにしてもかなりの量ですが、細胞は37兆個もあるので、細胞1個当りの量はわずかで、細胞内のタンパク質の1〜2%を分解して、アミノ酸を材料に新しいタンパク質を作っています。

オートファジーによって分解されるのはタンパク質だけではなく、高分子や超分子複合体、オルガネラ(細胞小器官)などさまざまなものを分解し新しいものを作っています。これを細胞成分の新陳代謝で「代謝回転」がオートファジーの2つめの主要機能となっています。

オートファジーに必須な遺伝子が発見され、遺伝子工学を使ってオートファジーが起きないマウスを作ることができるようになりました。このマウスを観察すると、オートファジーが起きない臓器の機能に異常が生じました。

これはオートファジーによる細胞の中身の入れ替えは細胞の維持に不可欠であることを示唆しています。細胞の中にあるものを分解して同じものを作ることで、何日かで細胞の中身がすべて入れ替わり、新しい状態が保たれるのです。

オートファジーは日本語では「自食作用」と訳されるとおり、自己の成分を分解する現象とされてきました。ところがオートファジーは自己成分を分解するだけではなく、細胞内に入ってきた細菌などの有害物を隔離して除去する機能も持っていることが分かってきました。

この様にオートファジーは細胞が機能不全を起こして疾患に陥ることが無いように仕組まれた、非常に重要な機能と言えます。

オートファジーの研究は、まだまだ新たな知見が発見されている研究段階にあるようで、これからどんな発見があるのか楽しみな分野でもあるようです。