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認知症予防ワクチン開発

2020-04-11 10:22:37 | 健康・医療
京都大学などの研究チームは、アルツハイマー病の原因とされる物質が脳内にたまるのを防ぐワクチンを開発したと発表しました。

認知症になる動物を使った実験で、脳の変化や行動の異常を抑えられ、将来認知症の予防や治療の選択肢になる可能性があります。

認知症の中にはアルツハイマー病のように、脳内に「タウ」というタンパク質の異常な蓄積がみられる種類があります。これをタウオパチー型認知症と呼んでいますが、発症した時には脳内の病変の進行が進んでいるため、予防法の開発が必要とされています。

さらに加齢がこれらの認知症を罹患するリスクになりますので、今後高齢者の増加とともに認知症が増加することが予想されています。

これまでタウオパチーを呈する認知症のカギ分子であるタウタンパクを標的とするワクチン開発は、タウタンパクを注射する方法やタウタンパクに対する抗体を作製する方法が研究されていますが、どちらも何度も注射することが必要で、抗体は高価であることも知られています。

研究チームは変異型タウタンパクを細胞外に分泌するように設計した遺伝子治療用のセンダイウイルスベクターを作製し、タウオパチーモデルマウスにおける点鼻ワクチンの効果を検討しました。

この点鼻ワクチンにより、モデルマウスの脳において、抗タウ抗体価の上昇、タウタンパク蓄積の減少、グリア炎症の改善が示されました。

また脳MRIで観察される脳萎縮の改善と、PETを用いた分子イメージングによる脳炎症反応の改善、さらに行動試験による認知機能障害の改善も示されました。これらの結果からタウに対するワクチンは、モデルマウスの病態抑制に有効であることが示されました。

具体的にはワクチンを投与したマウスでは、認知症で脳が委縮する面積を、無投与のマウスと比べて3分の2程度に抑えることができ、健康なマウスに近い行動をとるようになりました。またマウスを飼育した8か月間では、問題となるような副作用は見られませんでした。

このようにウイルスの場合と同じように、タウタンパクを作り出す遺伝子を投与すると、タウタンパクに対する抗体ができ、ワクチン効果が出るというのは興味深い結果です。

このタウオパチー型認知症は、国内に300万人程度いると推定されていますが、症状を改善する薬はあるものの、根本的に治す方法はありません。

このワクチンをヒトに応用するには、安全性をはじめ臨床試験まではまだ多くの課題が残っていますが、新しい予防・治療法として期待が持てるような気がします。