ごっとさんのブログ

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ゲノム編集で「DNAを手術」する時代

2019-12-21 10:11:45 | 健康・医療
ゲノム編集技術「クリスパー」を使って2種類の遺伝性疾患を治療することに、欧米の研究チームが成功しました。

まだ予後の経過を見極める必要があるという状態ですが、これまで方法がなかった難病を遺伝子レベルで治療する新たな時代が幕を開けたとの見方が強まっています。

2012年頃に米仏の科学者らによって開発されたクリスパーは、いわゆるゲノム編集技術の最新モデルです。従来の遺伝子組み換え技術に比べて、けた違いに高い精度で生物のDNA(ゲノム、遺伝子の総体)を操作することができます。

今回この技術を使って、スイスとアメリカのベンチャーが、2種類の血液疾患を対象にした新たな治療法を開発しました。治療対象となった血液疾患は「鎌状赤血球貧血」と「ベータ・サラセミア(地中海貧血)」です。

鎌状赤血球貧血は世界全体に数百万人の患者が存在するとみられる遺伝性疾患で、特にアフリカ系の人たちに発症するケースが多いようです。

酸素を運ぶ赤血球が鎌のような形状に変形することにより血液循環が阻害され、強度の貧血が起きて患者はしばしば突発性の激痛に悩まされ、身体への大きな負担から平均寿命も短いと言われます。

地中海貧血もまた遺伝性の希少疾患で、赤血球中にあるヘモグロビンの生成が著しく低下するため、患者は度重なる輸血が必要となります。いずれの病気も従来の医療では根治不能で、症状を鎮める対症療法しかありませんでした。

これらの難病に対し、ベンチャー2社は「CTX001」と呼ばれる新たな治療法を開発しました。この治療法では、患者の骨髄細胞を一旦体外に取り出し、クリスパーでゲノム編集して病気を引き起こす遺伝子異常を修正します。

この修正した骨髄幹細胞を患者の体内に戻すと、これが正常な赤血球を生成することにより血液疾患は治癒することになるわけです。今回の臨床研究は世界2カ所に分かれて実施され、いずれの患者も一度の医療措置で治療が完了しました。

鎌状赤血球貧血の患者は、治療以前は年に平均7回発作を起こして病院に搬送されていましたが、治療後は現在まで4カ月の間一度も発作が起きていません。

また地中海貧血の患者は、以前は年に16回以上の輸血を受けていましたが、治療後は現在まで9カ月の間一度も輸血を受ける必要がなかったようです。

この様に素晴らしい成果を出していますが、問題は高額の医療費です。総額を明らかにしていませんがおそらく200万ドル(2億円以上)以上の治療費となるとみられています。

この辺りは日本のiPS細胞を使った治療でも数千万円という事と似ていますが、大きな進歩ではあるものの一般の治療とはまだかけ離れているような気がします。