ごっとさんのブログ

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脳の再生力を高める細胞を発見

2018-04-19 10:48:05 | 自然
イギリスケンブリッジ大学の研究グループが、再生能力を持つ脳の休止細胞を発見しました。これにより脳の自己治癒能力を高める方法が存在する可能性が出てきました。

脳は自己治癒力に乏しく、かつては脳卒中やアルツハイマー病などによって一度損傷を受けると再生しないと考えられていました。しかし脳科学の進歩によって、損傷された脳を修復するいわゆる再生医学の研究が、積極的に進められています。

このほど細胞の自己複製能力と別の種類の細胞に分化する能力を併せ持つ「幹細胞」のなかに、脳の損傷や疾患から再生する力を持つものが存在することが分かりました。

ケンブリッジ大学の研究プロジェクトが、本年4月既知のものよりも高い再生能力を持つ、新たな脳の休止幹細胞を発見したことを報告しました。G2期(細胞周期における分裂前準備期)で休止状態になっているこの幹細胞は、活性化されると脳の神経細胞や神経膠細胞において重要な細胞を、既知の幹細胞よりも早く生成するのが特徴のようです。

幹細胞は、脳のあらゆる細胞を生成する能力を持ちますが、通常は休止状態にあり、新しい細胞を増殖させたり生成したりすることはありません。従って幹細胞に働きかけるに際し医療においては、まず幹細胞を休止状態から活性化させることが不可欠となります。

そこで研究プロジェクトは、ヒトのDNAとよく似ており、疾病に関連するヒトの遺伝子の60%が存在するショウジョウバエを使って、G2期で休止状態となっている幹細胞を制御する「Trbl」という遺伝子を特定し、この遺伝子がG2期にある神経幹細胞を休止状態へと誘っていることを明らかにしました。

つまり何らかの再生誘導医薬が「Trbl」に働きかけることによって、G2期で休止状態になっている幹細胞を再び活性化できるかもしれないということになります。

研究プロジェクトでは、今後「Trbl」を阻害し、脳の幹細胞を活性化させる分子の特定に取り組む方針です。今回のように遺伝子を抑制する薬剤というのは、色々な方面で見つかっていますので、部位が脳というところにやや難しさはあるのかもしれませんが、見つかる可能性は高いといえます。

現在の再生医療は、幹細胞を前もって作成し組織に加えるという方法が主流ですが、このように生体内に眠っている幹細胞があれば、それを活性化する方が拒絶反応その他の多くの問題が出ませんので、優れた治療法になるような気がします。

脳以外の器官にも同様の休止幹細胞があるとみられており、この研究成果は再生誘導医療という方面の進歩に寄与するものとして評価されているようです。