ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

食品とアクリルアミド

2018-04-15 10:42:48 | 化学
2002年にスウェーデン国立食品局の研究報告によって、ごく一般的な食品や家庭料理にも含まれている「アクリルアミド」という成分に発ガン性があることが指摘されました。

この報告では、高温で調理された炭水化物を多く含む食品に高濃度で検出されたとしており、特にフライドポテトやポテトチップスなどの検出率が高く、食品業界に大きな波紋を投げかけるものとなりました。

これにより世界中でアクリルアミドに対する関心が高まり、日本でも2011年に食品安全委員会において、「加熱時に生じるアクリルアミド」についての健康影響評価を行うことが発表され、2016年4月に取りまとめられました。

その評価によると、フライドポテトなどの日本人の推定摂取量が意外に少ないのではないかと見られています。食品中のアクリルアミド濃度と食品摂取量、摂取頻度などから、推定平均摂取量を産出すると平均的な摂取量は、0.240μg/kg体重/日と算出されました。

これがどういう意味を持つのか全く示されていませんが、単に数値だけ出すだけでは何を言いたいのかよく分かりませんでした。多分全く危険性がある量ではないということだと思っています。

アクリルアミドは私にとってはかなり身近な化合物で、よく使用している物でした。本来の用途はポリアクリルアミドという高分子樹脂の原料で、非常に広く利用されています。科学の分野ではゲル化したものが、電気泳動の担体として使われています。

アクリルアミド自身は分類的には毒・劇物に指定されている、無色の結晶で、皮膚からの吸収もあるとされていました。それでも手袋もせず普通に試薬として扱っており、私としては特に危険なものという認識はありませんでした。

有機化学で扱う試薬や溶媒はほとんどが毒・劇物に指定されており、その中の一つの便利な試薬程度で、たぶんそれほど危険性はないものだと思っています。

しかし食品中に含まれるというと、過度に敏感に反応する報道が多いような気がします。今回もフライドポテトより、野菜炒め中の方が多いとかごく微量で気にする必要のないものを比較したりしています。

食品安全委員会も「非発ガン影響(神経や免疫に対する影響など)については極めてリスクは低い」としながらも「発ガン影響については、人における健康影響は明確ではないが、公衆衛生上の観点から懸念がないとは言えない」というはっきりしないものでした。

炭水化物を加熱するというのははるか昔から行われている調理法で、いわば何千年ものあいだ安全が確認されている方法をいまさらという気がします。