ごっとさんのブログ

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人間とヒツジのハイブリッド胎児の作製に成功

2018-03-10 10:44:58 | その他
アメリカのカリフォルニア大学の研究チームが、ヒト細胞を0.01%もつヒツジの胎児の作製に成功したと発表しました。

昨年の人間と豚のハイブリッド胎児に続き、2例目となるものです。4週が経過する時点まで育てられたこのヒツジの胚は、人間への移植を目的とした臓器作成に向けての一歩前進といえる成果です。

アメリカ国内だけでも、心臓移植を必要とする人は10万人以上にのぼりますが、実際に移植を受けられる人は1年にわずか200人となっています。こうした現状を受けて、研究者は人為的に臓器を供給できないか、様々な試みを行っています。3Dプリントで臓器を作ろうとする人もいれば、機械的な臓器を研究する人もいます。

キメラ動物(異なる2種の生物に由来する細胞を併せ持つ生物)を作ろうというのもそうした試みの一つで、ブタやヒツジの体内で人間の臓器を育てる方法を模索しています。キメラを作るには、ある動物の幹細胞を別の動物の胚に導入しますが、幹細胞はどんな細胞にも成長できますがこれを適切に導入するのは非常に難しい処置のようです。

この時胚のDNAを編集し、特定の臓器を作らないようにしておくと、導入された幹細胞はそのギャップを埋め、その臓器へと分化していくわけです。2017年には、この手法を用いてラットの体内でマウスの膵臓を育てることに成功し、さらにその膵臓を移植することによって、糖尿病のマウスを治療できることを証明しました。

その直後、ヒトの幹細胞を導入したブタの胚を4週間成長させることに成功しました。この辺りはこのブログでも紹介しています。

幹細胞の専門家はこの成果を評価しつつも、ブタの胚がもつヒト細胞の割合(およそ10万個に1個)は、臓器移植に使うには低すぎるとしていました。今回の羊の研究チームは、実験の手法を工夫した結果、ヒツジ胚がもつヒト細胞の数を1万個に1個まで増やすことに成功しました。

しかし臓器移植に使用するには、胚の1%(100個に1個)がヒト細胞でなければならないようです。それでも今回の研究は、実用可能な臓器作成に向けた進歩といえるようです。

これも研究資金が増えれば、研究のスピードは加速されますが、現在人間と動物のハイブリッドを作る研究に公的資金を投入することが禁じられています。それでもアメリカ国立衛生研究所は、昨年この方針を取り消す可能性を示唆しているようです。

こういった研究には倫理面での議論が必ず付いて回りますが、人間の脳や顔を持った動物ができるはずはなく、それほど深刻に考えることでは無いような気もします。効率よくヒトの細胞でできた臓器が作られる世になれば、チャンスの少なかった臓器移植に希望がもてるようになるでしょう。