ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

高性能消臭剤 多孔性素材実用化へ

2018-03-09 10:42:37 | 化学
京都大学の研究チームが開発した「多孔性金属錯体(PCP)」を基に、京都の中小企業が高性能の消臭剤を開発しました。

タバコなど従来は残りがちだった臭いを効率的にのぞけるようです。商品化されれば、国内で初めてのPCPの実用化になるとみられています。最先端の知見を持つ京都大学と、長年販売実績のある中小企業がうまくタッグを組んだ形となっています。

PCPは金属イオンと有機配位子によって作られる、多孔性配位高分子金属錯体のことで、規則正しく並んだ格子状の物質です。この物質の比表面積は1グラムでテニスコートおよそ27面分にも相当し、活性炭のおよそ10面分、シリカゲルの2.3面分に比較し、非常に広い面積を有しています。

またこのPCPは、一辺が数ナノメートル以下の立方体がジャングルジムのように連なった構造を持っています。金属イオンが各頂点にあり、臭いのもととなる物質を引き寄せて立方体内取り込み、従来の活性炭などに比べて臭いを吸着できる力は数倍になっているようです。

この開発のきっかけは、この企業がPCPを使って水をはじく機能性材料を京都大学が開発したという新聞記事を読み、研究チームに連絡を取ったことから始まりました。

PCPの構造を知り、消臭剤にも使えるはずという感触を持ち、研究チームから技術指導を受け、15年4月から1年半かけ消臭剤を完成させました。現在、消臭剤を使った空調フィルターなどを手掛ける業者と協力して商品開発を進めているようです。

余談ですが、こういった大学のいわば眠っている研究成果を、いかに企業化までもっていくかというのは非常に難しい問題です。大企業ですと社内にシーズ探索のチームがありますので、色々大学と連絡を取ったり情報を集めていますが、中小企業ではそんな余裕はありません。

また大学の方も成果を学会発表にしますが、新聞などに取り上げられることは非常にまれなことです。そこでこういった大学と中小企業を橋渡しするということが重要になってきます。

私の友人の何人かはそういった仕事をしており、私も若干かかわったことがあります。最近は大学も企業化ということに積極的になり、学内にそういった部署を持つところもありますが、これも大きな大学に限られています。

大学の研究成果は、とても実用化とは程遠いというようなものも多いのですが、これは面白いというものもかなり多くあります。最近になりこういった産学共同を進めるための組織も法人化されつつありますが、まだまだ企業に関する情報が少ないようです。

今回の消臭剤の商品化は、大学のもつシーズをうまく実用化するという良いお手本になりそうな気がします。