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ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

人間にとって重要な臓器だと思っている脳の意外な欠点

2025-04-07 10:34:52 | 自然
人が何か行動するときは必ず使っている脳ですが、実はあまりよくわかっていないようです。実際に脳自体の機能については物理学者による研究もかなりあります。

そのうちいくつかは、脳の機能が脳というハードからは独立に機能しえないということを示唆しています。

ある研究者は脳の知性の発生にノイズの存在が重要であり、脳内の神経細胞やシナプスが多大なコストを支払ってまで、ランダムな活動を維持し続けるのは、決して無駄ではないとしています。

このランダムな活動こそが我々の学習の実体であり、脳の情報処理の実体であることを強く示唆していると主張しています。この主張が正しいのであれば、脳というハードとは独立に古典的記号処理パラダイムに則って、論理演算だけで知能を実現することはそもそも不可能であることになります。

また非線形物理学者は、脳内のカオスが脳の知能の実現にとって本質的だという立場を述べています。ここでカオスとは、微小な誤差が拡大して短時間に決定論的な運動を破壊してしまうもののことを言います。

したがって脳内のカオスを外部に取り出して同じ挙動をさせることは原理的に不可能です。脳内のカオスはあるとすれば、脳内のシステムが作り出す独自のものであり、脳から独立にカオスを取り出して再現することはできないからです。

このような立場も、知能を脳というハードから独立に分離、存在するという立場に拮抗します。また最近は量子計算が脳の機能に重要だという研究もあります。

量子計算が知能の発現に重要であるならば、従来のコンピュータ上でソフト的に知能を実現することなどできないということになります。

もし脳を、任意のハードウエアで実現できる論理演算で再現可能な機能を持ったハードとソフトの結合系とみなすことができないならば、脳はどのようなものだと思うのが妥当なのでしょう。

ひとつの可能性は車のようにそれ全体で何かの機能を実行する機械装置であるとみなすことです。車には様々な部品があり、独自の機能を持ってはいますが、それらはほとんど単体では機能しない受動的な部品にすぎません。

脳も様々な区画に分かれて、機能的な分業を行っていることはわかっていますが、その部品を取り出して機能させることに成功した例はありません。これは脳に限らず、ヒトの臓器はひとつだけ取り出してそれだけで動作させるのは難しいという点があります。

脳も臓器である以上この縛りからは逃げられません。脳についていろいろ書いてきましたが、かなりわかりにくい文章になってしまいました。まあ脳というのはそういった問題があるのかもしれません。

世界の長寿地域ブルーゾーンの現状

2025-03-30 10:32:48 | 自然
私は昔からあまり長生きをすることを希望していませんでした。その割には78歳となり平均寿命ぐらいは生きるのかもしれません。

世界でも特に長寿の人が多いことで知られる、ギリシャのイカリア島の話です。島民は平均寿命が長く、しかも認知症の発症率が極めて低いのが特徴です。

世界にはブルーゾーンと呼ばれる、長寿の人が多く暮らす地域があります。これらの地域にはイタリアのサルデーニャ島、コスタリカのニコヤ、米カリフォルニア州のロマリンダ、日本の沖縄、そしてギリシャのイカリア島が含まれます。

イカリア島の住民は、アメリカ人よりも平均で8年も長生きし、しかも認知症の発症率が極めて低いようです。米国立衛生研究所(NIH)によると、現在670万人のアメリカ人がアルツハイマー型認知症を患っており、2060年までにこの数は1380万人に達すると予測されています。

一方イカリア島では65歳以上の住民全員を調査したところ、認知症の症例はわずか3件の軽度のものだけだったと報告されています。イカリア島の人々の健康長寿の秘訣はやはり食生活にあります。イカリア島の住民は、世界で最も厳格な地中海式ダイエットを実践しているようです。

彼らは果物や野菜、全粒穀物、豆類、オリーブオイルを豊富に摂取し、赤ワインも適量楽しんでいます。ただし通常の地中海ダイエットとは異なり、魚や肉をほとんど食べず、代わりに大量の野草や葉物野菜を多く食べます。

こういった野草類は、赤ワインの10倍もの抗酸化作用を持つようです。イカリア島の人々は、毎日のようにハーブティーを飲みます。地元の庭や野山でとれるオレガノ、タンポポ、セージ、ローズマリーなどのハーブを使い、お茶を入れるようです。

これらのハーブには抗炎症作用があり、さらに軽い利尿作用もあるため、血圧を安定させ、動脈の健康を保つ効果が期待できます。特にハーブティーが血圧を下げることが、認知症リスクの低減につながると考えられています。

イカリア島の島民が愛飲しているもう一つの飲み物がコーヒーです。特にギリシャコーヒーを好んで飲むことが多く、これが健康長寿の秘訣の一つと考えられています。

2010年の研究では、1日3~5杯のコーヒーを飲むことで、中年期における認知症とアルツハイマー病のリスクが65%低下することが確認されています。

さらに2021年の研究では、1日2~3杯のコーヒーや紅茶を飲む人は、脳卒中と認知症のリスクが30%低下することが明らかになっています。コーヒーに含まれる抗酸化物質やカフェインが、脳の神経細胞を保護し、老化を遅らせる可能性が示唆されています。

このようにイカリア島では食生活と飲み物で長寿を達成していますが、私としてはコーヒーを少し増やす程度かもしれません。

魚にも心(意識)はあるのか

2025-03-16 10:31:47 | 自然
ヒト以外の動物に、果たして意識はあるのでしょうか。そうであれば、どの動物が意識を持っているのでしょうか。

意識という言葉は、さまざまな文脈でいろいろな意味でつかわれています。そのためどのような意味で意識といわれているかには常に注意が必要です。

ここで述べる意識は、一人称の視点からの世界の経験という意味での意識で、そのような体験は専門的には主観的経験と呼ばれています。

ちょっと意味の分からない定義になっていますが、ヒトの意識ほどはっきりしたものでなくてもよく、自己意識やメタ意識(自分に意識があることを自覚するような意識)などの高次の意識でなくとも、何らかの主観的経験が少しでもあればよいとします。

たとえば普通に生活しているときに自分という存在がいるとか、自分には意識がある時にする人はほとんどいません。しかしそれに意識を向けるように指示されれば、健康な覚醒時の成人にはそれができます。

さて高度な認知機能を備えるチンパンジーに、少なくとも原初的な意識はあると大多数の人が考えるでしょう。イヌやネコにも意識があると思う人は多いでしょう。イヌは特に表情豊かで、ネコもずいぶん賢いように思えます。

トカゲやヘビなどの爬虫類になると、意識の存在を認めない人も出てくるかもしれません。どこか無表情に見えるのも、その理由のひとつでしょう。キンギョやマグロといった魚類については、意識があると思えない人もそれなりに多くなってきそうです。

しかし魚にも痛みを主観的に感じる能力があると考える研究者もいます。またイカやタコなどの頭足類、ハチやセミといった昆虫類に、意識はないと考える人かなり多いかもしれません。

ところが最近の意識研究では、これらの動物にも意識があると主張する潮流がにわかに盛り上がりつつあります。さてここまで出てきた動物は、意図的にヒトに進化的に近縁な順番で並べています。どうもヒトに近縁な動物ほど意識を持っていると考える人が多くなるようです。

人間中心主義のバイアスは、大半の意識研究者たちの思考をも絡めとってきました。その最たるものが大脳皮質が意識をつかさどるという先入観です。脳の話は省略しますが、脳梁のない鳥類にも意識がある可能性が示唆されています。

そもそもの大脳皮質が意識をつかさどるという先入観を疑うべき時が来ているようです。この根拠も非常に専門的ですので省略しますが、現在はほとんどの動物に意識はあるというのが主流となっているようです。

1回の産卵では死なないサケがいる

2025-03-15 10:35:42 | 自然
生殖には常にコストが伴うとされています。生物が支払うことができる最大のコストは自らの命となっています。

生殖が死の始まりとなるパターンは自然界にも珍しくなく、これをセメルパリティー(一回繁殖)と呼ばれています。この例としてはトンボやセミ、サケやウナギ、イカやタコなどがいます。

植物でもヤシや多くのタケのほかに、いわゆる一年生植物が典型的な1回繁殖の例となっています。発芽してからは生長して、花を咲かせて種子を作って枯れるまでを、わずか数か月で駆け抜けるのです。この仕組みは比較的簡単なようです。

植物は分裂組織で成長し、細胞分裂によって多くの細胞を作り出す組織で、芽や枝の先端にあります。しかし花には分裂組織がなく、花が咲いたらその芽や枝はもはや生長できなくなります。

一年生植物の場合、発芽してからしばらくすると、ほとんどの芽が花を作り出すので生長は止まってしまいます。また花を咲かせたり種子を作ったりするには多くの資源が必要なので、ほとんどの資源は花や種子で消費されてしまいます。

このような爆発的な生殖活動を行うことにより、すべての資源は消費されて植物は枯れてしまうのです。動物でもタイヘイヨウサケも1回繁殖する生物として有名です。川で生まれたサケは海へ下り、外洋を3年ほど回ったのちに死出の旅に出る、つまり生まれた川に戻ってきます。

メスは川底を掘って卵を産み、オスは卵に精子をかけます。その後メスは尾びれで卵に砂利をかけて卵を隠します。こうして産卵や放精を終えたタイヘイヨウサケは、それから数日以内にほとんどの個体が死んでしまうのです。

子供たちのために親の命が尽きていくタイヘイヨウサケの行動は、種を保存するために進化したという説明がなされています。確かにこのサケの行動は、種のために役立っているかもしれません。年配の個体が道を譲ることは、次の世代のために有益かもしれません。

この一回繁殖は何のために進化したのでしょうか。ここでちょっとした計算をしてみます。ある1年生植物は2個の種子を作って枯れるとします。これは2年後には4個体となるわけです。ここで突然変異が起きて枯れない変異体ができたとします。

この変異体は自分が生存するために資源をとっておき1年に1個の種子を作るとします。するとこの場合も2年後には4個体となるわけです。これは単純化していますので、どちらに進化するかは条件次第となるわけです。

さて先ほどのサケの話になりますが、一回繁殖が種のために進化したとは思えなくなるそうです。これは親同士の争いなど多種の状況があり、一回繁殖が有利にはならないようです。

こういったことからタイトルのように死なないサケが出てくることになるとしています。こういった自然の動きとして当然のようなものも、なかなかおもしろいことを含んでいるようです。

知能研究の論理に大きな飛躍があった

2025-03-09 10:33:57 | 自然
私はAI(人工知能)に興味を追っており、そういった記事には大体目を通しています。そのなかでかならず「いつの日かAIは自我を持ち、人類を排除するのではないか」という文があります。

しかしほとんどがそれを否定しており、これは単なる杞憂ではないかと思っています。その理由は簡単で、AIと人間の知能は本質的に異なっているからです。ただ知能とは何かという問題にはまだ明確な答えが出ていません。

コンピュータの同義語が電子計算機という名前になってしまっているのは、一種の誤謬といえます。コンピュータは別に電子回路で作らないといけないという訳ではありません。

今の計算機は半導体を用いて作られていますが、初期の電子計算機は真空管という全く別のデバイスを用いて作られていました。真空管というのは今ではすっかり見かけなくなってしまいましたが、私が若いころはどの家庭でも見かけるありふれた電子部品でした。

テレビ(ブラウン管の古いテレビ)の裏側の板を外すと中には真空管が一杯刺さった回路版があったものです。真空管は概略を述べると、電子的に電流の大きさを制御する部品です。

一定の電圧下で流れる電流を制御するには、回路の電気抵抗をコントロールすればいいのですが、電気抵抗は簡単には制御できず、どうしても物理的な構成を変えないといけないという問題があり、電気的な制御だけでやろうとすると無理があります。

真空管は真空を移動する電子の流れを、外から電場をかけて制御する方法で、簡単に電流の量を制御できます。

これに対して半導体はその名の通り導体という電気が流れる状態と絶縁体という電気が流れない状態の中間の物質なので、これに微小な電圧を付加的にかけることで真空管と同じような電流の制御ができます。

そのうえ物性科学で作られているため顕微鏡サイズの微細加工で製造でき、真空管よりもはるかに小さなサイズになります。

世界初のプログラム可能なコンピュータの構想として有名なバベッジの階差機関は、電子回路など夢想もできない時代の代物なので、動力を伝達するベルトと歯車で作られていました(後年動くことが確認されている)。

余談ですが日本も当時、パラメトロンという微細な磁石を論理素子に使った計算機を構想し、実際に動作する実機まで制作されたそうです。しかし計算速度の点で電子計算機には対抗できず、世間に普及することはありませんでした。

この脳という人間の器官で実現している知能というが、脳というハードは独立にソフトウエアだけで代替できるという、コンピュータでも実現できると考えたところに、大きな飛躍があったようです。

それでもAIに人間と同じような知能を持たせるというのは、今後に託された夢といえる気がします。