奈良五條市のお祭り~陀々堂の鬼はしり~
五條市念仏寺の陀々堂で、毎年1月14日に行われる1年の厄を払い、無病息災と五穀豊穣を祈願する修正会(しゅしょうえ)の行事です。
陀々堂の鬼はしり
毎年1月14日、大津町の念仏寺陀々堂では500年の伝統をほこる火の祭典「鬼はしり」が行われます。燃え盛るたいまつを振りかざした父鬼、母鬼、子鬼が堂内を豪快に巡り、住民の災厄を払います。鬼が幸いをもたらすのは各地でも珍しいので、厳寒の中、毎年多くの参拝者が訪れています。平成7年には、国の重要無形文化財の指定を受けたのです。
鬼はしりの行者たちは、境内の中央を小たいまつを先頭に入堂してきます。やがて鐘の音を合図に僧達の早口の読経と、カタン、カタンという硬い乾いた棒打(ぼうだ)の響きで、火天(かって)役による「火伏(ひぶせ)の行」が始まります。
燃え盛るたいまつを肩にした火天は、ゆっくりしたすり足で参詣者の前に姿を現し、そして火祭りの安全を願って、中空に向かって水の字を書くようにたいまつを振ります。
たいまつを高く差し上げて暗闇を引き裂かんばかりに振り下ろす火天の姿は、まさに不動明王の化身かと思わさる様で荘厳です。こうした荒行が終わればいよいよ鬼の登場となります。
ヒバをくすべた煙がもうもうと堂内に立ち込め、須弥壇裏の囲炉裏で発火寸前に暖められた大たいまつに、差配(さはい)の「一番たいまつ点火」という緊張した声を合図に行者たちは一斉に活動を始めます。合図を見計らって二番、三番たいまつにも火種が移されます。
一番たいんまつが佐役(すけ)の肩に乗せられ、まずは右手に斧を持った赤鬼と共に正面北の戸口に走り出てきます。そして、狂ったように吠える法螺貝、太鼓棒打と強烈な音響を背景に、今まで暗かった堂内が赤々と照らし出され、これより3体の鬼が次々に登場することになります。