SADE『Lover's Rock』(2000)
時代を超えて輝き続けるクール・ディーヴァ、シャーデー
そのエキゾティックな顔立ち
アンニュイでアダルトな雰囲気を漂わせる歌唱
そして歌手になる前はファッション・デザイナーだったという履歴・・・
シャーデー・アデュはまさしく都会的な美しい女性の象徴である
前作から8年、再始動したシャーデーのオリジナル第5作アルバム。
前作『Love Deluxe』から8年、、『The Best Of Sade』から6年、色あせることのない世界最高峰のサウンドは健在。8年間の活動休止を経て、シャーデーとバンド(と長年のプロデューサーであるマイク・ペラ)は、彼女の芸術性をみごとに再確認させる、充実したソウルフルなアルバムを引っさげて帰って来た。おそらく本作で何より特筆されるのは、シャーデーが活動休止したのと同じ場所から始めている点である。したがって本作からはクールビートや、流行の音楽からの借り物やヒップホップの小細工は聞こえてこない。本作はまさにシャーデーの音楽であり、ファーストシングルの「By Your Side」で彼女は、優しくはかない翼に乗り表舞台に舞い戻ってきている。つまり、愛の力を取り戻すことをふたたび歌っているのだ。もちろんシャーデーは愛のやっかいさもよくわかっている。ダブ風の「Every Word」を聴けば、別れを認めて涙にくれることだろう。NEW CLASSIC MASTERPIECEをあなたに。
【SADE】
シャーデー・アデュは、59年、ナイジェリアに生まれたイギリス人。
シャーデーとは彼女を中心とする4人組グループの名前である。
84年にアルバム『ダイアモンド・ライフ』でデビューを飾り、シングル「スムーズ・オペレーター」がワールドワイドなヒットを記録。
そのサウンドを形容するのに("シャーデー的な"と)その名をとって呼ばれるアーティストの仲間入りをした。
アデュの官能性を秘めたシルキー・ヴォイスとジャジーで滑らかなサウンドは、当時の雲のかたちの如く変貌するミュージック・シーンにおいて、永続的な魅力を内包しているものだった。
さらにその耳当たりのよさゆえか、オシャレなカフェ・バーのBGM等としても幅広く用いられた。
時にファッション的観点のみで語られることのあるシャーデーだが、その音楽性に耳を傾けてみれば、ソウル、ジャズ、ワールド・ミュージックなどの音楽的要素が丹念に縫い込まれた、タペストリーのような素晴らしいサウンドだということが分かる。
さらにアデュの詞世界も、ゲットー・ライフや第三世界の女性について、慈愛に満ちた眼差しで綴ったものが多く、彼女が詩才に長けていることも分かるだろう。
そんなアーティスティックな姿勢はグループ活動にも顕著に表れ、約20年ものグループ活動の中で、発表されたアルバムはたったの5枚。かなりのスロー・ペースだ。
アデュの出産や他メンバーの別ユニット・スウィートバックの活動もあり、シャーデーは一時解散も噂されるが、00年に約8年ぶりのアルバム『Lovers Rock』を発表。
彼女たちは現在もなお、気ままだが確実に聴き手の胸を高鳴らす楽曲群を披露してくれるのである。