田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

広重の東海道五拾三次(上)

2018年01月13日 | 美術館・博物館

 九州芸文館で「広重展ー雨、雪、夜 風景版画の魅力をひもとく」が開催中です。歌川広重は1797年生まれ、生誕220年になるそうです名前を見て最初は安藤広重とは別人かと思いました。昔の教科書では安藤広重の名前で教わりました。

 本展では150点近くの版画が出品されています。広重は五拾三次を幾つもの版で出しています。会場にはそれらの版や後年の木曽街道、江戸・諸国・伊勢などの名所図絵が展示されていました。展示品は風景版画ですが、これだけまとまった浮世絵を鑑賞するのは初めてです。

 それらの内、最初に出版された「保栄堂版東海道五拾三次」(天保3年~4年頃)をポストカードから紹介します。この版が一番知られており、また新鮮な感じがします。広重の五拾三次の直前には葛飾北斎の「富嶽三十六景」が刊行されており、この二人で浮世絵の風景版画が確立しました。

 70歳を越した円熟の北斎と、30代半ばの気鋭の広重が同時期に活動していたかと思うと興味をそそられます。二人とものちのヨーロッパ絵画に大きな影響を与えました。

  「日本橋 朝之景」

 

 お馴染みの日本橋の画です。大名の参勤交代の出立風景が描かれています。このシリーズでは地名の傍にある赤い部分に副題が付いています。左下には魚の棒手振りの一団が。

 「品川 日之出」

 

 江戸の地理に詳しくはありませんが、まだ暗い七つ刻に日本橋を立つと品川辺りで夜が明けると、時代小説で読んだことがあります。季節にもよるのでしょう。

 「保土ヶ谷 新町橋」

 橋の上の駕籠は武士です。宿には「ニ八そば」があります。宿場の裏には田圃が広がっています。

 「戸塚 元町別道」 

 

 北斎や広重の風景版画の特徴は大胆な構図とリズム感、そして基調となる青色です。当時、外国から入ってきた染料を使っているそうです。

 「箱根 湖水図」

 北斎ほどではありませんが大胆なデフォルメです。向こうに白い富士。私は箱根に行ったことはありませんが、こういうイメージでしょうか。急坂を登る大名行列が画に動きを与え、箱根の険しさを感じさせます

 「三島 朝霧」

 

   背景は線を使わないでぼかしの濃淡だけです。こういう技法もあるのですね。

  「沼津 黄昏図」

  夕闇が迫る中を宿へ急ぐ親子の巡礼と、大きな天狗の面を背にした金毘羅詣での修験者。

 「蒲原 夜之雪」

  夜の雪景色。ただ蒲原宿は今の静岡県。温暖な気候で雪は積もらないそうです。

 「由井 薩棰嶺」

 

 同じ場所からの今日の写真とよく比較されますが、地形は変わっていません。左上、旅人が怖そうに景色を眺めています。

 

  

 

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