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NTTドコモ、開発基盤共通化で国際競争力向上 両面作戦で再び世界へ

2010-04-27 | 携帯事業者/日本



 NTTドコモは26日、携帯電話メーカーなど5社との間で、携帯電話機で動画や音楽を動かす基幹ソフトを統一すると発表した。ソフト開発費用を削減し、国際競争力を高める狙い。

 ドコモは、世界中で人気を集める米アップルの「iPhone」の対抗軸として、ソフトがオープン型の端末に注力している。国内のメーカー各社が手掛ける従来型端末もてこ入れし、海外市場へ打って出る両面作戦を描く。


●オープン型端末脅威に

 「携帯電話はソフトのオープン化により、非常に速いスピードで進化していく」。

 4月1日、ドコモの山田隆持社長はグーグルのオープン型OS「アンドロイド」を搭載した初の本格的スマートフォン「エクスペリア」の発売記者会見でこう話した。

 山田社長は、同日朝に予定していた入社式を遅らせてまで、東京・秋葉原と有楽町の家電量販店を訪れ、人気タレントの成海璃子さんと並んでくす玉を割った。

 1つの機種の発売としては異例だが、これには理由がある。

 同製品がドコモのオープン型端末戦略の試金石となるため。「(エクスペリアは)iPhoneにも十分対抗できる」。山田社長は豪語する。

 オープン型端末はリソースが公表された汎用OSを使うことで、携帯電話を便利にするためのアプリケーションを世界中の開発者が自由に作れる。

 アップルのiPhoneも、約18万種類の膨大なアプリケーションをダウンロードし、自分仕様にできるのが強み。

 このため、オープン型端末は製品寿命も長く、MM総研によると、iPhoneの販売は3月末で国内で累計230万台に達し、ドコモや国内端末メーカーにとって脅威となっている。


●共通化でコスト競争力

 アップルの対抗軸としてオープン型端末に傾倒するドコモだが、従来型の携帯電話端末を見捨てたわけではない。

 最先端技術を持ちながら合計世界シェアは約3%と「ガラパゴス」に例えられる国内の携帯電話メーカーも、開発基盤の共通化でコスト競争力をつけることを狙う。

 「販路が広がる喜ばしい話」。ルネサスエレクトロニクスの関係者は、共同開発を歓迎する。

 同社は、今回の共同開発の取りまとめ役を買って出た。今回統一するのは「アプリケーション・プラットフォーム」と呼ばれる基幹ソフト。

 通信機能を除く動画や音楽などの個別のソフトを制御するための基本性能を担う。大規模集積回路(LSI)チップに回路の形でかかれていることが多い。

 実は今回の共同開発の肝も、このチップの共通化にある。

 ルネサスはこれまでの富士通、シャープといった「シンビアン」OSを採用する陣営に供給してきたが、NEC、パナソニックの「リナックス」陣営が加わる。

 今回、ルネサスは開発資金の一部を負担するが、顧客数倍増と端末メーカーの海外展開が成功すれば「販売額が大きく膨らむはず」と早期回収に期待を寄せる。


●海外で巻き返すチャンス

 もともと携帯電話メーカーは、端末からOS、ミドルウエア、LSIチップまですべて手掛ける「垂直統合型」で端末を開発してきたが、第3世代携帯電話以降、開発費がかさむ垂直型を修正してきた。

 OSではパナソニックとNECがリナックス使用で手を組み、富士通とシャープは同様にシンビアンOSを採用。

 LSIチップでは富士通とシャープがルネサスの「SHモバイル」で共通化を済ませていたが、パナソニックとNECは自前調達にこだわりを持っていた。

 パナソニックはグループの半導体社、NECはNECエレクトロニクスというグループ半導体部門を持っていたからだ。昨年4月、ルネサスとNECエレが統合を発表したことで「チップ統合」の下地は整った。

 「ただでさえ数の多い日本の携帯電話メーカーが陣営ごとに2つも3つもプラットフォームを持っている状態では、メーカーの体力はますますそがれる」。

 ドコモの強い意向で、パナソニックを含む4社のルネサスチップへの合流が実現したようだ。

 各社が2011年度以降のドコモ向けの新携帯電話端末に搭載して開発コストを削減。今後はグーグルの「アンドロイド」にも対応する予定。

 各社がオープン型のアンドロイド携帯電話を容易に製造することも可能になる。

 12月にドコモは毎秒100Mビット以上と、光ファイバー並みの通信が可能となる次世代通信電話サービスのLTE(ロング・ターム・エボリューション)を始める。

 LTEは海外の通信大手もこぞって参入表明していることから、LTEが事実上世界標準になる見通しで、日本勢にとっては海外で巻き返すチャンスとなる。


●揺れる護送船団方式

 ただ、オープン型端末とガラパゴス携帯の両面作戦をとるドコモの戦略は、iPhoneを携帯端末販売の核に据え、経営資源を集中するソフトバンクに比べると機動性に欠けるという問題もある。

 「ドコモファミリー」と呼ばれるメーカー護送船団方式で携帯市場を拡大させてきたドコモは、ソフトバンクのように簡単にファミリーとの関係を切れないからだ。

 さらに、メーカー側からは、ドコモとは同床異夢の声も聞こえる。

 同じ端末で通信会社を乗り換えることができるいわゆる「SIMロック解除」の議論が始まっており、今後はメーカーが端末開発の主導権を握る時代が来ることも予想される。

 今回の共同開発に名を連ねたあるメーカー幹部はこう話す。「共同開発はメーカーの囲い込みを再度引き締めたいドコモの危機感の表れでは」。

 シャープ3.1%高、パナソニック2.5%高、ルネサス6.8%高。26日の株式市場で今回の開発メンバーに入った端末、半導体メーカーの株価上昇率は日経平均(2.3%)を上回った。

 一方、NTTドコモは0.1%高。「ガラパゴス連合」を率いるドコモが向かう道の険しさを示しているようだ。





【記事引用】 「日経産業新聞/2010年4月27日(火)/22面」


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