世界の携帯電話メーカー大手の2010年7-9月期業績は、スマートフォンが命運を握っている。
英ソニー・エリクソンの7-9月期連結決算は好調なスマートフォンにより単価下落を最小限に抑え、営業損益の黒字転換を果たした。
韓国のサムスン電子もスマートフォンを中心とした携帯電話事業が液晶パネルやテレビの減益要因を相殺して好決算を維持しそう。
一方、同分野で出遅れたフィンランドのノキアは価格下落を止められず、今月下旬の決算発表を前に収益悪化を予想する声が多い。
●収益改善急ぐ
ソニー・エリクソンの10年7-9月期は、営業損益が前年同期比2億5600万ユーロ(約293億円)改善して6300万ユーロ(約72億円)の黒字に転じた。
スマートフォン「エクスペリア」を欧州、日本に次いで米国や中国へ投入。既に日本だけで約50万台の販売実績を上げ、平均販売価格も同35%増の154ユーロ(前四半期160ユーロ)と高水準で推移している。
ただ、中・高価格機種中心にラインアップを絞った結果、販売台数は同26%減の1040万台。
世界首位のノキアや韓国勢との差は拡大する一方で、赤字の止血は済んだものの、現状のままでは縮小均衡に陥る可能性もある。
スマートフォンを核にした新たな成長戦略を描くには、ソニーが折半の出資構成を見直して、グループのシナジー最大化のため完全子会社に近い形へ移行するのが必要条件になりそう。
サムスンの業績を引っ張るのも、下旬に国内投入するスマートフォン「ギャラクシーS」。世界で500万台以上を販売する怪物モデルで、国内でも前評判は高い。
7―9月期の全社営業利益(予想値)は同14%増で、携帯電話のほか、スマートフォン向けの半導体も増益に寄与した模様。
業績の低迷するノキアやLG電子もスマートフォン分野で巻き返そうと、新製品を投入して収益改善を急ぐ。
●求められる巻き返し策
大手の本格参入が相次ぎ市場の競争は激しくなるばかりだが、アップルの一人勝ちは変わらない。
投資会社のキャナコード・ジュニュイティーによると、アップルが、2010年上期の携帯電話業界全体の利益の39%を占めたという。
すでに優勝劣敗の構図が出来上がりつつあるスマートフォン分野で、各社の早期巻き返し策が求められる。
【記事引用】 「日刊工業新聞/2010年10月18日(月)/10面」