パナソニックは、2012年をめどに携帯電話端末の生産や設計の一部を台湾などの電子機器製造受託サービス(EMS)事業者に委託する。
現在は、同端末の全量をグループの工場で生産している。
同社は12年前半に同端末で海外市場へ再進出する計画で、コスト競争力向上や地域ごとの多様な機種の設計製造に自社だけでは対応しきれないと判断した。
●海外分中心にEMS活用
15年度の携帯電話機の世界販売目標1500万台(10年度見込み比2.5倍)のうち、海外分の約750万台を中心にEMSを活用する。
海外向け製品の大半は、アンドロイド搭載のスマートフォンになる見通し。
OEM(相手先ブランドによる製造)、ODM(同設計・製造)を利用して調達する。EMSだけでなく、パナソニックグループの海外工場で携帯電話端末を製造することも検討する。
現在は、携帯電話製造子会社のパナソニックモバイルコミュニケーションズ(横浜市都筑区)が静岡県掛川市と中国・北京の自社工場で同端末を全量生産している。
パナソニックは80年代後半から携帯電話事業で欧州やアジア市場へ進出したが、通信規格の違いや世界大手との競争で劣勢となり、06年までに海外事業から撤退していた。
当時はチェコとフィリピンに自社工場を構えていたほか、台湾のODM事業者に一部を委託していた。
ノキアやLGエレクトロニクス、ソニー・エリクソンモバイルコミュニケーションズといった世界大手は、台湾のEMSを積極的に活用して世界展開を進めてきた。
シャープやNECカシオモバイルコミュニケーションズ(川崎市中原区)など国内大手も、すでに中国などのEMSから一部の端末を調達している。
●差別化課題
パナソニックは他の国内大手と同じように、EMSなどの外部リソースや、無線通信機器などの海外グループ工場を最大限に生かしながら海外市場へ再び挑戦する。
ただ、他社もアンドロイドをOSに採用したスマートフォンの海外展開を狙っており、デジタル家電などとの連携やコンテンツ配信サービスなどでどのように差別化するかが課題となる。
【国内セットメーカーの最近の動き】
・シャープ:国内スマートフォン販売を2-3年以内に年間500万台へ
3D対応スマートフォンを来年に中国、米国、インドへ投入
・パナソニック:11年前半にスマートフォンを国内投入
12年前半に海外市場へ再進出し、15年度に海外比率を半分に
15年度に携帯電話販売台数の4分の3をスマートフォンに
・NECカシオ:10度内に米ベライゾン・ワイヤレスへスマートフォン供給
12年度の端末販売の5割以上をスマートフォンに
・富士通:東芝と事業統合でスマートフォン強化
【記事引用】 「日刊工業新聞/2010年12月1日(水)/1面」