パナソニックは、今夏にも携帯電話端末の生産を海外に全面的に移管する。
5割程度を国内生産しているが、2012年度の海外市場再参入に向けて、生産体制を抜本的に見直す必要があると判断した。携帯電話端末生産をすべて海外移管するのは同社が初めて。
スマートフォンの世界需要拡大を受け各社は海外販売の強化に動いており、携帯電話端末生産の海外移管が加速する可能性がある。
●海外工場に移管
パナソニックの11年度の端末販売台数は約500万台の見込みで、シャープ、富士通に次いで3位。
このうち約5割を子会社のパナソニックモバイルコミュニケーションズ(横浜市)が運営する静岡工場(静岡県掛川市)で生産。残りを中国・北京の海外自社工場などから調達してきた。
静岡工場の生産分を北京とマレーシアの海外工場に移管するほか、一部を海外企業に生産委託する。
静岡工場は主にアフターサービスの拠点として当面存続させる。国内専用の一部機種の生産を残す可能性もある。従業員はそのまま雇用を続けるほか、一部は研究所や他工場に配置換えする。販売面でも海外に軸足を移す。
05年に海外市場から撤退したが、4月には欧州にスマートフォンを投入して再参入する。15年度の販売台数を11年度の3倍の1500万台に増やし、そのうち900万台を海外で売る計画。
海外をけん引役に、携帯電話端末事業を再び成長軌道に乗せたい考え。
●海外市場に活路
NTTドコモなど国内通信会社向け販売で安定した収益を確保してきたことなどから、日本の携帯電話端末メーカーの生産・販売体制は国内中心だった。
しかし、国内市場に依存してきたため、世界市場で韓国サムスン電子や米アップルに販売台数で大きく水をあけられ、生産面でもアジアのEMS(電子機器の受託製造サービス)との激しいコスト競争にさらされている。
海外市場に活路を見いだす機運も高まっているが、円高下では国内中心の生産体制は足かせとなっていた。
このため、NECカシオモバイルコミュニケーションズは1月にスマートフォンの自社生産を取りやめ海外に委託する方針を打ち出すなど、海外に生産を移す動きが表面化。
パナソニックの全面移管は他社の生産・販売戦略にも影響を与えそう。
【記事引用】 「日本経済新聞/2012年4月1日(日)/1面」