鉄火場のアライグマ

株式投資がメイン、の予定だったのですが、いつのまにかマンション購入記、のつもりが建売住宅購入記になってしまいました・・・

敵対的買収

2005年05月25日 | Weblog
 ポイズンピルや黄金株、ホワイトナイトなど、おとぎ話の世界のような妙な単語を新聞で見かけることが多くなった。少し前のニッポン放送-ライブドア問題を契機に、企業買収に対抗するための制度として導入を検討している企業が多いという。

 ところで、どうして敵対的買収がいけないのか?「敵対的」だから??

 敵対的買収とは、双方の合意による企業買収ではなく株式の買占めにより経営権を乗っ取るタイプの買収であると勝手に定義すると、「敵対的」とは「買収される側の経営陣にとって敵対的」な形の買収である、と言い換えることが出来る。

 ここで根本的な疑問がある。経営陣にとっては敵対的な買収でも株主にとって敵対的でなければいいのでは?

 これは、企業は誰のものか?という最近よく議論されているテーマにつながる。

 資本主義社会においては、誰がなんと言おうと株主が株式会社の所有者である。商法の規定では持株比率が多いほどその企業に対する(株主総会を通じた)支配力は強くなることになっている。
 従業員や地域社会も含めたステークホルダーうんぬんという話があるが、それは株主が所有者であることを前提として、企業を円滑に運営していくために配慮すべき傍論にすぎない。

 株主が株式会社の所有者であるとすれば、株式の多数を買ってしまえば会社の所有者になれるのは当然のこと。そもそも経営陣は株主から経営を委託されているに過ぎないはず。また、上場している以上は株主構成に変動が生じることは想定されていること。
 で、株主から経営を委託された経営者が、自分の保身のため(敵対的買収を食らえば、現経営陣はクビでしょう)に必死で対抗する、と。
 政府も、ニッポン放送の二の舞を防ぐため?羮に懲りてなますを吹くように性急な制度改正を行っている。

 ところで、もしその企業の経営陣がボンクラで、買収する側の方がはるかに優秀な人材を経営陣として用意出来たとしても、敵対的買収防御策があるために買収が出来なかったとすれば、それは既存株主にとっては損失であろう。

 上場企業の買収を規制すべき場合は、買った企業を切り売りしてバラすような特殊な場合に限り、それ以外は買収規制的な施策は取るべきではないと思うがどうだろうか?

 最近、国内外の年金基金がポイズンピル条項の設定には慎重な態度を取っているという話が出ているが、当然のことだろうという気がする。

住宅その2

2005年05月19日 | Weblog
今日の鉄火場は爆上げ。

ついてない時はこんなもんです。。。。。(泣

しかし、相変わらずIPOは当たらんなぁ・・・


とりあえず、家を建てる際の知識第二段です。
一部推測が含まれているため、参考程度に見て下さい。

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2. 設計(基礎、間取り、プランニング)

2.1 誰に設計を頼むのか?
 一般に、住宅を新築する場合には工務店や住宅メーカーに設計施工一式で請負契約するケースが多い。この場合、設計と施工は一体のものとして工事は進んでいく。
 住宅メーカーに頼む場合には設計を外注するのは困難であろうが、工務店に頼む場合には、設計と施工を分けるということも考えられる。
 この場合、設計は専門の設計事務所に頼み、そこで建築士の先生に構造や意匠、間取り等の設計をやってもらうとともに、施工監理もお願いすることになる。

 工務店に一括発注せずに、面倒な手間のかかる分離発注をする意義は、設計と施工の分離による発注者利益の最大化にある。
 設計と施工・監理を一つのところに頼む場合、どうしても作る側の理屈で建設が進むことがある。たとえば、発注者がこだわりたい材料や間取りをお願いしても、逆に工務店に標準品で行くように説得されたりすることがある(本当の理由は、普段使っていない材料だから面倒、工期が遅れるといったものなのだが)。分離発注にはこのような不利益を回避するという意味がある。
 設計事務所は、いわば発注者の代理人として工務店との交渉や施工監理を行うため、建築に関しては素人である発注者がカモにされる、というと言いすぎだが、無知につけこんで施工者の都合のよい材料や設備を使ったり、といったことを防げると同時に、住宅の欠陥を未然に防ぐという効果がある。

 では、分離発注をした場合に問題はないのか?というと、なかなか難しい面があるのも事実。
 ①どうやって設計事務所を見つけるのか?
 ②設計事務所を入れることに工務店が納得するのか?

①設計事務所を見つけるのが難しいのは事実。まず、一戸建てについて経験のある事務所で、かつ、顧客第一で考えてくれるところをどのように見つけるのか?
 建築士は設計の専門家であると同時に「芸術家」的な側面もあり、どうしても自分の独自性を出そうとして妙な(奇抜な)設計を志向するケースがある。この手の奇抜建築が好きな人はいいのだが、そうでない人は一般的な建築を喜んでやってくれるような建築士を探さなくてはいけない。しかしながら、そのような人たちは住宅雑誌などには出てこない・・・
こればかりは、人伝で探すしかないのかもしれない。

②また、頭の固い、あ、いや、昔気質の工務店の場合には設計者を入れることを嫌がるケースがある。これも工務店にそれとなく打診してみて、設計士が入ることを受け入れるようなところかを探る必要があるかもしれない。

エキゾチックオプション

2005年05月17日 | Weblog

asahi.comのフロントページの一番上にあるバナー広告に、こんなものがあった。
「1ヶ月後の日経平均を予想しよう」
リンク先に行ってみると、日興コーディアル証券の広告だった。
https://eztrade-p.nikko.co.jp/EzLawson/p000_0066.html

素人向けにかなり簡略化して書いてあるが、これはれっきとしたオプション(デリバティブ)。
それも、「プレーンバニラ」と呼ばれる普通のオプションではなく、エキゾチックオプションという小細工?をしたオプション。
広告のものはノックインオプションというやつで、一定期間後に原資産(この場合だと日経225)が設定した条件になっていた場合にオプション料が支払われ、そうでない場合には投資(投機?)したお金はパーになるというもの。
 一般的には、輸出企業などが為替損失を避けるために利用するものだが、これは庶民を対象とした純粋な投機商品。長か半かどっちだ!というもの。

 こんなものをローソンで売っていいんか?とも思うが、部外者である私には「好きな人はどうぞ」としか言えない。オプションを投機と考えた場合、胴元(オプションの売り手)が圧倒的に有利になるように仕組んである。これは宝くじやパチンコ・競馬といったギャンブルと同じ。


なお、この手のエキゾチックオプション(の怖さ)に興味のある方は、この本を読まれてはいかがでしょう?
大破局(フィアスコ)―デリバティブという「怪物」にカモられる日本 徳間文庫
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4198914958/249-8708678-9209900

元モルガンスタンレー勤務の著者が、通貨レートリンク仕組み債といったデリバティブを利用して悪の限りをつくした経緯が詳細に書かれている。最後は90年代末の日本企業がカモにされる様子も出てきて面白い。

夏の帰省の飛行機代

2005年05月16日 | Weblog
家の話は次回に回して、今回は夏休みの帰省の話。

 私は毎年夏に九州の実家に帰省するのだが、その際の航空券代が結構な額になる。
 夏休み等の繁忙期には割引運賃がなくなるため、定価に近い金額を払うことになる。家族がいると一回の帰省で10万以上が吹き飛んでしまう。

 そこで、航空会社の株主になって株主優待(正規運賃の50%割引)を使っている。JALやANAの株主になると、一単位(1000株)ごとに優待券が一枚もらえる。これを使えば、東京→福岡の片道3万強の運賃が半額になる。
 株主優待をもらうためには毎年3月末または9月末に株主である必要があるのだが、普通はそこまでして株主優待を取りに行く人は少ない。実は、株主優待だけのために株を取得すると、トータルでは損をする可能性がある。株主として確定する日(たとえば3月末)を超えると株価は下落するため、株主優待をもらえても株価の下落で結局は損をする、という可能性もある。
 もちろん、この権利落ち日の株価下落を回避するための信用取引を使った裏技もあるのだが、これもリスクは残る。


●ここまでが前置き。

ところで、5月末までの限定でかなりお得な手段がある。
 ヤフーオークションでは、株主優待が多数出品されている。実は、今出品されている株主優待は使用期限が5月末までのもので、6月以降は使えなくなる。これでは、夏休みの帰省には使えないと思われるかもしれないが、これにも裏技がある。
 5月末に、オークションで手に入れた株主優待を使ってオープンチケットを買うのだ。オープンチケットとは、名義人と路線が決まっているが予約を取っていないチケットのことで、この有効期限は3ヶ月。なので、5月末に買ったオープンチケットは8月末まで利用可能となる。

 実際に東京から福岡まで夏の繁忙期に往復する場合を考えると、
 東京→福岡の正規運賃:33700円
 株主優待を利用した場合の割引:33300×0.5+400=17050

もちろん、これに株主優待を購入する費用がかかるのだが、今であれば一枚4000円弱で落札出来る(これが6月以降の新しい株主優待だと一枚9000円くらいになってしまうためあまりうまみがない)。

なので、片道21000となり12000の得。大人二人が福岡まで往復すると48000円も安くなる計算になる。

なお、オープンチケットの購入時期と使用時期の正規運賃の違いにより、1000円くらいの差額を払う必要があることがある。この場合オープンチケットの買値が安くなるため、上の試算は変わらない。

備考:
・株主優待は、実際に株主でなくても使える。空港で「株主様ですか?」などとは聞かれない。
・株主優待券は正規料金が半額になる券のため、子供運賃(元々大人の半額)の場合には利用するメリットが少ない。


今日は風邪で

家を建てるには

2005年05月13日 | Weblog
ある方からの依頼により、家を建てる場合の知識について書いてみたいと思います。
長くなるので、数回に分けてのアップになります。


一戸建ての家を建てる場合に考慮すべき点:

目次:

1.構法
2.設計(基礎、間取り、プランニング)
3.使用材料
4.住宅設備
5.施工管理、性能保証


1. 構法(住宅の場合には、工法ではなくて構法という語句を使うことが多い)
1.1 RCか木造か鉄骨か?
 家を建てる場合にまず考えるべきこととして、RC(鉄筋コンクリート)にするのかそれ以外にするのか?という判断がある。
 RCの場合、その頑丈さや耐用年数の長さなどのメリットがあるが、価格が高い、構造に関連したリフォームが難しい等の問題点もある。
 他方、RCよりも日本において一般的なのは木造家屋であろう。ただし、一言で木造といっても非常に多くの構法がある。

・木造
 -木造軸組
 -ツーバイフォー
 -木質パネル

・鉄骨造
 -軽量鉄骨軸組
 -重量鉄骨
 なお鉄骨の場合、外壁に木造と同様のサイディングやモルタルを使う場合と、ALCのようなコンクリート系パネルを利用するものがある。


1.2 各構法の特徴など

(1)木造軸組(在来構法)
 日本で普通に木造家屋を建てる場合、最も標準的な構法。町の工務店に頼む場合にはほぼ自動的にこの構法となる。特徴は、設計の自由度が高く、開口部を大きく取れることなどが挙げられる。欠点は、構造的に横方向からの力に弱いこと。最近は耐震性のアップを目的として軸組接合部を金具で補強する場合がほとんど。また、軸組特有のほぞやみぞの正確な加工には熟練を要するため、職人による出来、不出来の差が大きい。そのため最近は工場でプレカットした材料を使用するケースも増えている。
 地場の工務店以外にも、大手では住友林業が軸組構法を利用している。また、積水ハウスでも軸組モデルをラインナップしている。


(2)ツーバイフォー(2×4;正式な日本名称は「木造枠組壁構法」)
 米国で標準的な木造住宅の構法。名前の由来は、2インチ×4インチの柱(スタッド)を使うため。必要に応じて2×4のスタッドを束ねて柱に利用したりする。
 木造軸組との大きな違いは、軸組が「柱」を基本にした家(わりばしで家の模型を作るのを想像して欲しい)であるのに対して、ツーバイフォーの場合には合板にスタッドを打ち付けたパネルを組み合わせることにより家の構造を形作る「板」を基本にした家であること。そのため、横方向からの力にも強く、耐震性も高い。また、合板にスタッドを釘で打ちつけるだけなので、職人の技量にあまり左右されない。
 なお、欠点としては大きな開口部が取りにくいことが挙げられるが、現代の住宅に多いような洋風のプランニングではあまり問題とはならない。


(3)木質パネル
 構造的にはツーバイフォーに近いが、断熱材等も組み込んだパネルを工場で製造し、現場ではあまり加工を行わずに組み立てる構法。ミサワホームやエスバイエルが採用。


(4)軽量鉄骨軸組
 大手住宅メーカーで最も多い構法。構造的には木造軸組に似ているが、木の柱をH型鋼で置き換えた構造となっている。H型鋼の接合はボルト止めがほとんど。間取り等も木造軸組みと同じものが可能。大和ハウス、積水ハウス、ナショナル住宅等のメイン商品。

(5)重量鉄骨
 軽量鉄骨よりも太いH型鋼を利用し、接合は溶接により行う。構造的には軽量鉄骨より強いが、柱が太いため家の中に柱の取り合いによるデッドスペースが多くなる。また価格も高い。積水ハウスやナショナル住宅、大和ハウス等で、主に3階建て用モデルとして用意している。


(6)その他
 外壁にALC(Autoclaved Light-weight Concrete;工場で製造した気泡入りコンクリートパネル)を利用する旭化成のへーベルハウスなどもあるが、これは構造的には軽量鉄骨作り。また、積水ハイムのユニット構造住宅も、軽量鉄骨や木質パネル構法で作った住宅ユニットを工場で製造し、現地で組み立てるもの。


1.3 どの構法が良いか?
 はっきり言って、これは個人の好みによるとしか言えない。どの構法であっても特に問題になるような根本的な欠点はないため。
 ただし、構法毎に向き、不向きはある。たとえば、木造軸組構法では住宅の気密を取るのが難しいため、気密性能は一般にツーバイフォーより低い。
 はっきり言ってしまえば、住宅の構法はどれを選んでも特に問題にはならず、それよりも家を建てる職人のレベルの方が家の出来に大きく影響すると言える。


1.4 その他(地盤調査)

 住宅を建てる際に必ずやっておきたい調査。ただし、住宅の建て替え等で地盤の状況をよく分かっている場合には必要ないかも。
 地盤調査を怠ると、不当沈下等によるトラブルを招く場合があるため重要。最近は、スウェーデン式サンディング法などの簡単で効果的な手法があるため、小金を惜しまずに実施するべき。
参考URL
http://www.jiban.co.jp/oseshusama/tisiki02.htm



株ネタ(少し)&カップ麺ネタ(たくさん)

2005年05月10日 | Weblog
今回は2銘柄のみです。

・アドバンテスト
売り継続。数ヶ月単位で見ればもっと落ちる可能性大。
とりあえずの目標は6500円

・京セラ
条件付売買を。
8000円を一度超えて、その後5日MAが下向きになった時点で空売り。



次に、昨日に続いて株とは全く関係のない話を。

私は昔からカップ麺が好きでして、未だに大学の同級生から○○はいつも下宿でカップ麺を食べていた、などとバカにされています。
実際、現在の私の大好物はマルチャンの「俺の塩」。ハハハ・・・

で、巷では「体に悪い」とのことであまり評判のよろしくないカップ麺ですが、本当にそんなに体に悪いのだろうかと、ふと疑問に思いました。

カップ麺の成分表示は、表示を見ると分かるように、
・でんぷん
・食用油
・調味料(グルタミン酸ナトリウム;味の素)
・塩、しょうゆ

てなものがほとんどで、合成保存料や合成着色料は入っていません(全部調べたわけではないので断言は出来ませんが)。

カップ麺が体に悪いと言われる原因の多くは、栄養バランスの問題ではないかと思います。
カップ麺を一日3食食べていると、炭水化物と油、塩しか取らないことになり、タンパク質や野菜が取れません。
これでは太るし、塩分の取り過ぎで成人病になるかもしれません。

ところで、独身者にとってカップ麺と同じくらいお世話になるのが「コンビニ弁当」です。
カップ麺とコンビニ弁当のどちらが体に悪いのか?と聞かれたら、普通の人はカップ麺と答えるかもしれません。
しかし、この両者の「体に悪い」の性質は全く異なるので、同列に比較は出来ないと思います。
カップ麺が「体に悪い」のは栄養バランスの問題。
他方コンビニ弁当は、一部では話題にされていますが、合成保存料や合成着色料などの食品添加物の体への影響の問題です。

コンビニ弁当の場合、大量生産されてから各コンビニに集配・消費されるまでに時間がかかりますので、何も添加物を入れないと腐敗したりして問題になります。そこで、様々な添加物が入れられているようです。

下のページは西日本新聞の記事ですが、コンビニ弁当のラベルの写真が載っています。これでもか、とばかりに添加物が入ってるのが分かります。

http://www.nishinippon.co.jp/news/2004/shoku/shoku2/03.html

この手の添加物については安全性があいまいなものが多く、昔は使われていたが発ガン性が明らかになり使用中止になった物質も非常に多いようです。要するに、発ガン性や催奇形性などの晩発型の危険性は、ある程度の時間をかけて検証する必要があるため、使用後10年以上経って危険性が明らかになり使用中止になるものがあるということです。

最近では、一部のコンビニで合成保存料や着色料を使わない弁当やおにぎりを発売するようになりましたが、これは消費者の不安に対応したものでしょう。

ということで、カップ麺をサラダや豆腐などと組み合わせて時々食べる程度なら、コンビニ弁当を頻繁に食べるよりは安全なのではあるまいか?

という仮説を立てて終わりにしたいと思います。

この仮説の信憑性については、何の検証もしていないので「?」ですが。


けんぽー

2005年05月09日 | Weblog
今日は憲法記念日でしたので、憲法について考えることを少し。(5月3日 記)

最近、国会や新聞では憲法改正論議が盛んですが、そもそも何故憲法改正が必要なのか?というところがあいまいです。
よく出てくる理由としては、
 ・戦後60年も全く改正しないのは時代錯誤
 ・環境権等の新しい権利に対応出来ない
 ・国際貢献が出来ない
 ・米国が作った憲法の文章が気に入らん(by石原)

などです。
世論調査でも、憲法を改正すべき(してもいい)という人が過半数になっているようです。

 しかし、憲法改正をしたい人たちの最も大きな狙いは、やはり9条改正でしょう。上記の環境権の話も、憲法改正への反発を弱めるための飴にすぎません。何故なら、環境権などの新しい権利というものは憲法に書くまでもなく現行憲法でも認められていますし(判例)、実際に公害対策の各種法律も出来ています。憲法にわざわざ書かなくても、法律を作れば済む話です。


 私個人としては、今の自衛隊は9条2項との関係ではどう解釈しても違憲だと思いますし、軍隊を憲法上の規定なしに置いておくことは危険でさえあると思うので、9条を変更することについては特に異論はありません。もちろん、9条をそのままにして自衛隊をなくす、という選択肢もありますが、果たしてどの程度の国民がそれを認めるかというとかなり難しいでしょう。もちろん、理念としての平和主義は尊重すべきでしょうが、憲法は国民の人権を守り国の統治機構を定めるものですから、守れない理念を憲法に書いて現実との齟齬を放って置くことは問題があると思います。逆に9条以外に特に改正すべき点は見当たりません。

 理念といえば、「憲法に国のあり方を書きこむべきだ」という議論があります。産経新聞がよくキャンペーンを張ってます。聖徳太子の17条憲法を見習うべきだ、など。これは、憲法に対する大きな誤解があります。

 そもそも、日本人は憲法が何のためにあるのか知らない人がほとんどです。学校では「憲法とは法律の法律である」くらいしか習いませんし。
 では、憲法は何のためにあるのでしょうか? 実は、憲法は国民を相手にはしていません。相手にしていないというのは言いすぎですが、憲法の名宛人は「公務員」なのです(憲法99条の憲法尊重擁護義務には国民が含まれていません)。
 憲法は人権と統治という2つのセクションから成り立っていますが、人権セクションは、公務員による人権抑制から国民を守ることを目的に、立法権や行政権の行使に当たって最低限気をつけるべき規範を示しています。統治セクションも、国会はこのように運営しなさい、内閣はこのように作りましょう、裁判所は・・・といった公務員向けの規範です。

 ここで分かるように、憲法とは、

「人が集まって国という組織体を作る際に、その運営を任せる公務員が暴走しないように、国民が公務員に向けて作った規範である」

と言えます。これは、民主主義の国であればどこも同じです。アメリカの場合には、憲法の本編(統治セクション)と修正条項(人権セクション)の2つから成っています。
 要するに、憲法は公務員の活動に縛りをかけるためのものなのです。たとえば、議会が「老人には一人2票の選挙権を与える」などという法律を作った場合、それは憲法違反ですよ、ということで無効に出来るわけです。
 何故公務員に縛りをかける必要があるかについては、(言うまでもないことですが)権力を与えられた公務員は、自分の仕事をきちんとやろうとすればするほど、どうしても人権を抑制する方向に動きがちになるためです。国の管理者である公務員にとって一番楽なのは、すべてのことが法律で規制されて、自分たちの思い通りに国民が動く社会です。しかしそれでは、国民が主であり国の運営を委任しているだけの公務員が大きな顔をする、という近代民主主義国家の理念からは本末転倒になってしまいます。

 ところで聖徳太子の17条憲法ですが、あれは憲法という名前の道徳規範のようなものです。17条憲法にならって、「生き方」「国のあり方」を憲法の中に書くということは二重の意味でおかしなことになります。
①生き方や国のあり方を決めるのは国民であるが、憲法の名宛人は国民ではない
②仮に国民に憲法を守らせるとして、理想とする生き方や国のあり方は一人一人異なるものであり、それを一つの方向に無理に仕向けるのは民主主義社会とは言えない(日本近隣の某国ではありえるかもしれませんが・・・)

長くなったので、今日はこのあたりまで。