猫の気持ちになってみろ

愛猫「チコ」がぷるぷるしてます

KAGEROU

2010-12-19 14:37:54 | 

KAGEROU
刊:ポプラ社(2010/12) 著:齋藤智裕
★☆☆☆☆

リストラにあい、人生に失望したヤスオは廃ビルの屋上から身を投げようと決意する。
しかし、そのとき・・・
∞∞∞∞∞

言わずと知れた、「水嶋ヒロ」さんの処女作にして、第5回ポプラ社小説大賞を受賞した作品。
それも、審査員は芸能人だって知らないで評価したというのですから、すごい。
授賞式の会見も、神妙かつマジメに行われ、「映画化を意識した」と言い、
本の宣伝には

命をテーマに、小説のあらたな領域に挑む意欲作!
「命とは何か?」「人間の価値とは何か?」という深遠なテーマに、ダイナミックな物語構成で鋭く切り込む。

と書かれている。
否が応でも、期待は高まります。
若いとは言え、芸能界の一線で活躍し、妻はミュージシャン。
有り余る才能と、美貌、そして謙虚さまで兼ね備えた、彼がどんな作品を書いたのか???

作品は200ページ程度。心なしか1ページ当たりの字数が少なく、すぐに読めました。
読み終えての・・・いや、数ページ読み進んだ時点で、すぐに「ビミョー」という文字が頭に浮かびます。

もし、この作品が発表される前の、さまざまなニュースや、イベントがなかったら、絶対、読まなかったであろう作品。
そもそも、この作品を「小説大賞」にしたポプラ社の評価基準や他の応募作品の水準すら疑いかねない。
そんな感じ。

少しでもあらすじを書いてしまうと、話が分かってしまいそうなので、内容にはあまり触れませんが、とにかく、人物が浅い。
そして、「映画化を意識した」という話の描写が漫画的で、こちらも浅い。
物語のベースにある、「なぜ、こうなったのか?」を想像するゆとりと導線がなさすぎ。

ふれこみにあった「命」を考えるというには、あまりにも・・・という感じで、あれほどの前評判だっただけに、残念感満載です。

ただ・・・そもそも、この出版前の過熱を水嶋ヒロさんが望んだことなのか?はわかりませんし、ポプラ社が「齋藤智裕」を「水嶋ヒロ」と知ってから、プロモーションの方法を過剰に演出する方向に切り替えたのではないか???と思わせるフシもある。
装丁や、帯の文句に、少なからずポプラ社の浅はかさを感じます。・・・読み終わった読者のこと考えなかったのかな?

なにはともあれ、売れましたが、この内容で処女作として、この売れ方は、必ずしも「良い船出」とは言い難いのではないか?そんな風に思います。

もともと新人なわけだし、多忙な芸能生活の中、ゴーストライターも付けずに書いた作品。
小説としての内容はともかく、彼自身がテーマとして、「命」とか、「世相」とか、そういうものを題材にしたかったであろうことは、少なからず伝わってきます。
そういう意味で、これからが期待。「まずは処女作、よく書いた!」と言って、これからを期待したい作品です。

そんな、今後の期待を込めて、星は1つで。