河太郎の読書日記

本とか映画とかいろいろ

すべての小さきもののために

2007-07-30 22:54:57 | 読書(小説)
ウォルター・ハミルトン、河出書房新社。
夭折の作家らしい。2作しかない。その内の一つ。
寓話と言っていいのか。
「ぼく(=ボビー)」は、父に死なれ、母は再婚した後に死に、
母の再婚相手「デブ」にひどい目に遭わされ、家を出たところ。
「ぼく」は、31歳だけど、幼い頃の事故で知能は子どものまま。
いつも守ってくれていた母は、もういない。
「ぼく」が出会ったサマーズという小男は、小さな死体を埋める「仕事」を
しているという。
車社会への警鐘、なんだろう。
ボビーの事故も、サマーズとの出会いも、ラストのデブの死も、
みな、車に関係している。こわいねえ、車。
車は便利だけど、そのかわりたくさんの命を奪っているのだろう。
車にぶつかるのは、人だけでない、鳥や、虫もなんだ。
自分一人だったら、影響は目に見えたかもしれないが、今は。
なんというか、わくわくはしない。小動物も死ぬし、人は死ぬ。けっこう残酷かも。
深く読めば、難しい本なのかもしれない。
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わたしたちが孤児だったころ

2007-07-29 21:16:24 | 読書(小説)
カズオ・イシグロ、早川書房。
「日の名残り」が面白かったので、べつのを、ってことで、
有名どころを選んでしまった。
ぜんっぜんちがう。
おもしろ。
同じ人が書いてるって明らかに分かるのに、明らかに違う。
解説には、これ以後本領発揮していくとあるけど。
1930年代のロンドンと上海が舞台。
クリストファー・バンクスは、幼い頃父母を失う。
探偵として名をはせた今、その謎を解くべく、上海へ向かう。
3人の孤児が出てくる。クリストファーとサラとジェニファー。
探偵の謎解きに、サラとの恋(といっていいのか)や養女の物語が紛れ込む。
なにせ、一人称が探偵なので、おいおい、と思っても、思いこんでるから、
上海の銃撃戦の中に無理矢理入り込む彼について行くしかない。
彼が見つけた日本兵は、ホントにアキラだったのかよーとも思う。
一人の人間の目を通して書けば、ホントはこうなんだろう。
怒りにまかせていらんこといって後悔したりする。日の名残の執事とおなじ。
ミステリーとしての、物語のラストは、ま、主人公と一緒にだまされているのだから
こんなもんかなーとおもう。衝撃的といえば衝撃的。
そして、静かな人生の終わりが、近づいてくる。
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漱石先生の事件簿 猫の巻

2007-07-29 12:12:10 | 読書(小説)
柳広司、理論社。
読んだのに、感想書いてなかったな。
児童文学らしいけど。
夏目漱石の「吾輩は猫である」をかみ砕いてアレンジしたような作品。
ミステリであるらしい。
猫、中学生くらいの頃読んだんだけど、作者があとがきで言うように、ストーリーは全然覚えてない。
寒月先生の完璧な球体を作る話だけは覚えていて、あ、出てきた、と思った。
元ネタを覚えていないので、コメントするのもなんだかなーという感じ。
どのくらいアレンジされてるのかもわかんないし。
先生がたいがい変な人になってるんだけど、元からそうだったのか、
えらく誇張されているのか、それすら判断できないので。
もっかい読み直せ、という話もあるが。青空文庫で読めるだろうし。
というわけで、たぶん、読み終わってもやもやっとしたので、書かなかったんだろうな、感想。
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天国はまだ遠く

2007-07-25 00:03:34 | 読書(小説)
瀬尾まいこ、新潮社。
なんとなく。
思い詰めて、自殺しようとやってきた、北の奥の方の町。
死のうとしたが失敗して、その後に彼女が経験する、
田舎の、生活のかかった営み。
散歩し、漁をし、鶏を締めて、命をいただき生きていく。
そして、再生へと歩き出す。
静かなお話。
いいんじゃないのん。
暑苦しくもなく、淡々と。それでいて、ほわっと希望が残る。
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きつねのはなし

2007-07-23 21:52:48 | 読書(小説)
森見登美彦、新潮社。
読み始めてから読み終わるまでに何ヶ月たったろう。半年?
トイレでちびちび読んでいたら、こんなに。
どの話も、印象的。物語の情景が脳裏に浮かぶ。
骨董屋のアルバイト青年がキツネのお面をしたおっさんに絡まれるはなし。
話し上手な先輩とその彼女のはなし。
家庭教師のアルバイト先での剣道少年少女たちとのはなし。
祖父の葬式の夜に宴会をやるはなし。
どのはなしも、ちょっと怖い。
きつねというかかわうそというか。イメージは水系の獣っぽい。
けものに魅入られるというか体を乗っ取られるというのか。
後半2本はそんな感じの話。
骨董屋の蓮芳堂が関わってくるけど、最初の話のナツメさんの店、という
イメージにはほど遠い登場の仕方をするのがいくつかある。
ちょっとずつ関わっているっぽいが、連続はしていない世界が4つ。
持ってるのが不快になるほど怖くもないけど、何度も読んで味わいたいというものでもない。
百物語っぽいかな。
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