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近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

漆工作業その2

2015年06月28日 00時00分01秒 | 緑陰随想

 漆工は漆の木から生じる樹液を採取してそれを製品化したものであるが、ゴムの木からゴムの樹液を採取する方法と同じで、幹に傷を付けて、樹皮を保護するための樹液がゴムになるのと同じである。未だかって、古い採取方法しか採取方法がないため、採取する人も少ないし、漆の樹木がどこにでも生えているわけではなく、種から育てるか、苗を植林する他はない。採取が可能となる樹木になるには少なくとも10年はかかる。大木にならないのは、樹液を根こそぎ取るため、それ以上生育が困難で、枯れてしまうからである。

 

 従って、国内の漆を採取する地域も限られ、生産量も少ない。殆どは中国からの輸入であり、東南アジア(ミャンマー、ラオス、ベトナム産)が僅かに輸入されている品質は国内産がよいとされていて、値段も中国産の10倍はする。漆の性質等はさほど説明してもおもしろいわけではないが、自然の塗料であるため、普通の塗料とは若干異なる乾燥の仕方をする。多くの塗料は薄めた溶剤(シンナー)が蒸発することで乾燥した塗膜が得られる。この種類はラッカー塗料であり、マニュキュアと同じである。

 

 合成樹脂塗料は様々なタイプがあり、空気中の酸素と酸化重合するタイプ、二液性で反応させるタイプ、加熱や冷却によって固まるタイプなど様々である。最近は変性して、有機溶剤を使わずに、水に溶けるタイプ(エマルジョン化している)のものが広く利用されている。漆が乾燥するには、水分と温度が必要で、20℃以上で、湿度は60%以上がよい。

 

 漆は乾燥すると大変強い塗膜を形成し、殆どの化学薬品にも変色や剥がれるなどもしない。大変美しい光沢を持ち、耐久性がある。漆が塗ってあると表示している民芸品、調度、家具、食器類の殆どは、カシュー合成樹脂漆かポリウレタン塗装である。素人には見分けが就かないが、漆以外でも耐久性があり、漆と見劣りしない。漆が使われていたとしても、中国産漆が殆どで、国産の漆は、芸術品か、高級な調度品にしか使用されていない。

 

 漆器の産地でも、漆を使用した多くの塗り物が作られてはいるが、消費は芳しいとはいえない。その理由は、現在の生活必需品にしては、値段が高く代替品で十分満ち足りているし、耐久性に優れていたとしても、その取り扱い等なれないと使い辛い。若手が伝統工芸を継承するとして、以前より映像等で紹介する機会が増えているが、必要以上に金、銀螺鈿等を使い,加飾にこる傾向は時代錯誤の様相もある。関係者の一人として、漆工が生き続けられる様な、良いアイデアを探しているが、特効薬が特にあるわけではない。趣味の世界を体現できればと挑戦中である。