同じ動作を繰り返します。羽ばたきはしないようです。
乾燥の仕方は前回に述べたが、空気中の水分を利用して塗料が乾燥硬化するのはポリウレタン樹脂塗料の中に湿気硬化型というタイプがある。市販されている漆は漆の木を傷つけ滲出する樹液を集め、水分量を少なくした生漆の他、精製した色漆があるが、普通は、透明の漆である木地呂漆に顔料をその都度練り込んで、色漆を作る。下地材は、地の粉、砥の粉、炭の粉末等を生漆に練り込む。接着性を高め、乾燥性を高めるために、でんぷん糊を使う。
下地材も自分で必要量作る。塗られる物を被塗物というが、何にでも塗ることが可能である。木材、紙、竹かご(らん胎漆器という)、金属、ガラス、陶器、プラスチック樹脂、皮、等であるが、塗料自体が高価なため、その使途は限られている。美術品では自作する場合もあり、好きな形状の被塗物が制作可能である。粘土で形状を作り、石膏を流して雌型を取り、更に石膏を流し入れて雄型にする。これに石膏を流し入れ、再度雌型を作り、内面に和紙や寒冷紗や麻布を貼って下地と交互に塗り重ねる。ある程度厚みが出来れば雌型から剥がして、漆と下地材の被塗物が出来上がる。乾漆技法、脱乾漆技法と呼ばれる技法である。
古くは鋳造品の仏像が主であったが、寺の火災で室外へ搬出することは困難であるため、軽くて持ち運びがし易い仏像作りに利用された。漆は高価であると再三述べたが、もっと安くできないかと考え、自分は、カシュー樹脂漆・塗料を用いて同様な乾漆を行っている。
カシュー塗料には、下地材が市販されている、わざわざ自分で作る必要はない。何れご披露することにするが、自分で趣味として楽しんでおり、ことさら最高級の制作をする必要はない。漆と若干工程は異なるが、満足行く作品になるであろう。
素人が簡単に漆工の世界にはいるのは入り口が高いことも確かで、へら使いや塗りも困難であると思うが、是非挑戦して欲しい。多分広い日本であるので、高齢者向きのコースも準備されていることであろう。
思い出したが、刷毛は通し刷毛、箱刷毛といって、人間の髪の毛を膠で固め、ヒノキの板で周りを囲うし、鉛筆の様に削りだして使う。非常に腰が強い刷毛で、粘調な漆や、カシュー塗料に適している。勿論、吹き付けも可能である。