鳥!連続写真!掲載中!

近くの多摩川に飛来する野鳥の連続写真を中心に、日頃感じた出来事を気ままな随想でご紹介し、読者双方との情報を共有したい。

みちのくの旅番外編

2015年06月11日 00時00分01秒 | 緑陰随想

山形旅情

 

 新幹線が延長したお陰で、時間的な距離感は薄れつつあり、所用での移動が便利になった事は好ましいことではあるが、蓄積された多くの風俗習慣が薄れ、どこへ旅をしても都会と変わらない生活環境は、生活感が淡泊となったのか、都会へ同化したのか一律的で、情緒を感じることが少なくなったようである。列車内で飛び交わされる言葉の端々に方言が聞こえるのがこれも現代風に変わっている。

 

 毎年春になると東北は非日常的な雰囲気が醸し出され、長い冬場を過ごした木々や草花が一斉に開花する。関東では咲き終わったハナミズキや卯の花が咲き乱れ、標高が高い山には山桜が咲き誇っていた。既に多くの田畑は稲の作付けが終わり、一段落の時期であった。鳥海山や月山には残雪が残り、雪形を作っている。山から吹き下ろす風はさわやかではあるがどこか冷え冷えとしていた。湯殿山の本宮に参ったときには水芭蕉が開花していて、標高が高い地域はまだ冬の様相であった。

 

 今回の旅ではレンタカーでの移動であったので、宿泊地は温泉を利用しなかった。しかし山形県も温泉天国である。総ての市町村に温泉があるといわれていて、多くの場所で温泉の看板を見た。結構レトロな雰囲気があり、情緒が感じられる。嘗ては奥州三高湯に数えられ、今でも人気のある白布温泉、蔵王温泉、上山(かみのやま)温泉、赤湯温泉等名湯がある。これらの温泉は日帰りの入浴施設を備えている。それだけ火山が多いということであろうか。

 

 松尾芭蕉の足跡を訪ねる旅の山形版を短時間につまみ食いをしたのであるが、当時の旅情には時間をかけて旅をする俳人のご苦労が感じられる。殆ど無いに等しい荷物、地図もなく、頼る人もどこに住んでいるのか、健在なのか、情報は殆ど無いのによくぞ旅を続けることが出来たのか不思議でならない。宿泊地ではどのようにして活動したのか、同行した門下の曾良が総てを手配したとは思えない。行く先々で句会を開いて某かの生活費を確保したらしいが、定かではない。

 

 山形はサクランボ畑が多くあり、梅、梨、白桃、ぶどう等の果樹栽培も行われている。サクランボはソメイヨシノではなく、佐藤錦が有名であり、多くはビニールハウスの中で栽培されている。果樹には日中と朝夕の気温差が大きいとよく育つといわれている。厳しい冬は半年近くに及ぶが、自然のめぐみの享受は、気候の厳しさに品質の良さが同居しているのであろう。何時までも変わらないのではなく時代と共に変わる旅情を感じたのである。