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あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

安西水丸著「1フランの月」を読んで

2024-05-16 13:27:14 | Weblog

 

照る日曇る日 第2046回

 

没後10年目に刊行された著者の、未完の小説と、イラスト付きの楽しい旅日記を読む。

 

「1フランの月」とあるからには、NY、倫敦、巴里、リスボン、マドリッド、アテネ、ローマと続く主人公の旅は、再びの巴里で大団円を迎える構想であったのだろうが、残念ながらそれは見果てぬ夢となって僕らの前に青龍の横隔膜のごとく横たわっている。

 

続く著者お得意のヘタウマを装った、素晴らしいイラスト付きの絵日記は、書斎に居ながらにして、著者と共に世界各地を旅しているような気分に浸らせてくれる。

 

本書のどこかで著者は、「個性は、コップひとつ描いたら、その人にしか描けないコップになるとか、そういうこと」と呟いているが、たった1行の文章もまた、然りなのだろう。

 

オワコンは終わったコンテンツと言われてもなんのことだかさっぱり分からん 蝶人

 


中村稔著「与謝蕪村考」を読んで

2024-05-15 15:19:04 | Weblog

 

照る日曇る日 第2046回

 

先般、知り合いの高橋、池戸両氏が、「蕪村の名句の批評を、次々に紹介しながら、次々にケチをつけ、最後に自説をどうだと突き付ける。そんな本だね」と本書を語っていたので、そんなケッタイナ論考があるわけないじゃないかと怖いもの見たさで手に取ってみたら、その通りの本なので驚きました。

 

ちなみに著者に刺身のツマのようにやっつけられる文芸評論家、俳人は、「蕪村全集」編集者の尾形仂、「新潮日本古典集成」版の清水孝之、「完訳日本の古典」版の栗山理一、正岡子規、内藤鳴雪、高浜虚子、萩原朔太郎、安東次男、中村草田男、水原秋櫻子等の面々。

 

ですが、中でもその著「郷愁の詩人与謝蕪村」においてその独創的、天才的な閃きを随所で発揮しているのは詩人萩原朔太郎選手でしょう。

 

もちろん御年94歳になられる、著者の中村選手も有名な詩人ですが、高名な弁護士でもあられる。本書における独断と偏見に満ちた鋭い論法は、法律家の面目躍如と評せましょう。

 

ものみなが激しく値上がりする朝に歯磨きチューブを尻まで絞る 蝶人


西暦2024年皐月蝶人映画劇場 その2

2024-05-14 09:39:16 | Weblog

 

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3616~21

 

1)スコセッシ監督の「ディパーテッド」

香港映画「インファナル・アフェア」の2006年のリメイク。暗黒街の顔役ジャク・ニコルソンの子分だったディカプリオが犯罪組織に潜入して一人前のヤクザに成長?していく姿をみよ。

 

2)タランティーノ監督の「ワンス・アポンナ・タイム・イン・ハリウッド」

思わせぶりで超くだらない2019年のハリウッド映画。

 

3)ノーラン監督の「ダークナイト・ライジング」

バットマンはゴッサムシティの平和と安寧のために、核弾頭と共に2012年に自爆するが、それは鉄腕アトムの最後からパクッたのではないだろうか。

 

4)アレハンドロ・イニャリトゥ監督の「レヴェナント」

アメリカ西部開拓時代の極寒の地を舞台にした実在の罠猟師をディカプリオが好演。

坂本龍一の冥い音楽が印象的。2015年製作。

 

5)キャロライン・モネ監督の「ブートレッガー」

先住民の血を引くモントリオールの法学部女子大生が、故郷に帰ってアルコール販売の住民投票にこぎつけるまでの戦いを描く2021年製作のカナダ映画。

 

6)オリバー・ストーン監督の「プラトーン」

1986年の味方同士で殺し合う悲惨なベトナム戦争映画。もっと敵であるベトナム軍をしっかり描いて欲しかった。

 

右腕の無い独逸は困ったろうハイルヒトラー!全盛の頃 蝶人


滝川一廣著「「こころ」の本質とは何か」を読んで

2024-05-13 09:27:34 | Weblog

 

照る日曇る日 第2045回

 

著者によれば、自閉症は、さまざまな発達障害のひとつである。

 

ふつう幼児の精神は、「関係(社会性)の発達」と「認識(理解)の発達」の両方が、手を携えながら発達していくが、そんなふつうの子供に比べて、自閉症児は上記の二つ、なかんずく前者の発達に遅れがある。

 

しかし近年、関係性、社会性の発達の遅れがありつつ、ふつうの発達障害児者よりも認識(理解)の発達が著しい発達障害児者が増加してきたので、これを「アスペルガー症候群」と呼ぶようになった。

 

著者のように正常発達と発達障害を峻別せずに、その連続性においてとらえると、従来てんでばらばらだった障害の全体像がほのかに見えてくるような気がする。

 

また著者は、私らが半世紀かけて打ち立てたラターの「自閉症=脳の器質不全説」を再び否定して、元祖カナーの「自閉症=自閉的説」に立ち戻っているようだが、だからというて自閉症児者への効果的な処方箋を持ち合わせているとも思えない。

 

内外の精神科医や研究者が、自閉症についてあれやこれやの言説を公表するのは、それがえげつない金儲けの手段でない限り結だが、半世紀が経ってその定説が逆転したり、空転したりする光景を遠望していると、50歳になる自閉症児を持つ親としては、いい加減にしてくれよ、といいたくもなるのである。

 

なにゆえに半世紀前に逆戻る「自閉的が自閉症」とは 蝶人


親子の肖像~家族の対話 その107

2024-05-12 08:55:50 | Weblog

 

2024年2月

 

めぐりあうって、なに?

また会うことよ。

 

お母さん、これなーに?

これはね、シロヤマブキの実なんだよ。

はい、わかりましたあ。

 

請求書って、なに?

これだけお金使いましたから下さい、というお知らせよ。

 

お父さん、あした石原さとみの番組、録画してくださいね。

分かりましたあ。

 

コウ君、うちのお金を黙って使うの、ドロボウだよ。ドロボウどうなるの?

ケイサツにつかまります。

つかまると、どうなるの?

困ります。

そうでしょう。ドロボウしたらダメよ。

分かりましたあ!

 

ドロボウ、困ります。うちお金ないのよ。

はい、分かりました。大事に使います。

 

ボクはイイコですよ。

そうなの? ワルイコは?

ドロボウですよ。

コウ君、ドロボウ?

違いますよ。

 

比較的って、なに?

わりあい、よ。

 

タイミングって、なに?

ちょうどいい時よ。

 

「転校生」で蓮佛さん、死んじゃったでしょう?

死んじゃったね。

 

お父さん、ホンマって、なに?

ほんとう、のことだよ。ホンマカイナ、ソウカイナ、エーだよ。

 

ボクは我慢できます!

なにが我慢できるの?

分かりませんお。

 

コウ君がどんどん遣うから、うちのお金、全部なくなっちゃうよ。

ぼく、無駄遣いしませんお!

 

お母さん、ごめんなさいとボクいいました。

お母さんのお財布の中のお金はお母さんのお金です。コウ君のお財布の中のお金がコウ君のお金です。

分かりました、分かりました!

 

お母さん、モリダクサンて、なに?

いっぱい、いっぱいのことよ。

 

行進があまりに長く続くのでだんだん下がるイトレルの右腕 蝶人

 


高橋源一郎著「DJヒロヒト」を読んで

2024-05-11 13:58:01 | Weblog

 

照る日曇る日 第2044回

 

明治維新以来の文学のみならず、本邦の政・思想・社会総体の歴史的な歩み、そして、高橋源一郎のこれまでの創作活動をも、併せて総括するような、所謂一つの記念碑的な作品である。

 

具体的には、2001年と18年の「日本文学盛衰史」の拡大増補版を「飛ぶ教室」における高橋DJのカタリでサンドウイッチにしたような空前にして絶後の内容といえばいえようが、分かるとも思えぬ説明であるわいなあ。

 

ただわたくし的には、そのDJがタカハシゲンイチロウならぬ、「天皇ヒロヒト」に擬されていることが気になって気になって仕方がない。なんでやねん。

 

そしてその天皇ヒロヒトは、彼自らの戦争責任を追及された折に、「そんな文学的のことは与り知らぬ」ととぼけたオトボケ天皇とは同一人物とは思えず、それこそ「戦後史を代表する最高のインテリゲンチャン」にして「何事のおわしますかは知らねども相当程度に奥深い人物」として尊崇されているのである。

 

もしかして、ひよっとすると、転向したんかいな、我らがゲンちゃん。

 

なにもかも嫌いな嫌いなジャイアンツよせばいいのに今日もまた勝つ 蝶人

 


親子の肖像~家族の対話 その106

2024-05-10 11:00:38 | Weblog

2024年1月

 

紫式部、なにするひと?

御本を書いたりするひとよ。

ボク、みますお。

みようね。

 

鎌倉、ツツツー、のあるとこですよ。

コウ君、ツツツーの信号、まだ苦手なの?

ダイジョウブですお。大丈夫。

 

コウ君、歯医者さんで虫歯を治してもらおうね?

嫌ですお。ダイジョウブですお。大丈夫。

 

ボクはねえ、オオヤさんとマイさん両方好きですお。

そうなんだ。お母さんも。

 

まひろ、泣いちゃったよ。

大丈夫だよ、コウ君。

 

まひろ、寂しかったんだよね。

そうだね。

 

ボク、まえポンキッキ好きだったんだお。

そうなんだ。

 

ボク、「光る君へ」の音楽、好きですお。

へえ、そうなんだあ。

 

「虎に翼」の男女同権の発言に拍手する妻ギョっとする我 蝶人

 


荒川洋治著「真珠」を読んで

2024-05-09 09:13:07 | Weblog

 

照る日曇る日 第2043回

 

「ひとりの子どもが/母親のお茶のために/その場に/残されることがある/社会主義の影だけがそれを思い出すだろう」

 

って、いったいなんのこと。(表題作「真珠」より

 

喩が喩を呼ぶ、なぞなぞ詩集ってわけかいな。

 

楠の葉っぱと桜の花びらが混じって落ちる卯月の十日 蝶人


柳田國男原作・京極夏彦文・伊野孝行絵「おまく」を読んで

2024-05-08 08:48:58 | Weblog

照る日曇る日 第2042回

 

仁太郎という逆立ちばかりしている若者が、東京の近衛連隊に入営して、ある朝空中を飛びに飛んで故郷の土淵に帰り、懐かしい家族の姿に接するが、話しかけても答えが返ってくるわけでもない。

 

あ、これが「おまく」だなと気づいた仁太郎はまた宙を飛んで近衛連隊にたどり着いたというのである。

 

遠野における怪異現象を「おまく」というておるそうだが、そんな噺は、私が読んでいる柳田國男自筆「原本遠野物語」には出ていない。

 

不思議だが、もしかして拾遺補足ものなんかに、出ているのかも知れない。

 

イトレルにもし右手が無かったら左手上げてトイレにハイル? 蝶人


西暦2024年皐月蝶人映画劇場 その1

2024-05-07 10:33:41 | Weblog

 

闇にまぎれてtyojin cine-archives vol.3615~20

 

1)ヴィンセント・マエル・カルドナ監督の「マグネティック・ビート」

冷戦下の80年代にラジオ放送に青春を駆ける2012年のDJ兄弟奮闘記。

 

2)ローラン・ラヴィリエール監督の「ジョーンの場合」

イザベル・ユペールが見せてくれる2023年の女の一生。

 

3)ジュリー・リクストレ監督の「そんなの気にしない」

格安航空会社の客室乗務員からパーサーに昇格したヒロインの2012年の心境映画。各シーンが無意味に長すぎる。

 

4)ジャン=クリストフ・ムリス監督の「ブラッド・オレンジ」

黒いエスプリとユーモアとジョークが効いた2012年お仏蘭西製のブラック・コメデイずら。

 

5)アーサー・ヒラー監督の「夢を生きた男 ザ・ベーブ」

少年院出身の女好きの大食漢ベーブ・ルースがホームランを打ちまくって死んじまうまでの1992年の野球映画。

 

6)山崎貴監督の「ゴジラ-1.0」

2023年製作の37本目のゴジラ映画だが、脚本が変態漫画的で拙劣。アメリカ進駐軍占領中の本邦をゴジラが襲うのだが、肝心の米軍は「ソ連を刺激したくないので旧海軍駆逐艦4隻を使ってこれで退治しろ」と命じるので、「ああそうですか」と旧海軍軍人共が立ち上がり、ゴジラを相模湾の海底深く沈める噺になるが失敗。そこで主人公が操縦する特攻機がゴジラの口に激突すると、最新型ゴジラは何故か粉微塵になって水没してしまう。まるで訳が分からず「これは帝国海軍礼賛映画だったのか」と驚いていると、死んだはずの主人公やその恋人まで蘇って、とってつけたようにメデタシとなる阿呆莫迦お目出度映画ずら。

 

鍵十字の旗に向かいて掲げたるイトレルの腕次第に下がる 蝶人


鎌倉図書館にて「鎌倉柳田学舎・公開講座」をきいて

2024-05-06 09:49:55 | Weblog

 

鎌倉ちょっと不思議な物語 第462回

 

快晴というより夏の始まりのような莫迦陽気の一日、鎌倉中央図書館の3階多目的室で小田富英氏の「小さな疑問化から始まるものがたり 謎解き遠野物語」を聞きました。

 

定員40名の会場は満員札止めでしたが、出席の大半は私とほぼ同年代のジジババでしたので、ほっと安心もし、ちょっと心配もしたことでした。

 

さて本論に入ってまず小田氏が提示したのは第39話の狼が鹿を食った噺。話者の佐々木喜善が祖父と一緒に大鹿が斃れて横腹が破れて湯気が立っているのを見たが、祖父は「この皮ほあいけれど、御犬(狼)は必ずどこかの近所に隠れて見ておるに相違なければ、取ることができぬ」というたそうだ。

 

この噺を聞いた柳田國男の疑問は、「祖父の言葉は、経験を通して得た正しい知恵なのか、単なる想像なのか分からぬ」というもの。そこで柳田はいつもそうしていたように仮説を立てます。それは「狼は元々は群れの生活。群れている時は食べ残しはしない。しかし環境の変化によって群狼生活が終焉して孤狼生活に変わったので、1匹では食べ切れないこともあったのだろう」(「狼史雑話」)というものでした。

 

当時狼は絶滅したと信ぜられていましたが、柳田國男は日本狼生存説」を表明すると同時に、狼の代わりに「モリ」という名の秋田犬を自宅で飼って、長らく観察を続けていましたが、昭和23年に今西錦司が「いつの時代も孤狼もあれば群狼もある」と柳田説を批判します。

 

狼の生存が確認できない今となっては、どちらが正しいのかを確かめることはできませんが、このように柳田の「小さな疑問」が私たちを思いがけない遠くまで連れていくことを実地に示すために、小田富英氏は第99話の明治29年の三陸津波で妻子を喪った佐々木喜善の叔父の噺を例示しました。

 

叔父は、2011年3月11日の東日本大震災を先取りしたようなこの大津波で死んだはずの妻が、これも津波で死んだ妻の昔の恋人と一緒に、浜辺を歩いている姿を目撃します。

 

その時、叔父から名を呼ばれた細君は、「振り返りて、にこと笑ひたり」と柳田の原稿では書かれているのですが、その噺をした喜善の日記には、この「にこ」がなく、同席していあ水野葉舟の再話では「女はにやにや(原文は「くの字点」)笑って」となっている。

 

つまり何らかの理由で柳田はオリジナルを書き換えた可能性があるのですが、果たしてそれは何の為だったのか?「遠野物語第22話」で三島由紀夫が感嘆した柳田の「文学化」とは違った理由があるのかも知れない。とかとか、またしても「小さな疑問」が生まれます。

 

そして会場に集った私たちは、この第99話の全文を読んで各自がかんじた疑問をメモに書いて提出するように命じられたのですが、この思いがけない成行きの展開と結末についてお話する紙幅が丁度尽きたようなので、また今度ということにいたしませうね。サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。

 

気がつけばあっという間に皐月也また日曜かまたのど自慢か 蝶人


夢は第2の人世である 第135回

2024-05-05 10:16:00 | Weblog

夢は第2の人世である 第135回

 

西暦2023年師走蝶人酔生夢死夢百夜

 

血塗れの瓦礫だらけのガザの地で、土俵入りした熱海富士の右足が、夕陽の逆光で、すっくと伸びたシルエットが、美しかった。12/1

 

怪しい男が海水浴場で少年のカメラを持ち逃げするのを目撃したケンちゃんは、「こんな卑劣な行為をする奴は絶対に許せない! これから裁判長になって牢屋に叩き込むのだ!」と息巻きながら、ハンコを押し続けるのだった。12/2

 

わが隊の指揮官は、「戦闘が始まっても、すぐには反撃せずに、本部の判断を待ってからにせよ」と命令したが、いざ戦闘が始まると、おらっちを含めた兵士の全員が、撃って撃って撃ちまくったのだった。12/3

 

研究費が枯渇してしまったので、私は図書館の特別顧問兼守勢研究員に就任し、自分の研究に必要な書籍資料はぜんぶ購入して、そのギャラでまかなうことにしたのよ。12/4

 

刑法が改訂され、クガタチで犯人捜しをすることになったので、自民党安倍派には、誰もいなくなった。12/5

 

絶好球が来たので、得たりやおうとバットを振ったのだが、ホームランにはならずセンターを超えるライナーになってしまい2塁までしか行けなかった。やや内角寄りの球だったのでちょと詰まったのだろう。12/6

 

新人類が新人世、新人世と叫び続けるので、「それはいったいどういう意味なんだろう?」と考えつづけているうちに、朝になったずら。12/7

 

由良川の河川敷にやってきた都会育ちの純ちゃんが、偶々ヒバリの巣を見つけて、新品の革靴で土を詰め込んで入り口を塞いでしまったので、上空を舞っている親ヒバリが心配で心配でピー、ピー鳴くと、穴の奥から子ヒバリたちも助けて、助けてと懸命に鳴き叫ぶのだった。12/8

 

2人の少女は赤い三角錐の上に乗って微動だにしなかった。が、しばらくすると三角錐から降りた小さいほうの少女が、大きい方に向かって、「ここは危険になってきたから、しばらくスイスに逃げましょうよ」というのを聞いて、これはまずいことになったな、と思った。なぜなら私は大きい方の少女に恋していたから。12/8

 

地下にある温泉に入ろうと暗い廊下を歩いていると、いきなり抱きすくめられたので、そいつの横顔を見るとなんとジャニー野郎だったので、振りほどこうとしたが物凄い腕力である。なるほどだからジャニーズの連中はみんなやられてしまったのかと得心できた。12/9

 

おらっちと彼女との付き合いを、深紅のカアテンの陰から、いつでもそっと監視しているのが、彼女の兄弟であることを、おらっちは知っていた。12/10

 

「掌を、海に譬えたりすることがありますか?」と聞かれたので、「いいえ、でも右手の親指と人差し指を、湾の入り口とみなしたりすることはありましたね」と答えた。12/11

 

余はあまりにも感情的な、彼奴等に言わせると「扇情的な文章」を書くというので、あっという間に言論界から干されてしまった。12/12

 

久し振りに忘年会が開かれるというので、企画室の会場に行ったら、誰も居ないので、宣伝の会場に回ったら、セイさんとイマナカさんが、ぐでんぐでんに酔っぱらっているだけで、誰も居なかったので、阿呆らしくなって、家に帰って、寝た。12/13

 

同級生のマリちゃんに会ったら、顔の右半分は火傷をしたのか、黒くなっていたが、右半分は雪のような白肌だったし、相変わらず大きな瞳で、ギロリとこっちを見据えたので、覚えずギクリとした。さすがはツウちゃんと並んで仏文のマドンナと言われただけのことはある。12/14

 

戦場で負傷して担ぎ込まれた病院で、レントゲン写真を見せられたホームズとワトソンは、欠落したお互いの骨と骨とを組み合わせると、初めて1人前の人体になると気が付き、退院してからは、一緒に暮らすようになった。12/15

 

向こうのあぜ道を風采の上がらない猫背の男が歩いているので、「やあこんにちは!御機嫌いかが?」と訊ねたら、「戦なんかくだらないからやめれ」とぼそりというので、やっぱりミヤザワ選手だったんだと思った。12/16

 

我ら兵士は敵を「丸太」と呼べと上から命じられ、その丸太を銃剣で突き刺していたのだが、ちょっと勇気のある兵士は、わざと体すれすれの地面を突き刺して、良心の呵責の試練に遭わないような配慮をしていた。12/17

 

その洋館に迷い込むと、イケダノブオ夫妻がつくった「ゴーン/おふ」という題名の、西洋童話風の幻想的な動画を上映していた。12/18

 

瀕死状態でくたばりかけていたおらっちを助けてくれたサンタクロースは、おらっちを赤鼻のトナカイの橇に乗せて、その酒池肉林の館に連れて行ってくれた。そこでは4人の絶世の美少女が、おらっちにつきっ切りで面倒を見てくれたのだが、おらっちはその中の1人だけを熱愛したので、残りの3人の憎しみをかったのだった。12/19

 

男3人と女3人合計6人でサル金持ちの別荘で遊んでいたんだが、いつの間にか2組の男女が居なくなってしまった。春の夜は長いので、残された僕たち2人だけでダブルベッドに横たわって、なんとなく、なるようになってしまったずら。12/20

 

誰かが書いた極秘文書のおおかたは削除したのだが、最後の4項目だけは、いくらやってもどうしても消せないので、「崇神天皇の怨念のせいだ」ということになった。12/21

 

その韓国の寿司名人がつくった寿司は、最高にうまかったので、その夜、同じ韓国国籍だったおらっちは、「これからは寿司は韓国に限る。北朝鮮は知らないけど」と、思わず叫んだのよ。12/22

 

私は頻尿なので、定期的に泌尿器科で薬をもらって飲んでいるんだが、子規の晩年と同様に、食後にどっさり柿を食べるので、いつまでたっても頻尿は治らなかった。12/23

 

3Dデジタルで放送された、その障子の桟の美しさは、比類がないもので、全世界から、賞賛の声が寄せられたそうだ。12/24

 

おらっちが山道を登っていくと、道端に2つの毬栗と10個以上の菓子パンが落ちていたので、それらを拾いながら急な坂を上っていると、後ろからやってきて、おらっちに追いついた女の子が、「これはうちで焼いたパンだから、返してください」という。12/25

 

バカダ大学のヒジョーキン講師になって、「現代の音楽論」を担当することになったのだが、現代も音楽も不案内なので、仕方なくNHK-FⅯの「現代の音楽」を録音したやつを学生に聞かせてお茶を濁していたら、各方面からクレームが来たので、困っているところ。12/26

 

シゲハラ印刷のシゲハラ社長に、「中山競馬では武豊をどっさり買ってくれ」と頼んだはずだったが、見事に一等賞に輝いてから連絡してみると、「忙しくて馬券を買い忘れた」というのでガックリだった。12/27

 

私らは、同じ学校の国文、英文、仏文、独文の4人の男女の同級生だったが、毎日のように学食でランチをしているうちに、2組のカップルに分かれていったのよ。12/28

 

敵の火力がいかに優勢でも、わしの火炎瓶が1本でもあれば、そいつを使って彼奴らをあっという間に全滅させてしまうので、わしは「マーラーの第1番」とか「内乱の予感」とか、「進撃の巨人」とか、いろいろの綽名で呼ばれていた。12/29

 

近くの大学の構内を散歩していたら、部室の中に綺麗なネエチャンが1人で座っているのを見つけ、色々話をしていたら、なんとなくお互いにモヨウしてきたので、ここで一気に畳みかけようとおっぱじめたのだが、すぐさまおらっちは不能人間だったことを思い知らされる羽目に陥ったずら。12/30

 

膵臓ガンのステージ4の宣告を受けたおらっちは、日向国の南端の静謐な浜辺の村で、最期の日を迎えることにした。12/31

 

2人で協働して、敵をやっつけるゲームをしているのだが、肝心のその相方が、トロクてなかなか攻めきれず、イライラするのだが、その相方も、おらっちをトロイと思っているらしい。12/31

 

九州の最南端の、村には1軒のホテルしかないという僻地の映画祭に招待されてやってきたおらっちだったが、ホテルでの飲み食いは、サインで許されるとしても、帰りの交通費すらないので、映画鑑賞どころではなかったずら。12/31

 

「お前にもその歳が来るんだよ」と親切な八十五歳が教えてくれる 蝶人


親子の肖像~家族の対話 その105

2024-05-04 17:46:48 | Weblog

 

2023年12月

 

お父さん、録画してくれた?

したよ。バッチリ録画したよ。

ハ、ハイ。

 

オクラ、にゅるにゅるですお。

そうだね、にゅるにゅるだね。

 

ちなみに、ってなに?

じっさいのところ、よ。

アベヒロシ、ちなみに、っていいましたよ。

 

お母さん、今年年越しそば食べますよ。

食べましょうね。

 

コウ君、今年なにどしだったっけ?

ウサギですお。

来年は、なに年?

クマ年ですお。

クマ年かあ!

 

お母さん、ほんまにって、なに?

ほんとうに、のことよ。

 

お母さん、寝てくださいね。

分かりました。

 

お母さん、良くなってね。

だいぶ良くなりましたよ。

 

お父さん、録画した?

したよ。

DVDにしてくださいね。

するよ。

 

イエヤス、国のことでしょう?

そうね、国のことをやったのね。

 

ぼくマツモトジュン、すきですお。

そうなんだ。

 

大谷よひたすらバットを振り給え他には何にも考えないで 蝶人

 


すべての言葉は通り過ぎてゆく 第127回

2024-05-03 09:30:44 | Weblog

 

西暦2024年弥生蝶人狂言綺語&バガテル―そんな私のここだけの話第425回

 

 

本日のBBC放送によれば、復活祭とラマダンを祝うため、ガザとウクライナ全土では、本日より1週間の停戦期間に入ることが、戦争当事者によって合意されたようだ。4/1

 

ギリシアの歴史家ストラボンによれば、古代コリントの町を見下ろすアクロコリントスの山頂の女神アフロディテの神殿には、千人にも及ぶ神殿娼婦がいたとも言われている。(岩波改訂新版「新約聖書・コリント人への第一の手紙」青野太潮訳注より)4/1

 

「弱きを助け、強気を挫く」こそ司法の要諦。それは今も昔も変わらない。4/2

 

ジミントウが自壊しつつある今こそ政権交代の絶好のチャンスなのに、まったくその気にならない阿呆莫迦野党どもよ。4/3

 

裏金作りの実態解明をいっさい放棄し、形だけの「処分」ごっこをして、肝心の最終責任者であるてめえは、無罪放免と洒落こむ三文芝居に、いったいこの国の誰が投げ銭するだろうか?4/4

 

時代は、ますます悪い方に転がり落ちているので、これから死ぬ人は、すでに死んじまった人を羨ましく思うだろう。4/5

 

「改憲を望まずさあれ第一條のみは認めがたしも象徴は言葉」

「昭和天皇いまだ裁かれずその裔を崇むる不條理、太陽のごと」

と歌う水原紫苑を、誰もがシカトする。4/6

 

ついに車椅子の人となった谷川俊太郎曰く。「僕は吉本隆明のように、講演会で車椅子をあちこち走らせたりはしないよ」。92歳の老詩人ならではのナイスなジョークだ。4/7

 

今度の選挙では自公政権を完膚なきまでに粉砕して、彼らがこれまでに仕出かした政策をことごとく破棄して、次々にその正反対を実行する護憲内閣を立ち上げてもらいたい。4/8

 

「何が新しく生まれた美しさで、何が失われた大切なものか、つねに考えること。」柳田國男。4/9

いつの間にこの国は、米国のポチにとどまらず、米国を盟主と仰ぐ軍事同盟の2番バッターに成り上がった!?のだろう。4/10

 

「冥途の飛脚」として米国へ旅立った異次元男の政治生命は終わった。もう帰ってこなくても構わない。あとは野党の首座としての立憲が、いかに本気で政権奪還に本腰を入れるかにかかっているが、おらっちは心情的にはれいわとか社民とか共産を応援したくなるずら。4/11

 

「エミリー・ディキンスンがいう「臨終なしに死ぬこと」。詩というより、美というか、生と言ったらいいのか、生のもっと深い膨らみみたいなものに、おずおずと少しずつ近づいていますね。」吉増剛造(林浩平「吉増剛造・全身詩人」より抽出) 4/12

 

グローバルなんちゃらだと。エリケン組の若頭だと。日米比で共同行動だと。冗談もええ加減にせえ。中国とフィリピンの押しくら饅頭に、なんで日本が巻き込まれなくちゃならないんだ。4/13

 

「われわれが、きちんと言葉を発しようとすると、体の中でモヤモヤうごめくものがある。それが声になると言葉だけど、声にならないままだと、ダンスになる」by笠井叡(林浩平著「全身詩人 吉増剛造」より) 4/14

 

「声の出る場所と動きの出る場所は、全く同根なんですね。吉本隆明もいっているけど、問題は咽喉。咽喉から、「声」と称する手が出てくる。「詩経」の「跼天蹐地」のような声を作りたいなあ。」by吉増剛造(林浩平著「全身詩人 吉増剛造」より)4/15

 

吉増さんの舞踏言語には、まず「廃星」という言葉、「隕石」という言葉が出てきます。災厄を経て星が堕ちるが、一方では星はコスモスとして宇宙的な秩序を保っています。ブランショのdesastreは災禍、災厄ですが、同時にそこからの分離でもあるのです。by郷原佳以(林浩平著「全身詩人 吉増剛造」より)4/16

 

ブランショのdesastreという言葉の元は、マラルメの「エドガーポーの墓」という弔いの詩ですが、そこではポーの墓が、隕石のイメージとして出てきます。吉増の「火の刺繍」は、まさにdesastreとしての廃星=隕石ではないでしょうか。by郷原佳以(林浩平著「全身詩人 吉増剛造」より)4/17

 

北村透谷曰く。「大、大、大の虚界を見よ」「空の空の空を撃って、星にまで達することを期すべし」。彼は内部生命を信じるがゆえに、「文学は人生に相渉る」とするのです。by建畠哲(林浩平著「全身詩人 吉増剛造」より)4/18

 

そんなに戦争が大好きなら、お前らそこで全員絶滅するまで、永久に殺し合ってろ。4/19

 

かつては米国や西欧諸国を凌ぐ最上級先進国とうぬぼれていた自称大横綱が、失われた30年間にずるずる幕下まで番付が下がり、もはや発展も途上も見込めない極東のいち島国に成り下がってしまった。4/20

 

あんまり多くの有名人が怒涛のように泉下の人になっちまうので、誰がまだ生き残っているのか判然としない。最近ポリーニの映像が氾濫しているので、ひょっとして、と思って検索してみたら、やはり命終していたのでもっぱらユーチューブしてるとこ。4/21

 

敵を憎み、敵を撲滅するまで戦い続ける動物は、人間だけだろう。4/22

 

眼の中に入れても痛くないほど可愛がってる鬼子イスラエルを大事にするアメリカの単細胞で哀れな一の子分がニッポンチャチャ、という訳。4/23

 

スエーデンのストックホルム国際平和研究所が発表した2023年の世界の軍事費は9年連続で増加し、前年比6.8%増の総額2兆4430億ドル、約378兆円。上位は米国、中国、ロシア、インド、サウジアラビアで5か国の合計が世界全体の61%を占めた。4/24

 

ウクライナの軍事費は前年比51%増の648億ドルで前年の11位から8位へ。外国からの援助350億ドルを加算するとロシアの9割になる。イスラエルは24%増の275億ドル。日本は11%増の502億ドル(約7兆5,454億)で9位から10位へ躍進。4/25

 

吾思惟す。ゆえに我あり。というが果たしてそうだろうか。その思惟そのものが絶えず揺れ動くので、我々はその思惟を言葉に置き換えようとするが、その言葉もその場限りの絶対性しか持たない相対的なものであるとすれば、思惟と言葉の揺らぎそれ自体が我々の実在ということになる。4/26

 

ベルリン・フィルの連中は、演奏中に喜悦の表情を浮かべたり、曲の勘所に来ると、それこそ必死の形相で、目の色を変え、髪振り乱して演奏するのだが、こういう爆発的な姿は、万年2位のウイーン・フィルはもちろん、日本のオケのどこでも見たことがない。だからこそ世界一のオケなのだろう。4/27

 

衆院補選は3つの選挙区で立憲が勝ったが、休日の好天にもかかわらず投票率が異常に低い。今回投票しなかった連中には、次回の選挙権を剥奪したらどうだろう。先人が命懸けで戦って漸く勝ち得た権利の有難さを味合わせるためにも。4/28

 

美術家や文章屋が、他の美術家や文章屋の作品を、仔細に見学しはじめると、自分の作品の創作の妨げになることもあるので、要注意である。4/29

 

優れた芸術は、それ自身を超える。小説が小説を超え、絵画が絵画を超え、映画が映画を超える瞬間、私たちは、なにやら新しい世界に生まれ変わった自分を、体感するのである。4/30

 

 

9条を大事にしつつ第1章を削除するのがわが改憲案なり 蝶人


なにゆえに第117回~西暦2024年卯月蝶人花鳥風月狂歌三昧

2024-05-02 13:45:49 | Weblog

ある晴れた日に 第724回

 

なにゆえに見境なしに性交する年に一度の無礼講なり

 

なにゆえにバックスクリーンに抛りこまぬ火を吐くような二塁打よりも

 

なにゆえに大使館まで爆撃するお前は悪魔だイスラエルよ

 

なにゆえにドジャース1号が飛び出した大谷絶不調のハッパが効いた

 

なにゆえに処分はなしで居直るか地獄に落ちよ異次元男

 

なにゆえに桜が咲くと心が騒ぐともかくパッと散りたいからさ

 

なにゆえに黒柳徹子は偉いのか孫の話をウンウンと聞く

 

なにゆえに新入生は泣いている今日は終日雨降りなので

 

なにゆえに「ただごと歌」を異端となすこれぞ正統短歌なるを

 

なにゆえに無洗米は美味しくない精米しすぎて旨味に欠ける

 

なにゆえに心が病むか分からない譬えばこころは紫陽花の花

 

なにゆえに親分の国では歓待される異次元男よ帰って来るな

 

なにゆえに洗濯物を裏返す洗濯物が早めに乾く

 

なにゆえにドジャースは苦戦するリリーフ陣が非常に脆い

 

なにゆえにあの快楽を体験できない自閉症の男の子にして

 

なにゆえに大砲バカスカ買い付ける税金保険金どんどこ増やして

 

なにゆえにほかよりマシと考えるお前のお陰でジコウが独裁

 

なにゆえに日本国憲法を莫迦にする豚に真珠の愚かな民ゆえ

 

なにゆえに可笑しな歌に鐘鳴らすのど自慢と朝日歌壇は

 

なにゆえに内閣支持率26%どこまでアホなの朝日の読者は

 

なにゆえにバイデン、トランプしかいないのか3億人の大統領選に

 

なにゆえに「もしトラ」なんかに会いに行くそれよりお前の派閥をやめれ

 

なにゆえに配信映像の方が鮮明なの大枚投じたDVDより

 

なにゆえに政権奪取に動かないキシダもジミンもへこたれてるのに

 

なにゆえにいきなり夏日が来たりする我らが地球を壊しているから

 

なにゆえに右翼の立憲が勝利するもっと右翼のジミンが潰れた

 

なにゆえに今日で4月が終わるのか明日まで卯月と思っていたに

 

 

なにゆえに散髪屋さんで寝てしまう自閉症児のやすらぎの場所 蝶人