あまでうす日記

あなたのために毎日お届けする映画、本、音楽、短歌、俳句、狂歌、美術、ふぁっちょん、詩とエッセイの花束です。

夢は第2の人世である 第135回

2024-05-05 10:16:00 | Weblog

夢は第2の人世である 第135回

 

西暦2023年師走蝶人酔生夢死夢百夜

 

血塗れの瓦礫だらけのガザの地で、土俵入りした熱海富士の右足が、夕陽の逆光で、すっくと伸びたシルエットが、美しかった。12/1

 

怪しい男が海水浴場で少年のカメラを持ち逃げするのを目撃したケンちゃんは、「こんな卑劣な行為をする奴は絶対に許せない! これから裁判長になって牢屋に叩き込むのだ!」と息巻きながら、ハンコを押し続けるのだった。12/2

 

わが隊の指揮官は、「戦闘が始まっても、すぐには反撃せずに、本部の判断を待ってからにせよ」と命令したが、いざ戦闘が始まると、おらっちを含めた兵士の全員が、撃って撃って撃ちまくったのだった。12/3

 

研究費が枯渇してしまったので、私は図書館の特別顧問兼守勢研究員に就任し、自分の研究に必要な書籍資料はぜんぶ購入して、そのギャラでまかなうことにしたのよ。12/4

 

刑法が改訂され、クガタチで犯人捜しをすることになったので、自民党安倍派には、誰もいなくなった。12/5

 

絶好球が来たので、得たりやおうとバットを振ったのだが、ホームランにはならずセンターを超えるライナーになってしまい2塁までしか行けなかった。やや内角寄りの球だったのでちょと詰まったのだろう。12/6

 

新人類が新人世、新人世と叫び続けるので、「それはいったいどういう意味なんだろう?」と考えつづけているうちに、朝になったずら。12/7

 

由良川の河川敷にやってきた都会育ちの純ちゃんが、偶々ヒバリの巣を見つけて、新品の革靴で土を詰め込んで入り口を塞いでしまったので、上空を舞っている親ヒバリが心配で心配でピー、ピー鳴くと、穴の奥から子ヒバリたちも助けて、助けてと懸命に鳴き叫ぶのだった。12/8

 

2人の少女は赤い三角錐の上に乗って微動だにしなかった。が、しばらくすると三角錐から降りた小さいほうの少女が、大きい方に向かって、「ここは危険になってきたから、しばらくスイスに逃げましょうよ」というのを聞いて、これはまずいことになったな、と思った。なぜなら私は大きい方の少女に恋していたから。12/8

 

地下にある温泉に入ろうと暗い廊下を歩いていると、いきなり抱きすくめられたので、そいつの横顔を見るとなんとジャニー野郎だったので、振りほどこうとしたが物凄い腕力である。なるほどだからジャニーズの連中はみんなやられてしまったのかと得心できた。12/9

 

おらっちと彼女との付き合いを、深紅のカアテンの陰から、いつでもそっと監視しているのが、彼女の兄弟であることを、おらっちは知っていた。12/10

 

「掌を、海に譬えたりすることがありますか?」と聞かれたので、「いいえ、でも右手の親指と人差し指を、湾の入り口とみなしたりすることはありましたね」と答えた。12/11

 

余はあまりにも感情的な、彼奴等に言わせると「扇情的な文章」を書くというので、あっという間に言論界から干されてしまった。12/12

 

久し振りに忘年会が開かれるというので、企画室の会場に行ったら、誰も居ないので、宣伝の会場に回ったら、セイさんとイマナカさんが、ぐでんぐでんに酔っぱらっているだけで、誰も居なかったので、阿呆らしくなって、家に帰って、寝た。12/13

 

同級生のマリちゃんに会ったら、顔の右半分は火傷をしたのか、黒くなっていたが、右半分は雪のような白肌だったし、相変わらず大きな瞳で、ギロリとこっちを見据えたので、覚えずギクリとした。さすがはツウちゃんと並んで仏文のマドンナと言われただけのことはある。12/14

 

戦場で負傷して担ぎ込まれた病院で、レントゲン写真を見せられたホームズとワトソンは、欠落したお互いの骨と骨とを組み合わせると、初めて1人前の人体になると気が付き、退院してからは、一緒に暮らすようになった。12/15

 

向こうのあぜ道を風采の上がらない猫背の男が歩いているので、「やあこんにちは!御機嫌いかが?」と訊ねたら、「戦なんかくだらないからやめれ」とぼそりというので、やっぱりミヤザワ選手だったんだと思った。12/16

 

我ら兵士は敵を「丸太」と呼べと上から命じられ、その丸太を銃剣で突き刺していたのだが、ちょっと勇気のある兵士は、わざと体すれすれの地面を突き刺して、良心の呵責の試練に遭わないような配慮をしていた。12/17

 

その洋館に迷い込むと、イケダノブオ夫妻がつくった「ゴーン/おふ」という題名の、西洋童話風の幻想的な動画を上映していた。12/18

 

瀕死状態でくたばりかけていたおらっちを助けてくれたサンタクロースは、おらっちを赤鼻のトナカイの橇に乗せて、その酒池肉林の館に連れて行ってくれた。そこでは4人の絶世の美少女が、おらっちにつきっ切りで面倒を見てくれたのだが、おらっちはその中の1人だけを熱愛したので、残りの3人の憎しみをかったのだった。12/19

 

男3人と女3人合計6人でサル金持ちの別荘で遊んでいたんだが、いつの間にか2組の男女が居なくなってしまった。春の夜は長いので、残された僕たち2人だけでダブルベッドに横たわって、なんとなく、なるようになってしまったずら。12/20

 

誰かが書いた極秘文書のおおかたは削除したのだが、最後の4項目だけは、いくらやってもどうしても消せないので、「崇神天皇の怨念のせいだ」ということになった。12/21

 

その韓国の寿司名人がつくった寿司は、最高にうまかったので、その夜、同じ韓国国籍だったおらっちは、「これからは寿司は韓国に限る。北朝鮮は知らないけど」と、思わず叫んだのよ。12/22

 

私は頻尿なので、定期的に泌尿器科で薬をもらって飲んでいるんだが、子規の晩年と同様に、食後にどっさり柿を食べるので、いつまでたっても頻尿は治らなかった。12/23

 

3Dデジタルで放送された、その障子の桟の美しさは、比類がないもので、全世界から、賞賛の声が寄せられたそうだ。12/24

 

おらっちが山道を登っていくと、道端に2つの毬栗と10個以上の菓子パンが落ちていたので、それらを拾いながら急な坂を上っていると、後ろからやってきて、おらっちに追いついた女の子が、「これはうちで焼いたパンだから、返してください」という。12/25

 

バカダ大学のヒジョーキン講師になって、「現代の音楽論」を担当することになったのだが、現代も音楽も不案内なので、仕方なくNHK-FⅯの「現代の音楽」を録音したやつを学生に聞かせてお茶を濁していたら、各方面からクレームが来たので、困っているところ。12/26

 

シゲハラ印刷のシゲハラ社長に、「中山競馬では武豊をどっさり買ってくれ」と頼んだはずだったが、見事に一等賞に輝いてから連絡してみると、「忙しくて馬券を買い忘れた」というのでガックリだった。12/27

 

私らは、同じ学校の国文、英文、仏文、独文の4人の男女の同級生だったが、毎日のように学食でランチをしているうちに、2組のカップルに分かれていったのよ。12/28

 

敵の火力がいかに優勢でも、わしの火炎瓶が1本でもあれば、そいつを使って彼奴らをあっという間に全滅させてしまうので、わしは「マーラーの第1番」とか「内乱の予感」とか、「進撃の巨人」とか、いろいろの綽名で呼ばれていた。12/29

 

近くの大学の構内を散歩していたら、部室の中に綺麗なネエチャンが1人で座っているのを見つけ、色々話をしていたら、なんとなくお互いにモヨウしてきたので、ここで一気に畳みかけようとおっぱじめたのだが、すぐさまおらっちは不能人間だったことを思い知らされる羽目に陥ったずら。12/30

 

膵臓ガンのステージ4の宣告を受けたおらっちは、日向国の南端の静謐な浜辺の村で、最期の日を迎えることにした。12/31

 

2人で協働して、敵をやっつけるゲームをしているのだが、肝心のその相方が、トロクてなかなか攻めきれず、イライラするのだが、その相方も、おらっちをトロイと思っているらしい。12/31

 

九州の最南端の、村には1軒のホテルしかないという僻地の映画祭に招待されてやってきたおらっちだったが、ホテルでの飲み食いは、サインで許されるとしても、帰りの交通費すらないので、映画鑑賞どころではなかったずら。12/31

 

「お前にもその歳が来るんだよ」と親切な八十五歳が教えてくれる 蝶人

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