照る日曇る日 第2046回
没後10年目に刊行された著者の、未完の小説と、イラスト付きの楽しい旅日記を読む。
「1フランの月」とあるからには、NY、倫敦、巴里、リスボン、マドリッド、アテネ、ローマと続く主人公の旅は、再びの巴里で大団円を迎える構想であったのだろうが、残念ながらそれは見果てぬ夢となって僕らの前に青龍の横隔膜のごとく横たわっている。
続く著者お得意のヘタウマを装った、素晴らしいイラスト付きの絵日記は、書斎に居ながらにして、著者と共に世界各地を旅しているような気分に浸らせてくれる。
本書のどこかで著者は、「個性は、コップひとつ描いたら、その人にしか描けないコップになるとか、そういうこと」と呟いているが、たった1行の文章もまた、然りなのだろう。
オワコンは終わったコンテンツと言われてもなんのことだかさっぱり分からん 蝶人