照る日曇る日第1703回
異能の天才による異色小説集なり。どれも面白いが、げんみつに言うと冒頭の「王子失踪す」から「キャロル叔母さん」「その蛇は絞めるといっただろう」までが抜群で、後の2作はやや落ちると思う。
とりわけ興味深いのか「その蛇は絞めるといっただろう」で、大蛇に締めてもらい食べられて消化吸収してもらいたい究極のマゾ男の物語だが、蛇屋が自信満々で提供した獰猛なアナコンダがいつまで経っても絞殺さないので2人で消耗するというコメディだが、砂金facebookに頻出する蛇動画と合わせて鑑賞すると一層興趣が増すだろう。
しかしこれらの短編は既に漫画として完成された作品の散文化なので、次はこれを山上選手自身の手でぜひ映画にしてほしい。村上春樹の「ドライブ・マイ・カー」より遥かに面白い傑作が誕生するはずだ。
何事もなくて無事に日が暮れるただそれだけがおいらの願いさ 蝶人