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総合型地域SCについて19

2015-03-01 03:05:39 | 総合型地域SC・地域振興

 事例紹介コラムです。
 いろいろと調べものをしている時に、かなり前ですが、「これからのJクラブの経営モデル ~の可能性~」というコラムを見つけました。うーむ、いいコラムですが、見落としていましたね。2年ほど前の記事ですが、十分今も見応えがある内容です。今でこそ、いくらか増えたJクラブの公益法人の保有ですが、この記事では「ハイブリッド型スポーツクラブ」という表現になっています。当ブログでは「総合型地域スポーツクラブ」と称し、単に観客動員数が多いとかではなく、こういういった取り組みができているところが、100年続くJクラブと言い続けています。以下、抜粋して紹介。 
        
これからのJクラブの新しい組織形態
 Jクラブに、株式会社と非営利法人の2つをバランスよく活用する「ハイブリッド型スポーツクラブ」を目指す取り組みという新しい動きが出現。株式会社であるJクラブとは別に、非営利法人である総合型地域スポーツクラブを設立し、「株式会社×非営利法人」という形態でクラブ運営を始めているもの。
 例えばJ1湘南、J2のC大阪、東京V等が実際に非営利法人である総合型地域スポーツクラブを設立し、その他数えるだけでも10クラブ以上がこの形に関心。
 そもそもJクラブが株式会社でなければいけないという理由はどこにもないが、株式会社であることのメリットはどこにあるのか。株式会社のメリットは主に「資金調達」と「組織の支配」の2つ。
 一つ目のメリット「資金調達」では、一般的に株式会社は株式を発行し、たくさんの人々が配当を期待することで、資金を集めやすいと言われ、特に株式上場すれば全世界の人々から莫大な資金を調達できる可能性がある。数年前にマンチェスター・ユナイテッドは上場により約182億円を獲得。二つ目の大きなメリット「組織の支配」として、発行済株式の過半数を保有もしくは集めることで、株式会社の最高意思決定機関である株主総会での決定権を握ることが可能。多額のお金を必要とするJクラブでは、お金は集めやすい事は事業にとって有利。また、過半数の株式を保有することで、要らない意見を排除することも可能。しかし、地域密着を実現させるクラブにおいて、果たして本当に正解なのか?

配当できたJクラブは未だ存在しない
 株式会社がお金を集めやすい一番の理由は利益配当。出資した額に応じ、配当が得られるという動機がお金を集めやすくしているが、配当が期待できなければいくら株式会社でもお金は集まらない。Jクラブにおいて、未だ配当をしたことのあるクラブはないというのが現実。
 そもそも配当できるほど利益がない場合が多く、2011年はJ38クラブ中18クラブが赤字。もし多少の利益が出たとしても、税金を支払って、残りは翌年の強化費や施設整備に充当することが大多数。配当が期待できなければ株式会社という形態をとっていてもお金が集めやすいとは言えないのではないか。
 2015明治安田生命Jリーグでは、Jクラブの株式上場を認められてなく、「組織の支配」というメリットに関係するが、上場すれば多数の株式が発行され、売り買いが増大。これは、株主総会での発言権が増加し、クラブ側が好まない意見が増えすぎると、クラブ運営に支障をきたす恐れがあるから、発行済株式の過半数以上を親会社もしくは安定株主が保有することで、クラブ運営の意思決定を迅速にし、安定的なものにしたいという考え。

【営利と非営利の違いは利益の還元の仕方】
 一般的に「営利」=お金を儲ける、「非営利」=ボランティアと考えられているが、法律上は全くの異なる解釈。営利か非営利かの違いは、「利益をどのように還元するか?」という点。
 「収入-支出=利益」という方程式は、この利益を一定の人々に還元することを「営利」といい、一方、この利益を一定の人々に還元せず、翌年の事業費に全額繰り入れることが「非営利」。営利法人の代表が株式会社であるため、株式会社には株主配当が存在。
 非営利法人の代表は財団法人や社団法人、NPO法人などがあり、これらの法人の利益は配当できず、翌年の事業費に全額繰り入れる事が必須。この理論をJクラブに当てはめて考えてみると一つの矛盾が発生。「利益を配当しない」「株式上場はできない」にもかかわらず株式会社という現状。これでは株式会社のメリットがまったく意味を成していない状態。
 親会社の支配下にあるクラブを私たちは地域密着のクラブと思えるのか。最終的には親会社の意向に従うクラブを、自分たちのクラブと言えるのか。結局、株式会社である以上、私たちのクラブではなく、株主のクラブになってしまうのではないか。

【Jクラブ3つの事業は株式会社で行えるか?
 Jクラブは、「興行(試合)」「普及」「育成」という3つの事業を今まで株式会社で実施。しかし興行主体のJクラブにおいて普及や育成は長期的で収益に結びつきにくい事業であるため、なかなか本腰を入れる事が困難。また株式会社とは株主に利益を配当すること(=営利)が大前提のため、利益に結びつきにくい事業は株主利益に反する事と認識。
 いくら配当をしないとはいえ、赤字の垂れ流しも許されないため、直接的に利益に結びつきやすい事業を優先せざるを得ない状態。普及と育成はJクラブにおいて必ず行わなければならない事業であり、将来的な収益に繋がるが、株式会社という組織形態の中では、短期的な利益を出すことが優先されがち。
 この葛藤は興行、普及、育成という性質が異なる3つの事業を株式会社で行ってきたからこそ生まれるもの。この3つの事業を性質によって営利、非営利に分け、本来の性質にあった組織形態で行うことの方が理にかなっているのではないか。収益を求める興行は株式会社、長期的な地域に根付いた事業を行う普及や育成は非営利法人と、組織形態を分けることで効率的な組織運営を期待。

【非営利法人のメリットを考える】
 プロスポーツクラブが非営利法人を活用することのメリットは主に3つ。一つ目は地域との距離が近くなること。親会社の支配下にあるJクラブが多い中、いくら地域での活動を積極的に行っていても、親会社の色は隠せず。地域の意思より親会社の意向を聞かざるを得ない事もあり、いくら地域密着を掲げたところで本当の意味での地域に根付いたクラブとは言えない状況。
 一方、非営利法人の意思決定は、原則非営利法人の会員が一人一票を持つことから、会員の意思の総意がクラブの意思となる事ができて、会員は自らの意思をクラブに伝えることが可能。二つ目は税制の優遇。非営利法人には税制の優遇があり、特にスポーツ指導の対価(スポーツ教室やスクールの会費や参加費など)は原則非課税。
 三つ目は公的支援。公共スポーツ施設を利用せざるを得ないビジネスモデルであるJクラブは地方自治体の協力は不可欠。通常、地方自治体は株式会社との付き合いには慎重になるため、非営利法人を活用することで地方自治体との距離を埋めることが可能。
 また、totoでクラブハウスの建設やスポーツ活動費などの助成金が得られやすいが、助成金の申請対象団体は非営利法人であり、株式会社では申請不可。実際にJ1湘南やJ2のC大阪、東京V等は非営利法人である総合型地域スポーツクラブを持って、こういったメリットを活用。

ハイブリッド型スポーツクラブとは?
 営利を求めるときには株式会社、非営利を実現するときには非営利法人。このように適材適所に法人格を使い分け、効率の良いクラブ運営を実現させるクラブモデルを「ハイブリッド型スポーツクラブ」と呼ぶ。実際にJ1山形のようにクラブ全体が非営利法人でも何ら問題はなく、例えばFCバルセロナは非営利法人であり、むしろこれが理想。
 ただ株式会社が先行しているJリーグでは、このハイブリッド型スポーツクラブの形態の方が適用しやすいと思われ、ハイブリッド型スポーツクラブは決して新しい取り組みではなく、日本では2002年にJ1湘南がNPO法人を設立。
 また2000年に文部科学省が推奨している「スポーツ振興基本計画」ではこのハイブリッド型スポーツクラブの形態は、ドイツのスポーツクラブがモデルであり、ドイツのプロクラブの下には地域スポーツクラブが存在し、地域がプロを支えているという。またスペインではプロクラブの株式会社化の義務を撤廃。
 そう考えるとハイブリッド型スポーツクラブは、ヨーロッパのスポーツ文化を目指した「Jリーグ百年構想」を実現させるためには欠かせないクラブモデルといっても過言ではなく、今までJクラブは私たちの地域にありながら、私たちのものではなかった事は、株式会社という組織形態が原因。これは本当の意味での地域密着ではなく、地域密着とは、Jクラブと地域が一緒になってクラブを支えていく事であり、その仕組みがハイブリッド型スポーツクラブ。
フットボールチャンネル該当記事:http://www.footballchannel.jp/2013/04/14/post3658/

 2年前の記事ですが、今でもホットな記事です。当部ブログでも「商業主義」とかの表現を使いますが、サッカー興業に重きを置きすぎて地域貢献活動を余りやっていないと思われるところがあるのかもしれませんが、言いたいところは一緒でしょう。当ブログでよく100年続きそうなクラブという表現を使いますが、一つの目安として、非営利法人を保有していて、ユース事業等を行ったり、異競技事業を行ったりしているところを評価しています。非営利法人を持っていても幽霊法人化しているのはダメ出しかな。
 そういう面では2002年にすでにNPO法人を立ち上げて、総合型地域スポーツクラブを運営し始めた湘南さんは素晴らしいです。まさにJリーグ百年構想の優等生クラブ。昔のJリーグから、今のJリーグに替わってしまって、Jリーグ百年構想もすっかり色あせた状態ですが、守って欲しいところです。「サッカーだけやってればいい」「サッカー興業だけやって儲けていればいい」では、100年残れないのではないでしょうか。

コメント
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