「メディカルツーリズムの勧め」

2011-03-09 20:58:23 | Weblog
メディカルツーリズムの勧め

商業や工業分野は言うに及ばず、教育や各種のサービス産業に至るまで、国境を越えての人的・物的交流が、情報交換の国際化の波に乗って、誰の目にも日常茶判事になっている今日、我が国の医療だけが国際化に踏み出せずに鎖国状態で残り続けることは、如何なる理由があっても、もはやその正当性を根拠づけることはできないでしょう。
いまさら、気温の変化に対応できなかった恐竜の絶滅の例を持ち出すまでもなく、今日は、在来の価値観や考え方・手法などが、一瞬の間に反転してしまう動きの速い時代で、もはやこの動きを止めることは誰にもできません。
長年にわたり鉄壁を誇ってきた独裁政治の強権国家ですら、民主主義化への流れを止めようがない時代とさえ言っても、決して大げさではないのです。
それならば、むしろ柔軟に時代の流れに沿って動いた方が、国家や企業・団体の生存には役立つメリットが大きくなるでしょう。
医療分野とて例外ではありません。国内の医療保険制度の維持という一見すれば正当性があるような理屈を並べ立ててみても、それは過去の時代に於いてなにがしかの正当性を有してはいても、永遠に正当性を持ち続けるものでは決してないでしょう。新しい時代には、新しい価値観や制度が必要です。
そのような大局的観点から医療の国際化やメディカルツーリズムの動向を眺めれば、東南アジア各国で誕生し、僅か10年前後で、広く世界中に受け入れられたメディカルツーリズムへの人々の需要は、それまでの固定した世界観を根底から変える大きな変動といえます。
即ち、国境線越える人々を送りだす国側での長年の弊害であり続けている医療費の際立つ高さや病院サービスへの待機期間の異常な長さなどが、次第に大きな押し出し要因となり、逆に、患者受け入れ国側の高度医療サービス提供の迅速さや医療費の安さなどが受け皿としての引き受け要因となった構造的変化に加えて、航空便の発達が促進要因として働き、国境線を越えての需給調整の動きが一気に激しくなってきたものといえるでしょう。
そこにおいては、医療の国際化を止めるべき理由は何もありません。むしろ医療に関する大きな国家的・社会的問題を即座に解決する優れた解決策として、大いに推奨されるべきでしょう。それは、一種の「医療難民」を、国境線の向こうにある国々が受け入れ救済する崇高な人道主義の具現化ともいうべき現象であり、医療サービスにおける先進国という自負を持つ我が国なら、なおのこと医療発展の途上国への支援や救済策の具体化に励むべきものでしょう。
幸い、経済産業省の先導が功を奏し、観光庁や外務省・法務省、厚生労働省を含め、医療滞在ビザや外国人受け入れ病院の認証制度準備に至るまで、政府と官庁が一体的に足並みをそろえ、協力し合っての強力な国家的促進策が推進されている今、メディカルツーリズム発祥の地の東南アジアでもそうであったように、我が国の長年の経済的衰退を押しとどめ、活気ある状態へと転換させるパワーを秘めるものとして、大いに期待されてしかるべきものである。
以上

平成23年3月9日 水曜日
東京通訳アカデミー・学院長・岡村寛三郎
特定非営利活動法人 日本通訳案内士連合 理事長
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