鎌倉市議会議員 納所てるつぐブログ

日々の議員活動でのできごとや思ったことをつづっています。

教師こそ最大の教育環境!

2006年12月05日 | Weblog
教師こそ最大の教育環境であるというのが私の持論ですが、そのことを現場で実践しているある小学校教諭のA先生の話を知りました。

新一年生を担任した時のA先生。

クラスの中には入学時に、他の子供たちよりことば数が少なく、A先生とも目を合わせて話をすることが困難なB子ちゃんがいたそうです。

B子ちゃんは、つねに何かあるごとに奇声を発し、自分の思い通りことが運ぶようにしようと、周りの子供たちに自己中心的な要求をします。

1年生の1学期の公開研修会の生活科の授業の時のこと、いざ授業が始まるとB子ちゃんは、いつもより元気に手を挙げ自分を当てるように要求するのです。
2回も3回も当てたにもかかわらず、その要求は納まりません。

周りの子供たちの「Aちゃん、もう3回も当ててもらったでしょ。すこしは我慢してよ。」という声に、「あんたなんて大嫌い。わたしを注意したわ。」と教室中の子供たちを叩き歩き始めるのです。

その後、学校中響きわたる声で泣き叫び、教室を飛び出していった時、研修会の見学に訪れた先生方と鉢合わせしてしまう始末です。

B子ちゃんは毎日がこの繰り返しで、1年生の1学期の大切な学級作りをしようとするA先生のエネルギ-が次第に奪われていくようでした。
そのうちA先生は「この子さえいなければ・・・」という気持ちも否定できないむなしさだけが心に残っていきました。

B子ちゃんは授業で思った通りにならないと腹を立て「死んでやるから、死んでもいいのね。」と叫びます。

でもA先生は、B子ちゃんが「死んでやる」と言葉を口にする度に、すぐその場で「Aちゃん、あなたが死んでは困るの。大事な人なのよ。先生は、あなたに死んでほしくないよ。」と真剣にはっきりと語りかけました。

ところがB子ちゃんは、そんなA先生にも容赦ありません。
漢字の間違えを赤ペンで直すと、「先生、わたしの書いた漢字を直したわね。直す先生なんて、いや。先生を嫌いになるからね。先生、それでもいいのね。学校に来てあげないからね。いいのね。」と言い出す始末です。

B子ちゃんは、特に友達に注意される事をいやがり、ひどい時には、はさみを振り回し、周りの子供たちを今にも突き刺そうとします。

特にB子ちゃんの隣に座った子供の様子は見逃すことができません。
ちょっとでも人に注意されることを嫌がるB子ちゃんに隣に座った子供は疲れていきます。

A先生は、その度にその子供を呼んで「今、あなたがB子ちゃんにした事は間違っていないよ。よく、優しく教えてあげたね。」と確認し励まします。

そうしていくうちに、B子ちゃんが大きい声を出しても隣の子供は落ち着いてかかわるようになり、目と目を合わせて「先生、ぼくは大丈夫」というサインをしてきます。

やがて、どんなに泣いても、「みんな嫌い。」「先生嫌い。」と叫んでも、教室を飛び出していっても、必ず「先生、私のこと嫌い?好き?」と聞いてくるB子ちゃんに、A先生は必死に伝えようとする何かを感じるようになっていきました。

友達が自分のために教えてくれたことも、注意してくれたことも、B子ちゃんにとっては自分を認めてもらっていない、自分の存在を否定されたと感じ、自分を受け入れてもらえないという感情がはさみを振り上げる行為につながっていたのです。

そして、その苦しい思いでいっぱいになりながらも「先生、私のこと好き嫌い?」と聞いてくるB子ちゃんの叫びは、人から大切にされた経験の希薄さ、無償の愛を受けた経験の乏しさから来る心の叫びだと感じた時、A先生は「B子ちゃんこそ、つらかったんだ。」と愛しく思うようになりました。

 A先生の日々の姿勢も、以前の「どうしたら、教室が落ち着くだろうか。」「何とかしなければ」というような焦りばかりの姿勢から、「大切な35人の子供たちを誰よりも好きになり、この子たちを守り育てることのできる私になりたい。」と本当の子供を理解することがすべての原点である、原点に戻ろう、本気になって子供と真正面から向き合おうという姿勢に代わっていったのです。

A先生は子供たち一人一人と帰りに握手をすることにしています。
一人一人に声をかけ、しっかり目を合わせることで、その日の様子を確認するのです。

B子ちゃんはこの時「先生、今日はわたし、はなまる?」と必ず聞いてきます。

「そうだね、今日はAちゃんがお友達にありがとうって言っていたのを先生見ていたよ。だから、はなまるだね。このはなまるは、お家までちゃんともってかえってね。そしてお母さんに見せてあげてね。」と言って、B子ちゃんの手にはなまるを指でかき、その手をB子ちゃんの胸に充てて落ち着いた心で喜びをもって家に帰れるようにしました。

親とのかかわりが薄いため、家庭での多様な経験が極端に少なく、人とのコミュニケ-ションの経験も少ないB子ちゃんにとって、とくに生活科の学習は価値のある学びの場になりました。

靴の磨き方、靴下のたたみ方、机の拭き方、ぞうきんの絞り方など、友達に教えてもらう場をたくさんつくりました。
この学習で、B子ちゃんの笑顔を見ることができました。

しかしB子ちゃんは、今もA先生の顔をのぞき込んでは「先生、Bちゃんのこと好き?嫌い?」と聞いてきます。

でも今のA先生は、いつもいつも確かめなければ安心していられないB子ちゃんに、愛しさを感じています。

A先生は「この子たちが、そのままの自分に自信を持ち強く生きていかれるよう願う時、わたし自身がより人間性豊かな教師であること、子供にとって最大の教育環境は教師自身であるとの自覚が必要だ」と述べています。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。