また大雪の降っている地方があるということで、雪崩などの事故でもし雪に埋もれるようなことがあったら、体を丸くして顔の前に空間を作ると息が出来るようになるそうです。
とっさにそんなことができるかどうか分かりませんが、知識はあった方が良いですね。
そこからはまた、身の周りに目を向けると季節の移り変わりを感じられるというお話を。
この季節にウグイスを見かけても、まだ恋の季節ではないので「ホーホケキョ」とは鳴かないのだそうです。
そして、カモが凍った水田で動けなくなっているところを、鎌で脚を刈って捕まえることがあるとおっしゃるので、皆「へえ〜」という顔で聞いていたら
生前の笑福亭仁鶴も十八番にしていたという落語『鉄砲勇助』の中にあるカモメのエピソードでした。
※ ウグイスの鳴き声の件は本当です。
授業本編は、テキスト『「書く力」私たちはこうして文章を磨いた』(池上彰・竹内政明 著/朝日新書) から
第二章 本当に伝わる「表現」とは の続きで
・なぜその本が好きなのかを分析してみる
・「控えめな表現」の効用
・「たとえ」の作り方
のところを皆で読んでいきました。
何度も言われることですが、文章がうまくなるにはとにかく本をたくさん読むのが良いそうです。
そして、その本のどこが好きかを自分で分析してみる、という行動の積み重ねが、文章を書くうえでの栄養分になっていく。
さまざまな出版社から出ている『類語辞典』などで、違う言い回しを見つけるのも良いそうです。
同じように言っていても、褒めてから貶すのと、貶してから褒めるのとでは、受け取る側の印象が違ってきます。
たとえ言っていることが正しくても、批判するときは8割ほどの熱量に収めて、反感を買わないようにしましょう。
日本人は基本的に「判官贔屓」が多く、言い過ぎると逆効果になることもあるので、十分気をつけましょう。
毒気を含みながらもユーモアでスッとかわすやり方は、先ほども出てきた落語や講談も参考になるそうです。
次に、前回の授業の時に書名が出た、町田康の『俺の文章修行』から
「これまで読んできた本の影響」 の「 千回読んだ『ちからたろう』がつくった文章の原型と世界観」
のところを見ていきました。
『ちからたろう』はむかしばなしですので、いろんな人が絵本にしていますが
ここでは、先生がポプラ社から出ている『ちからたろう』(いまえよしとも 文・たしませいぞう 絵) を読み聞かせてくださいました。
町田さんは子どもの頃にこのお話を読んで、①この世には貧しい人と豊かな人がいる、②貧しい生まれでも力があれば成功者になれる、③この世には善と悪があって悪は善によって滅ぼされる(最後に善は勝つ)という世界観 が分かったとか。
それにより、彼が “文章を書くときの現実と文章の「変換プロセッサ」の原型(大まかな設計図)” ができあがったのだそうです。
「文章がうまくなるためには、たくさん本を読むこと」は当然ですが
絵本が書きたい、小説が書きたい、からといってもそのジャンルだけを読むのではなく、違うジャンルの本を読むことが近道になる、というのが高科先生の持論です。
「読んだ中から好きな本を見つけ、分析する」というのは、テキストの中で池上さんと竹内さんが言っておられるのですが、先生はそのうえで「好きな文章を書き写す」ことも薦めておられました。
「、」「。」改行やオノマトペなどを真似をしているうちに、自分の中に文体ができてくるからです。
それは、絵を描く人が模写をするのと同じです。
絵話塾・絵本クラスの講師でもある絵本作家の荒井良二さんも、毎日短い時間で名画の模写をしていると言っておられました。
「たとえ」をうまく作るには、自分の引き出しの中の言葉をたくさん持つようにしましょう。
うまい比喩が使えるのは効果的ですが、直喩は得意顔に見えることもあるので注意が必要です。
倉嶋厚・原田稔両氏の著作・編集による『雨のことば辞典』(講談社学術文庫)や、高橋健司の『空の名前』 (角川書店) のような類の本にお世話になるのも良いでしょう。
◎とにかくいっぱい書かないと文章はうまくならない、ということを頭においておきましょう。
子どもは絵本の内容を全部覚えていても、何度も読んでほしいとせがむことがあります。
哲学者・鶴見俊輔は、息子の太郎が幼い頃、毎晩のように『おだんごぱん』(せたていじ 訳・わきたかず 絵/福音館書店) を読み聞かせていたそうです。
ここで生徒さんから、いっぱい読む他ジャンルの本としては、どんなふうに広げていったらよいのか?という質問が。
先生は、まず手始めに身近な人が「おもしろかった」と言っているものを試したり、好きな本の作者が書いた違う作品を読んだりするのが良いとおっしゃっていました。
ある時宇野亜喜良は、江戸時代の風俗を描く必要ができたため、たくさんの資料を読んで学び、ついにそのジャンルの絵が描けるようになったといいます。宇野氏ほどのアーティストでも、「知らないことを学ぶ」ことは重要なのですね。
後半は課題について。前回は「昔話の再話を書く」というテーマでした。
生徒さんそれぞれが違うお話を書いてこられましたが、先生が共通して足りないものがあったことに気がついたそうです。それは「繰り返し」についてです。
そして、『つるにょうぼう』(矢川澄子 作・赤羽末吉 絵/福音館書店) と、『王子様の耳はロバの耳』(岡田淳 作・はたこうしろう 絵/フェリシモ出版) を読み聞かせてくださいました。
どちらもよく知られたお話を、作家独自の解釈による優れた絵本に仕上がっています。
この2作でも「繰り返し」が出てきます。むかしばなしでは特に、エピソードやオノマトペの繰り返しをうまく使って書くことが重要なのだそうです。
最後に、この日は「小道の散策」という課題が出ました。
前回紹介してくれた長田弘の『小道の収集』(講談社) から「小道の収集」を読んで、実際に身近な小道を散策したり、以前に小道を歩いた時のことを思い出して、その時のことを文章にしてください、というものでした。
次回22日(土)の授業の時に提出してください。よろしくお願いします。