ビルボードHot100は毎週水曜に発表される週間ランキングですが、最新の2021/07/07公開チャートは、乃木坂46・27thシングル表題曲「ごめんねFingers crossed」にとって、CD発売4週目が集計対象となっています。
曲名が発表されたのはCD発売の5週前で、その週から「ツイート数(T)」の集計対象となり、そして同時に「総合(G)」つまりHot100の対象曲として、ランキングがスタートしています。
配信販売やMV公開がまだ始まっていなくとも、曲名さえ発表されれば、T項に順位が付き、それだけで「総合(G)」100位圏内にランクインすることもあるのがビルボードHot100の特徴です。
つまり音楽的な実態が分からなくても、曲の名前が判明すれば、その週からHot100のランキングがスタートするわけです。
さて、CD発売5週前に曲名が公開され、今回の07/07公開チャートがCD発売4週目に当たる「ごめんねFingers crossed」の、これまでの順位推移は以下のようになっています。
(表1) 乃木坂46「ごめんねFingers crossed」のBillboard JAPAN Hot100の総合及び各項目順位の推移
凡例
(総合) 総合順位 各項目順位 : CD発売後(前)週数 集計対象期間
# 項目記号の意味
P=CDセールス、D=ダウンロード数、S=ストリーミング数、R=ラジオ放送回数
L=PCによる読み取り数(ルックアップ)、T=ツイート数、M=国内動画再生回数
K=カラオケ歌唱回数、B=BUZZ(D+T+M)、F=総合100位圏内ランクイン回数
# 総合の「100外」と各項の「00」は共に100位圏外、「--」は集計対象外
# 100位圏内に入った項目が1つ以上出た週以降を記載。曲名公開はCD発売5週前
# 最新2021/07/07公開チャートはCD発売4週目
(総合)100外 P--/D--/S--/R00/L--/T26/M--/K--/B00 : 05週前 2021/05/03(月)09(日)
(総合)100外 P--/D--/S--/R00/L--/T12/M26/K--/B37 : 04週前 2021/05/10(月)16(日)
(総合)100外 P--/D--/S--/R00/L--/T00/M39/K--/B84 : 03週前 2021/05/17(月)23(日)
(総合)100外 P--/D--/S--/R79/L--/T97/M68/K--/B00 : 02週前 2021/05/24(月)30(日)
(総合)044位 P--/D11/S00/R30/L--/T23/M83/K--/B13/F01 : 01週前 2021/05/31(月)06(日)
(総合)001位 P01/D15/S00/R06/L01/T19/M83/K00/B17/F02 : 01週目 2021/06/07(月)13(日)
(総合)011位 P04/D39/S00/R09/L02/T15/M00/K00/B32/F03 : 02週目 2021/06/14(月)20(日)
(総合)020位 P05/D64/S00/R26/L04/T00/M00/K00/B100/F04 : 03週目 2021/06/21(月)27(日)
(総合)043位 P06/D87/S00/R74/L06/T00/M00/K00/B00/F05 : 04週目 2021/06/28(月)04(日)
Hot100は「CDセールス(P)」「ダウンロード数(D)」「ストリーミング数(S)」「ラジオ放送回数(R)」「PCによる読み取り数、通称ルックアップ(L)」「ツイート数(T)」「国内動画再生回数(M)」「カラオケ歌唱回数(K)」の8項目それぞれについて、1位から100位までのランキングが作られ、それらを基に「総合(G)」の順位が決められている。
ちなみに「BUZZ(B)」はD項、T項、M項を基にしたランキングで、デジタル系指標のトータルな人気動向を知るには便利ですが、独立した項目ではなく、あくまでハイブリッド指標です。
表1に示されている8項目と総合の順位推移から、乃木坂46「ごめんねFingers crossed」の楽曲人気の現状を探っていこうと思います。
乃木坂では15th「裸足でSummer」から、YouTubeにおける表題曲MVの無期限フルサイズ公開が再開され、MV再生回数やビルボードM項順位で表現される「動画人気」が確立している。
つまり15thから27thまでの13曲は、フルサイズMVの無期限公開という同じ条件下でM項の順位が決められており、各曲の順位推移を比較する意味がある。
そして「総合(G)」を含む他項目についても、この13曲の比較を通して、27th「ごめんねFingers crossed」の各項順位推移を評価していくつもりです。
ところで、例えば数年前にリリースされた曲と、最近リリースされた曲が、共に1週間でMV再生回数を百万回積み上げたとしても、ビルボードHot100「国内動画再生回数(M)」の順位が前者はベスト5に入り、後者はTOP50にも入らなければ、百万再生の価値がここ数年で変わった可能性が高く、以前と同じ動画人気を維持しているとは言えない。
近年、音楽をネットで楽しむ人が明らかに増えていて、MV再生回数やストリーミング再生回数を数年前の曲と直接比較しても、楽曲人気について何か言うのは難しくなっている。
一方、順位は他アーティストの楽曲との比較によって決まる相対指標で、その曲の再生回数がその時代に持っている意味を知る手掛かりとなる。
ただ順位推移を比較するには、MV再生回数を比較する場合とは違う、別の工夫が必要です。
27thの曲名が「ごめんねFingers crossed」であると発表され、初めて「総合(G)」の集計対象となった週を1週目(W)とすると、07/07公開チャートは9週目(W)に当たりますが、15thから27thまでの表題13曲の1Wから9Wまでの順位推移を並べると以下のようになります。
(表2) 乃木坂46シングル表題曲のBillboard JAPAN Hot100「総合(G)」順位推移
凡例
1→2→3→4→5→6→7→8→9W順位 [9W迄の最高順位] : 曲名_Sg番号
# 配信開始週を1週目(W)として数えている
#「00」は100位圏外、「nd」は未定
# 27th「ごめんねFingers crossed」のT項9Wは07/07公開チャート(06/28-07/04)に相当
# 15th～27thのCD付きシングル表題13曲を曲名公開日の早い順に上から掲載
35→40→20→10→01→03→06→15→17 [01] : 裸足でSummer_15
08→22→07→01→06→08→08→11→10 [01] : サヨナラの意味_16
00→24→26→05→01→03→03→08→09 [01] : インフルエンサー_17
43→32→61→10→01→04→05→09→04 [01] : 逃げ水_18
00→00→00→00→63→61→10→10→09 [09] : いつかできるから今日できる_19
00→00→00→00→00→00→00→00→17 [17] : シンクロニシティ_20
00→44→29→27→12→01→03→07→06 [01] : ジコチューで行こう！_21
00→27→53→61→10→01→02→08→11 [01] : 帰り道は遠回りしたくなる_22
00→00→25→80→00→09→01→08→14 [01] : Sing Out！_23
00→76→96→00→15→01→05→08→18 [01] : 夜明けまで強がらなくてもいい_24
00→00→33→00→19→01→04→14→24 [01] : しあわせの保護色_25
00→00→00→00→00→00→00→00→34 [34] : 僕は僕を好きになる_26
00→00→00→00→44→01→11→20→43 [01] : ごめんねFingers crossed_27
20th「シンクロニシティ」や26th「僕は僕を好きになる」は曲名が通常よりかなり早く公開された為、CD発売週はそれぞれ12Wと10Wに当たります。
新曲プロモーションが本格化して、「総合(G)」順位が上位へ食い込み始めるのはCD発売の1週前くらいからで、27thに合わせて9Wまでしか載せていない上表では、何かとんでもなく低調な推移に見えてしまう(笑)。
上表を15W、20Wと伸ばしていけば、20thや26thがどこまで上位に入り、何週くらい100位圏内に留まったかが見えてきますが、そうなると読むべき数字がどんどん多くなり、全体像が掴みずらくなっていく。
また、縦軸に順位、横軸に曲名公開後の経過週数を取ったグラフを描いてみても、グラフ線が錯綜して、何かを読み取れそうな雰囲気はなかなか漂ってこない(笑)。
曲名公開後のプロモーション日程が曲ごとに大きく異なるため、グラフ線の形が一定のパターンを取らず、曲と曲を比較しづらいんですね。
| (表3) |
|---|
 |
そこで、順位を正確に追うのではなく、1位から100位までを幾つかの順位帯に分け、それぞれの順位帯に何週入ったかに注目して、グラフを描いてみました。
次のグラフは、「総合(G)」ランキングにおいて、1～20位、21～40位、41～70位、71～100位、そして100位圏外の5つの順位帯に、各曲がそれぞれ何週入ったかを色分けして示したもので、曲名公開週から最新2021/07/07公開チャートまでの全期間を対象にしています。
| (表4) |
|---|
 |
100位圏内に入った週数を見ると、16th「サヨナラの意味」以降は、22nd「帰り道は遠回りしたくなる」まで、17th「インフルエンサー」の51週を最長として、常に20週を越えるランクインを実現している。
しかし23rd「Sing Out！」と24th「夜明けまで強がらなくてもいい」で20週を割り込み、25th「しあわせの保護色」と26th「僕は僕を好きになる」は15th以降で初めて、100位圏内入りが10週を切ることになる。
23rdと24th、さらに25thと26thと、23rd以降、2シングル毎に100位圏内週数が大きく減少する形になっている。
(表4)の基となった数字データも以下に載せておきます。
(表5) 乃木坂46シングル表題曲のBillboard JAPAN Hot100「総合(G)」の曲名公開全期間に渡る順位成績
凡例
A-B-C-D [E] (100位圏内入り週数 / 配信週数; 最高順位) 曲名_Sg番号
# 上記 A～Eは、それぞれ以下の順位帯にランクインした日数を表す
A(1～20位)、B(21～40位)、C(41～70位)、D(71～100位)、E(100位圏外)
# 曲名公開週から2021/07/07公開チャートまでのデータ
# 15th～27thのシングル表題13曲を曲名公開日の早い順に上から掲載
10-04-01-02 [245] (17週/262; 01位) 裸足でSummer_15
12-08-07-01 [218] (28週/246; 01位) サヨナラの意味_16
12-11-13-15 [177] (51週/228; 01位) インフルエンサー_17
07-05-05-04 [187] (21週/208; 01位) 逃げ水_18
13-04-09-03 [175] (29週/204; 01位) いつかできるから今日できる_19
15-02-10-06 [145] (33週/178; 01位) シンクロニシティ_20
13-03-06-02 [133] (24週/157; 01位) ジコチューで行こう！_21
17-05-07-01 [113] (30週/143; 01位) 帰り道は遠回りしたくなる_22
09-06-02-02 [097] (19週/116; 01位) Sing Out！_23
08-04-03-03 [083] (18週/101; 01位) 夜明けまで強がらなくてもいい_24
04-03-02-00 [063] (09週/072; 01位) しあわせの保護色_25
03-03-02-00 [024] (08週/032; 01位) 僕は僕を好きになる_26
03-00-02-00 [004] (05週/009; 01位) ごめんねFingers crossed_27
乃木坂のシングル表題曲は、7th「バレッタ」以降、CD発売週に「総合(G)」で1位を獲得し続けており、15th以降も、最新27thに至るまで、最高順位が1位であることに変わりはない。
しかし100位圏内に入った週数を調べてみると、23rd以降、明らかな減少傾向が見えてくる。
では、どの順位帯へのランクインが短くなっているのか、1〜10位と11〜20位の週数グラフ、さらに21〜40位、41〜70位、71〜100位の週数グラフを作ってみました。
| (表6a) |
|---|
 |
| (表6b) |
 |
TOP20入り週数は、22ndの17週に対して、23rdが9週、24thは8週、さらに25thは4週、26th3週で、20位以上の上位帯への滞在が2シングル毎に減少している。
また、21〜100位に入った週数も同様に、2シングル毎の減少が見られ、結局、上位や下位に関係なく、多くの順位帯でランクイン期間が短くなっているのが分かります。
27th「ごめんねFingers crossed」は、最新週の曲名公開9週目(W)で43位に入っていて、CD関連指標のP項とL項が6位と高い順位を維持していることから、まだ100位圏内週数を伸ばす可能性は十分あります。
しかし、D項87位、S項圏外、M項圏外、T項圏外といったデジタル指標の状況を考えると、今後、「総合(G)」TOP20へ復帰する確率は小さく、表6aにおけるTOP20入り週数はほぼ確定と捉えてよく、23rd以降の減少傾向が少なくとも上位帯に関しては、27thでも続いている印象を受けます。
「総合(G)」ランキングは、8項目の各ランキングを基に、ビルボードが考えた計算式に従ってトータルのポイントをはじき出し順位を決めているので、23rd以降、Gの順位が振るわないのであれば、23rdからの順位推移が宜しくない項目がある筈です。
原因となっている項目を調べていくのが、この記事のメインテーマになりますが、このまま書き続けるとあまりに長くなってしまうので、一旦この辺で区切って、続きは新たに投稿する記事に書くことにします。
ビルボードHot100は楽曲の人気を調べる際、非常に役に立つランキングですが、項目が多いこともあって、慣れていないとピンとこない方もいるかもしれないので、今回はランキング自体の説明を少し丁寧に書いてみました。
いつもツイッターにHot100順位のデータやグラフをばんばん載せていますが(笑)、文字数制限があって、基本的な説明をするのが難しいので、今回はいい機会かなと。
最後に、櫻坂46・欅坂46と日向坂46のシングル表題曲に関する、「総合(G)」の順位帯別週数グラフを載せておきます
まずは櫻坂46・欅坂46のグラフ。
| (表7) |
|---|
 |
このグループの楽曲は、多くの指標で欅坂46・1st「サイレントマジョリティー」が桁違いの数字を出している為、全曲が収まるようにグラフを作ると、2nd「世界には愛しかない」以降があまり良くない様に見えてしまうんですが(笑)、それは縦軸をサイマジョに合わせて大きく取るからであって、他の曲も4th「不協和音」を筆頭に相当な順位成績を記録しています。
ただ改名再出発の櫻坂46は、1st「Nobody's fault」も2nd「BAN」も、欅時代と比べると、ランクイン週数が大幅に少なくなっています。
(表8) 櫻坂46&欅坂46シングル表題曲のBillboard JAPAN Hot100「総合(G)」の曲名公開全期間に渡る順位成績
凡例
A-B-C-D [E] (100位圏内入り週数 / 配信週数; 最高順位) 曲名_Sg番号
# 上記 A～Eは、それぞれ以下の順位帯にランクインした日数を表す
A(1～20位)、B(21～40位)、C(41～70位)、D(71～100位)、E(100位圏外)
# 曲名公開週から2021/07/07公開チャートまでのデータ
# 15th～27thのシングル表題13曲を曲名公開日の早い順に上から掲載
22-55-43-29 [129] (149週/278; 01位) サイレントマジョリティー_欅1
04-06-16-10 [228] (036週/264; 01位) 世界には愛しかない_欅2
11-12-08-15 [197] (046週/243; 01位) 二人セゾン_欅3
18-15-22-09 [161] (064週/225; 01位) 不協和音_欅4
17-04-08-03 [165] (032週/197; 01位) 風に吹かれても_欅5
13-08-13-06 [138] (040週/178; 01位) ガラスを割れ！_欅6
10-13-04-05 [123] (032週/155; 01位) アンビバレント_欅7
06-08-05-02 [108] (021週/129; 01位) 黒い羊_欅8
02-02-01-01 [032] (006週/038; 01位) Nobody's fault_櫻1
02-01-00-02 [013] (005週/018; 01位) BAN_櫻2
次は日向坂46。
| (表9) |
|---|
 |
100位圏内に入った週数を見ると、1st「キュン」の16週が最長で、2nd「ドレミソラシド」以降は5th「君しか勝たん」まで、4th「ソンナコトナイヨ」で少し盛り返しているものの、シングル毎に減少している印象がある。
「アザトカワイイ」はシングル表題曲ではなく、アルバム・リード曲で、P項やL項のCD関連指標の扱いが異なるので、G順位の比較はあくまで参考です。
(表10) 日向坂46シングル表題曲のBillboard JAPAN Hot100「総合(G)」の曲名公開全期間に渡る順位成績
凡例
A-B-C-D [E] (100位圏内入り週数 / 配信週数; 最高順位) 曲名_Sg番号
# 上記 A～Eは、それぞれ以下の順位帯にランクインした日数を表す
A(1～20位)、B(21～40位)、C(41～70位)、D(71～100位)、E(100位圏外)
# 曲名公開週から2021/07/07公開チャートまでのデータ
# 15th～27thのシングル表題13曲を曲名公開日の早い順に上から掲載
07-03-05-01 [106] (16週/122; 01位) キュン_1
04-03-05-01 [097] (13週/110; 01位) ドレミソラシド_2
03-03-02-02 [086] (10週/096; 01位) こんなに好きになっちゃっていいの？_3
02-03-03-04 [066] (12週/078; 01位) ソンナコトナイヨ_4
00-02-01-04 [042] (07週/049; 21位) アザトカワイイ_1stAb
02-01-01-00 [011] (04週/015; 02位) 君しか勝たん_5
