乃木坂46・28thシングル表題曲「君に叱られた」のYouTube公開MVが、今週木曜夜に公開25週目(w)を終了。
区切りがいいので、この辺で、再生回数の推移を少し振り返っておきます。
週単位での動きはツイートの方に毎週載せていて、公開25wでの状況は以下の通りです。
乃木坂46・28thシングル
表題曲
君に叱られた
YouTube : full MV
公開25週目(w)終了@ 02/24木21:00
累計再生回数 717.0万回
25w :
平均速度 1.5万回/日↑0.1
初週比 0.06
Ranking
乃木坂表題(15th-)MV14作
累14位⬌0 速12位↑1 比11位⬌0
坂道近年主要MV12作
累09位⬌0 速06位↑2 比05位⬌0
坂道表題系MV33作
累30位⬌0 速27位↑2 比26位⬌0
関連ツイートへ
2020年以降坂道主要MV12作中の25wにおける累計再生回数、平均速度、初日比のランキングは字数の関係で、ツイッターには載せていません。
次のグラフはそれら12作に、「君に叱られた」MVの後に公開された「流れ弾」「ってか」「最後のTight Hug」のMV3作加えた、計15作の累計推移です。
(表1) |
---|
「ソンナコトナイヨ」と「I see」が累計トップを走り、それらを「アザトカワイイ」が30w以降、やや減速しながらも追う形で、3作品が最速集団を形成。
また最新シングル表題MV3作品は、日向坂6th「ってか」、乃木坂28th「君に叱られた」、櫻坂3rd「流れ弾」の順で進んでいます。
公開初週から25週目(w)までのMV再生回数推移をざっくり把握するため、全期間を5wづつ5つに分け、それぞれの期間における積上再生回数を、文字通り「積み上げた」グラフを、15th以降の乃木坂表題曲MVについて作ってみました。
(表2) |
---|
各作品の棒グラフの高さは、25w終了時点での累計再生回数を表し、「君に叱られた」は717.0万回。
ただ、この累計717.0万回は、15th以降の表題MV14作中の14位ワーストで、28thは深刻な伸び悩みに直面していることが分かります。
次の表は、5wごとの5つの期間における、再生回数の平均増加速度と各期間終わりの累計を示したものです。
(表3) 乃木坂46シングル表題曲MVの公開25週目(w)迄の5w毎の累計再生回数及び平均増加速度
{1-5}→{6-10}→{11-15}→{16-20}→{21-25}w平均速度(累計) : 曲名_Sg(Ab)番号
# 平均速度は5w区切りの期間における積上再生回数を35日で割った値で万回/日単位
# 累計は5w区切りの期間終了時点での再生回数で万回単位
# 15th以降シングル表題曲MV14作を公開日の早い順に上から掲載
# 累計と速度の「0」は未定の意
10.8(0377.1)→4.3(0528.3)→2.6(0619.6)→2.3(0699.0)→2.3(0778.4) : 裸足でSummer_乃15
12.0(0418.3)→4.5(0575.1)→5.6(0770.5)→4.8(0938.6)→3.9(1074.4) : サヨナラの意味_乃16
21.0(0733.4)→9.8(1076.2)→8.2(1363.9)→8.9(1673.9)→7.4(1932.4) : インフルエンサー_乃17
10.5(0366.3)→4.5(0523.5)→3.2(0635.5)→2.1(0708.7)→2.0(0777.3) : 逃げ水_乃18
14.2(0496.9)→5.6(0694.1)→3.7(0825.1)→3.8(0959.0)→3.3(1072.9) : いつかできるから今日できる_乃19
22.3(0779.4)→9.8(1122.5)→6.4(1345.8)→5.4(1534.8)→3.7(1665.4) : シンクロニシティ_乃20
17.1(0600.1)→5.5(0792.8)→3.3(0908.8)→2.2(0987.2)→2.4(1072.9) : ジコチューで行こう!_乃21
18.0(0630.7)→8.3(0920.3)→9.7(1258.9)→7.6(1525.4)→5.7(1724.4) : 帰り道は遠回りしたくなる_乃22
16.8(0588.8)→5.3(0773.9)→5.1(0953.9)→4.0(1092.3)→3.1(1199.8) : Sing Out!_乃23
13.9(0485.8)→5.1(0664.7)→3.4(0783.5)→2.7(0877.7)→2.5(0963.8) : 夜明けまで強がらなくてもいい_乃24
13.9(0487.5)→5.2(0667.9)→2.9(0769.0)→1.9(0834.3)→1.5(0886.5) : しあわせの保護色_乃25
11.9(0415.5)→4.5(0571.4)→2.9(0672.1)→2.2(0750.0)→1.6(0806.9) : 僕は僕を好きになる_乃26
13.0(0455.8)→4.1(0600.7)→2.5(0687.9)→1.9(0754.1)→1.2(0797.3) : ごめんねFingers crossed_乃27
11.7(0408.0)→3.5(0531.6)→2.3(0613.5)→1.6(0667.9)→1.4(0717.0) : 君に叱られた_乃28
#「君に叱られた」MVの5週(w)ごと平均速度のランキング順位推移
12→14→14→14→13位/表題MV14作
========== 表題以外の主要曲MV ==========
15.4(0539.8)→8.8(0848.6)→5.5(1041.7)→4.2(1188.5)→4.3(1337.4) : I see…_乃25C
11.8(0413.5)→2.4(0498.1)→1.4(0546.7)→0.8(0575.3)→0.7(0601.3) : 世界中の隣人よ_乃配信1
06.6(0230.3)→2.0(0298.7)→0.0(0000.0)→0.0(0000.0)→0.0(0000.0) : 最後のTight Hug_乃bestAbL
「君に叱られた」MV再生回数の平均速度は、最初の1~5wでは15th以降表題14作中の12位でしたが、次の6~10wでは14位と最も遅いペースとなり、11~15wと16~20wも14位のままで3期連続のワースト。
21~25Wは、29th選抜の発表や楽曲パフォーマンスのテレビ披露があった為か、13位に浮上したものの、平均速度は1.4万回/日と低い水準に止まっています。
ただ伸び悩みは28thだけの問題ではなく、表題曲MVの21~25Wにおける平均速度を15thから順に見ていくと、25th以降は、2万回/日を常に割り込んでいる。
以前は、18th「逃げ水」MVの再生回数が歴代で一番厳しかった印象があり、実際、21~25Wの平均速度も、24thまでは、18thがワーストでしたが、25th「しあわせの保護色」からは、最新の28th「君に叱られた」まで、4作すべてが2万回/日を下回り、「逃げ水」に届いていない。
ところで、(表2)において、棒グラフの高さを、15thから28thまで順に辿ってみると、あるパターンが見て取れます。
15thから16thへの上昇は、17thで最大のピークに達し、その後、18thで大きく下落するも、19thで反転上昇、21stを挟む20thと22ndが次のピークを形成、しかし23rd以降は28thまで下落傾向が続き、ジリジリと減少する。
今後、このパターンを乃木坂のアルファベット頭文字を使い、「Nパターン」と呼ぶことにします。
実は、このNパターン、MVの累計再生回数だけでなく、ビルボードHot100の「ダウンロード数(D )」「ストリーミング数(S)」「国内動画再生回数(M)」「ツイート数(T)」などの順位成績にも、多少の揺らぎはあるものの、同じように認められます。
(表4) |
---|
Nパターンが出現するのは、楽曲そのものの人気を反映すると考えられる配信や動画の指標で、一方、ビルボードHot100の「CDセールス(P)」や「ルックアップ(L)」といった、握手会やミート&グリートの人気で大きく左右される指標には認められません。
(表5) |
---|
15th以降、最も反響が大きかったのは17th「インフルエンサー」で、次に20th「シンクロニシティ」や22nd「帰り道は遠回りしたくなる」が続くといった、ヒット度合いの実感が、Nパターンとかなり一致することからも、これは乃木坂シングル表題曲の音楽的人気の変遷を表していると考えていいでしょう。
28th表題MV再生回数の伸び悩みは、Nパターンにおける、23rdから始まり、26th以降とくに顕著になった楽曲人気低落の流れの中にあると言えます。
オリコン週間シングルランキングは、週毎にCDの売上枚数を集計し、200位まで順位を付けるもので、シングル毎の累計売上の棒グラフには、以下のように、やはりNパターンは出現しません。
(表6) |
---|
上表が示す、2ndングルからほぼ右肩上がりのCDの累計売上枚数は、乃木坂握手会人気のコツコツとした上昇とパラレルです。
20thから22ndで累計売上がピークに達した後、23rdから25thまで売上が下落傾向に入ったのは、1期の人気メンバーが多数、グループを「卒業」したことが大きく、また26th以降の急激な落ち込みは、コロナ禍で握手会が開催できず、オンラインのミート&グリートに切り替わった時期と重なっている。
CDセールスを調べるオリコン週間シングルランキングに、Nパターンが現れなくても、全然不思議ではない。
しかし面白いことに、この同じランキングで、各シングルが200位圏内に何週入ったかに着目してグラフを作ると、なんと15th以降にNパターンが出てくるんですね。
(表7) |
---|
つまり、CDの累計売上枚数は握手会人気に左右されるが、200位圏内ランクイン週数は楽曲人気を反映している可能性が高い。
そうであれば、上表から、14th以前のシングル表題曲の楽曲人気を探ることができる。
Nパターンは15th以降の楽曲人気の変遷で、15thから16thへの上昇が最初の動きですが、(表7)を見ると、この上昇は14th「ハルジオンが咲く頃」から始まっていることが分かる。
そして、14thの時期に起こった最大の関連イベントは、欅坂46デビュー曲「サイレントジョリティー」の大ヒット。
欅坂の楽曲指標は、同時期の乃木坂を常に上回っていて、欅坂の音楽的成功が乃木坂の楽曲人気を牽引した可能性が非常に高いですが、(表7)は欅1stと同じ2016年春にリリースされた乃木坂6thから、Nパターンの初期上昇が始まったことを示しており、その仮説を裏付けている。
14thより前の乃木坂の音楽的人気は、配信や動画の指標が今ほど明確ではなく、記録もあまり残っておらず、当時の実感に頼らざるを得ない部分が多いのだけど、(表7)が楽曲人気を示すなら、4th「制服のマネキン」でブレイクし、5th「君の名は希望」が初期の最大ヒットだったことになる。
乃木坂が紅白のステージに初めて立ったとき、歌った曲が「君の名は希望」というのは、まさに正しい選択であり、「制服のマネキン」が突破口になったことと併せると、生田絵梨花、生駒里奈、星野みなみのTOP3がグループを音楽的にブレイクさせる原動力になったのは間違いない。
しかし、4thと5thの後、乃木坂の楽曲人気は、7thから13thまでの間、出口の見えない地下の迷路を彷徨うような、低調な状態が続く。
重い状況に光が見えたのは、「サイレントマジョリティー」を引っ提げて欅坂が登場した頃に出された14th「ハルジオンが咲く頃」で、ここから15th、16thとさらに上昇気流に乗り、17thの「インフルエンサー」でピークを迎えたと考えられる。
オリコン週間シングルランキングの200位圏内入り週数が、15th以降に明確なNパターンを示し、握手会人気ではなく、楽曲人気を反映するのは、100万枚を売り上げて1位となっても、100枚で180位であっても、共に同じ1回と数えることが理由です。
大きな握手会人気によって、大きな売上枚数を稼ぎ、ランキングの上位に入るようなシングルの場合、握手会の期間が終わったあと、少ない枚数、低い順位であっても、特典なしでCDがどれだけ売れ続け、200位圏内にどれだけ入り続けるかが、楽曲人気につながってくる。
何枚売ろうが、何位だろうが、200位圏内に入れば1回というのは、一見乱暴に見えるやり方ですが、握手会人気による影響を排除し、楽曲人気の部分を強調し、抽出する効果がある。
5th「君の名は希望」は78週、200位圏内にランクインしていますが、これは18ヶ月、1年半に渡って圏内入りしたことを意味します。
握手会の期間は長くても半年くらいなので、特典なしでの低売上、低順位でのランクインが1年以上もあったことになる。
一方、9th「夏のFree&Easy」は200位圏内が16週で、握手会の期間が終わった途端、圏内に入らなくなり、ランクイン週数を伸ばせなかった。
5thが78週、9thは16週と、2曲で圏内入り週数が大きく違うのは、楽曲人気の差が背景にあるからで、だからこそ、15th以降の圏内入り週数がNパターンを示すのだと思います。
CD売上の順位成績を評価するのに、Ranking指数を計算する方法もありますが、その場合はより高い順位に対して、より高いアドバンテージが付くため、高売上、高順位を叩き出す握手会人気の影響がより強くなり、楽曲人気が少しぼやけていく懸念がある。
以下のグラフは、オリコン週間ランキングにおける各シングルのRanking指数を示したものですが、15th以降のNパターンは、やはり若干、不明瞭になっています。
(表8) |
---|
また、ビルボードHot100「CDセールス(P)」のRanking指数を示した、(表5)前半のグラフには、上述したようにNパターンが見当たらず、順位帯別週数グラフを描いても、同じ結果になります。
ビルボードP項は、オリコン週間シングルと同じく、CD売上枚数によるランキングですが、前者が100位まで数えるのに対し、後者は200位まで。
100位圏内に入るには、高売上で高順位を出す必要があり、200位までのランキングより、握手会人気により強く影響され、低売上、低順位に反映される楽曲人気は、より汲み上げづらくなる。
そのため、200位まで数えるオリコン週間ランキングの圏内入り週数が、楽曲人気をより適切に捉えることが出来て、そのグラフにNパターンが出現するのだと思います。
特典商法によるセールスを算入したことで、ヒット指標とは無縁なチャートとの印象が根付いてしまったCD売上ランキングも、低売上、低順位でも数字が伸びる、200位圏内入り週数を使えば、動画や配信と同じような、楽曲指標としての側面が見えてくる。
まあオリコンが握手会やミート&グリートによるCD売上を数えず、特典がない場合の売上だけで200位ランキングを作っていれば、累計枚数がそのまま楽曲人気を反映して、圏内週数のような別角度からの分析は必要なかったと思います。
大規模握手会で稼いだ大量のCDセールスをランキングに算入し、その累計枚数にこだわり続けた結果、オリコン週間シングルは、ヒット指標としての価値を失ってしまった。
さらに「制服のマネキン」や「君の名は希望」といったヒット性の高い曲も、ランキングにそれが反映されず、正当な評価を十分受けられなかった恐れがある。
当時、5thはCD売上があまり伸びなかったと言われ、それがセンター交代と生生星TOP3の解消につながり、乃木坂が極端な握手会主義にのめり込んでいく引き金になった節もあり、かなり前のこととは言え、今でも残念な気持ちになります。
アレチボルトのツイッター