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映画【善き人のためのソナタ】

2007-12-13 23:41:33 | 映画
 
 
善き人のためのソナタ
2006
Florian Henckel von Donnersmarck フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク


ジャーマンテクノの雄、HGW XX/7の半生を綴った作品。

ではなく、1984年の東ドイツで国家保安省で劇作家を監視する男(ヴィースラー)を描いた作品。
名作です。


冷酷なる国家保安省の調査員として劇作家の生活を監視するも、後にその監視の動機を知ったことと、その劇作家と恋人である女優の生活の全てを覗くことによりって変わっていく。
しかしその変化はただの正義感によるものではなく、自分が望んだことを小さくとも自分が操れる世界において行おうとするプチ神様の様な心情から発生したもの。
結果、その行いは正義へと繋がっていく。
直接的な正義感で反体制へと移行するのではなく、不純な動機で行動が変化し結果として正義になるという描き方が素晴らしい。
ヴィースラーの不安定な心情が全く鑑賞者の手に取れずに変化していきます。自分の子成っていることが正義であると気付いているのかいないのか。
しかし、この感じ、分からないでもない。
リアリティとはこういうことか、と。

人間ドラマと言って、結局は大げさなカタルシスにオチてしまうと「結局今までのことも妄想(フィクション)にすぎないじゃないか」と映画に対してあるまじき腹を立てることが多々あるのですが、本作は全くと言って良いほどそういうところにはオチていかない。
ベルリンの壁崩壊前後の大げさな様でもの凄く個人的なお話です。
ラストシーンは非常に分かりやすい様でいて、言葉面とは背反した感慨を含むこと間違いなし。

1989年のベルリンの壁崩壊から17年。
こういう作品でこそ歴史ではなく、人が生きていたその時間を理解することができるのだと思います。

お勧めです。
是非。