三文小説（１５）

　何思う事無く自然に聞こえて来た人の話を聞いていて、思いがけず酷い目に遭いそうだと思うと、世の中うかうかしてはいられ無い、怖い物なんだなぁと感じるのでした。

　そして顔を曇らせた彼女に、

「あいつ、まだこっちを見てる。」

そんな松山と呼ばれた男性の声が聞こえて来ました。彼は少しこちらに顔を向けているように野原さんには見えました。

　何だ、何だ、如何したという数人の仲間の男性の声と、ぼそぼそと低い声で何か話し合う彼等の様子に、野原さんは彼等から言いがかりをつけられるのでは、と不安に思いながら心の準備をするのでした。