Jun日記(さと さとみの世界)

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土筆(83)

2018-05-28 10:07:19 | 日記

 未だ幼くて世間経験のそうは無い純真な従妹を、年上の自分が小手先でいい様に揶揄ったのだという後ろめたさも加わり、彼はこれ以上従妹を遣り込めてやろうという様な我の強い気持ちがすっかり失せてしまいました。それだけで無く、自分の心の闇に触れ、間近に迫っている夜の闇を感じると、すっかり怖気付いてしまいました。

 「今日の所は見逃してやる。」

そんな言葉だけを一言、彼は強がって言うと妹の所へ振り返り、大声で「もう暗くなるからな、暗くなる前に帰るぞ。」そう言うと、ぱっと身を翻しだーっとばかりに一目散、施設の出口目指して駆け出しました。もう彼の眼中にも脳裏にも後ろにいる従妹の事は有りませんでした。それっ切りでそっちのけという態度でした。

 彼は行き掛けに広場にいた2人の男の子達にも声を掛けました。

「もう暗くなるからな、お前達も早く帰れよ。」

そう年上らしく声を掛けると、「それ、それ走れ!」とばかりに音頭を取って、いざ進め!とわーっと皆で広場から駆け出して行ってしまいました。

 さて、壁の前に1人取り残された形の私です。ポカンとして皆の去っていく様子を眺めていました。そして『私の質問は?』と、首を傾げました。こんな事は初めてでした。確かに自分の質問の返事がもらえなかった事は以前にもありました。でも、その時には自分が質問をした相手、大抵は父でしたが、「返事は後で、」等言うと、必ず後できちんと答えてくれるのでした。それが、今回は質問をした相手の従兄が、後で返事をする等言わないで行ってしまったのです。しかも、「見逃してやるだなんて、返事が無くて見逃すのはこっちの方じゃ無いの。」私は不愉快に思いました。全くこんな妙な事初めてです。


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