Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(16)

2018-03-13 09:43:07 | 日記

 湿った土の香りは私に汚さと、汚れと、怪我の痛みを連想させたのでしょう。この香りを纏う湿った場所の土筆達は同じ土筆でも日向の土筆達とは違い、たとえ容姿が良くても私には何だか好きになれない土筆達に思えるのでした。心の中に蟠りが出来ると、止まれ!という赤色信号が点ったようでした。遊びを楽しむ感情にストップ!が掛かったようです。ここの土筆は親しめ無い、好ましく無い、嫌い!というように次々と厭う感情が湧いて来るのでした。

 その後の私は目の前の土筆を眺めているだけでした。土筆を摘む手が伸びないまま、私の顔にも困惑したような表情、目の前の土筆を厭う感情がはっきりと表れて来ました。そして、皆が楽しそうに土筆を摘む姿に合わせながら、私も時折微笑んでみたりするのですが、皆がしゃがんだままの輪の中からじりじりと後退りすると、光溢れる明るい日向に向かって脱出を試み始めました。

 『明日はここに来ないでおこう。』

どうも皆明日もここで遊ぶような雰囲気だから、具合が悪いか何か言って明日は此処へ遊びには来ないでおこう。と考えていました。私は1人皆に背を向けて明るい日向を向いていました。

 「そんな事をしちゃだめだよ。」

そう指導者の言う声が聞こえ、皆から外れるような事はしてはいけない、皆の輪の中にいないとよくない事が起こるよ、嫌でも皆と一緒にいるように、などの注意が言い渡されました。私が思わず顔を上げて恐る恐る声の主を見ると、指導者は私とは別の方角を向いているのでした。その視線の先には遠く離れた場所に幼い子等が2人程いて、その子達もそれなりに思う所がありこの場所から退避していたのでした。そして、その内もう遊ばない等言い残すと、遂には逃避行してそのまま消えて行ってしまったのでした。


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