Jun日記(さと さとみの世界)

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ダリアの花、186

2017-05-24 20:13:04 | 日記

 蛍さんは直ぐにホカホカと心地よい暖かさに包まれました。『春が来たみたい。』そんな事を考えていました。

しかし、その心地好い暖かさは過ぎて、段々と暑くなってきました。頃は夏の昼近くです。

静かに寝台に横たわっていると、床に接している部分が熱くなってきて、蛍さんは何度か寝返りを打つのでした。

それももう限界になるくらい、暑い上に退屈です。お腹もすいて、喉も乾いてきました。

病室には誰もやってくる気配がありません。病院内もしんとしています。

蛍さんは枕元をきょろきょろ眺めてみましたが、食べられそうな物はもちろん、飲み水も置かれてはいないのでした。

 そ―っと頭を上げて、片肘をついて、身を起こしてみます。

特に何か起こりそうな気配はありません。『大丈夫そうだ。』そう思った蛍さんは、上半身を起こして寝台に座ってみました。

寝台の縁に座って足を垂らしてみます。すーっと足元が涼しくなり、寝ているよりはましな状態になりました。

部屋のの中を眺めてみると、寝台の頭の方向に窓がありました。窓は少し開いて、そこから風が入って来るようです。

窓を全部開けたらもっと涼しい風が入って来ないかなと、彼女は窓辺に歩いて行き窓に手を掛けました。

すると、窓の下の光景が彼女の目に入りました。

 窓下には外掃除をしている用務の人が1人見えました。雑草の処理をしているようです。

すると、その用務の人に近付いていく叔父の後ろ姿が目に入って来ました。

何やら2人で話しています。そして、叔父は振り返って笑顔で戻って行きました。

蛍さんは窓を全開にして、窓辺に手をかけて風が入ってくるのを確かめていました。心持涼しくなった気がします。

『そのうち風が強くなったら、部屋ももっと涼しくなるでしょう。』そうおしゃまに思った彼女は満足して寝台に戻ってきました。

素足の足裏に触れる床板の涼感に、彼女は床で寝転んでいたいと思いましたが、床の埃っぽさにそれは出来ないのです。

渋々また元の暑苦しい寝台に乗るのでした。寝台から足だけ放り出して、そうやって空間に涼を求めて、蛍さんは誰か病室に入って来るのを持っていました。

 少しして、廊下の方で父の声がして、聞き覚えの無いおばさん風の女性の声がしたと思ったら、戸口に父が昼食を載せたお盆を持って入って来ました。

「やぁ、起きてるのかい、お腹が空いたんだって。」

そう言って何だか寂しそうに笑うと食事の盆を蛍さんの脇に置きました。そして父は箸で食事を蛍さんの口に運んでくれるのでした。

蛍さんは自分で食べなくていいので何だか妙な気がしましたが、父の沈んだ様子に黙って父のするに任せていました。


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