さて、施設の門の傍で、私はまた1人で従姉妹のお姉さんを待つことになり、じっとしている事が出来なくなって、そわそわと行ったり来たりしてみました。今回は広場で何が起こっているのかがとても気掛かりだったのです。
『…ちゃん、自分一人で文句を言いに行ったんだろうか。』『…ちゃん、私を巻き添えにするまいと、1人で喧嘩をしに行ったんじゃないだろうか?』と、そんな事ばかり考えていました。上に男兄弟がいるだけに、従姉妹も結構威勢がよく、勝気な性格だということを私は把握していました。
「私も行こうかな。」
思い余ってそう呟くと、私は従姉妹が向こうで私の加勢を待っているような気がして居た堪れなくなりました。私には彼女が私の事を気にして、無理して虚勢を張っているのでは無いかとばかり思えて来るのでした。『ここで待たずに向こうへ行こうかな。もしかすると…ちゃんも向こうで私の事を待っているんじゃないかな。いやきっと待っているんだ。』そう独りよがりに判断すると、私は広場へ向かって1歩2歩と歩みだし、そして遂には走り出しました。
…ちゃん、そう声に出して呼び掛けてみます。広場はもうすぐに目の前でした。建物の角まで来ると、視界に広く広場の敷地が見えて来ました。従姉妹と、近所の男の子、年下の男の子、そして、広場のかなり遠い場所にも3人程の男の子がいました。
不思議な事に、後姿の従姉妹は、私には何だか笑っているように見えました。『喧嘩しているんじゃ無いのかな?』そう私が意外に感じたのと時を同じくして、
「来たぞ!」
「来ると思った。」「俺あいつ苦手なんだ。」「行こう、行こう。」そんな声が広場の向こうの男の子達から聞こえて来ました。一瞬私は自分の事を言われているのだろうと思いました。今広場に走り込んで来たのが私だったからでした。