「ひょっとこってお面の?」
あんな変な顔に私が似ているなんて…、『酷いわ!』。
当然彼女は嫌な感じがして内心穏やかでは無くなりました。彼女が生まれてから知った「おかめ」「ひょっとこ」といえば不細工な男女の代名詞でした。彼女は年上の従姉妹からその言葉を受けて、胸中にむらむらと怒りが湧いて来ました。彼女は目の前の年上の従妹を睨むと思わず自分の両拳を握り締めました。長塀の扉の前で、2人の従妹同士は険悪な雰囲気で対峙する事になりました。
と、つっと年上の従姉妹の方は身を翻して相手から離れました。彼女にすると、喧嘩相手から繰り出された攻撃をかわしたつもりの動作でした。しかし彼女の年下の従姉妹は、怒って直ぐに手を出すような機敏な子ではありませんでした。
「…ちゃん、本当に私の事、ひょっとこに見えるって言うの?」
思う所もあり、相手の言った事を確認してみる年下の従姉妹でした。
「お前はせっかちでいけない。物事はちゃんと確認してから行動するんだよ。」
この春始めに、今年から地域の子供達との交流に飛び出すという、どちらかと言うと短気で喧嘩っ早い我が子に向かい、父が諭す様に言った言葉でした。
「喚いたり手を出す前に、もう一度物事を確認して、それからどうするか考えて、その後考えたように行動しなさい。」
そう順序だった内容の事を彼女は父から教えられていました。