シャンテ サラのたわ言・戯れ言・ウンチクつれづれ記

"独断と偏見" で世相・経済からコミックまで 読んで楽しい 面白い内容を目指します。 

バイオレンスとエロス満載の劇画コミック

2015年09月27日 | コミック界を語る
絵は、中左上が花田竜二、その下と中右がその妻 君江、右がヒロイン 日野絵霧。 中の潜水艦の絵は2度使い回しされている (『クライング・フリーマン』から)。
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スマホ iPhone に iBooks という常駐アプリがあります。 電子書籍を入手閲覧できるアプリ・ソフトで、有料と無料書籍から選べます。 私は当然 無料ものだけをダウンロードします。 その中に『クライング・フリーマン』(泣く自由人) なるコミック2巻がありました。

昔 連載中に何度かコミック週刊誌で読んだのですが、一貫して読むことはなかったので、スジはよく記憶しておらず、”殺し屋もの” との印象でした。 今回2巻の初期編を読んで、大体の荒筋が分かりました。 ただし あまり説明調ではなく、どちらかというと 劇画調タッチの絵を見て楽しむコミックで、話しは当然 荒唐無稽です (早くいうと “ありえねーッ”)。

20歳前後に見える学生風優男 (やさおとこ) ヒーローが、スーパーマンばりの活躍でバッタバッタと悪人を倒しまくるのは剣劇映画か西部劇風であり、傷ひとつ負わないヒーローは 007 調でもあり、ヒロインを含め登場する女性は美女揃いで しかも裸同然の場面が多い (冒頭中下と右) というのも、非現実的でいかにも男性読者を喜ばせるコミックそのものでした __ もっとも そうでなくては男性週刊誌では受けないのでしょう。
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ウィキペディアから __『クライング・フリーマン』は原作:小池一夫、作画:池上遼一による日本の漫画 (劇画)。 隔週誌「ビッグコミックスピリッツ」(小学館) にて1986年4月14日号から1988年5月5日号まで連載された。 巨大マフィアに属する暗殺者の戦いを描く (※追加1へ)。
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人気コミックとなり、アニメ映画 実写映画が作成されたという。 YouTube に実写映画全編が投稿されているのですが、私は冒頭10分で視聴を止めてしまいました。 理由は、”登場人物のキャスティングが悪い”、これに尽きます。 映画がヒットしなかったのも当然です。

主人公は学生風優男どころか 中国系か日系の暴力団員風、悪役も個性が薄く 存在感がありません __ ヒロインは美人顔なのですが。 面白そうな映画というのは、冒頭から主人公も脇役も個性があり 存在感があって観客を魅き付けるものです。 この映画にはそれが感じられません。
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コミックでは 風のごとく走り回りターゲットに接近、風のごとく走り去り、任務を遂行します。 これは映画的です。 ストーリーは、主人公に危機はあっても 想定外の突発事象は発生しません。

しかし 現実というものは、大概 殆ど “想定外の突発事象の連続” です。 予期せぬ外乱要因が重なり、初期想定通りにコトが運ぶということの方が珍しいのではないでしょうか?

もっとも それだからこそ、痛快アクションものコミックや映画が雲霞 (うんか) のごとく作られ、大衆に受け入れられるのでしょう。 また 登場する女性は美女ばかりで、しかも肌を見せることにまったく逡巡しませんから、読者・観客も安心して物語の進行を楽しめるというわけです。
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このヒーローを擁する香港地下組織が “潜水艦” を保有しており、舞台の伊豆沖に浮上し (冒頭中の潜水艦の絵)、ヒーローを回収するいう設定は荒唐無稽の極致で、地下組織がこのような大型兵器を持つ設定は娯楽映画 007 などの影響でしょう。 私はこの場面で笑っちゃいました。

SF コミックの『エイトマン~魔人コズマ』にも地下組織の潜水艦が登場しますが、あれは元々架空のロボットが主人公の世界だから違和感がないのです。『クライング・フリーマン』は写実的に描かれる生身の人間が主人公の劇画だから、架空の度が過ぎて違和感があるのです。

高度な兵器を維持運用するには、専門知識を持つ軍人が多数必要であり、故障などに備えて多くの補修部品も必要ですし、大掛かりなドックも欠かせませんから、地下組織などの規模では維持不能となるのはすぐに想像できます。 金持ちのプライベート・ジェットとは桁が違うのです。

地下組織が保有できる大型兵器は、せいぜい機関銃や長剣くらいのもので、大砲やロケット砲など かさばるものはまず無理です。 かさばったら、当局から隠し通すことが出来ず、露見してしまいますから、当局に発見され押収の憂き目をみるのは必至です。

そもそも 地下組織というものは、現実のまともな生業組織からピンハネして生き血を吸うヒルのようなものですから、当局からは目立たないようコソコソと地下や裏通りで生きるしかない寄生生物的存在なのです。

そんな日陰の組織が目立つ兵器や潜水艦を保有することなど、想像はできても現実感は全くないに等しいのです。 潜水艦を保有するほど大きな組織となると、警察よりも大きな部隊が必要になり、それは国家に等しいものとなるでしょう (ですから “ありえねーッ” なんです)。
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池上遼一が描く劇画調タッチの絵は緻密で、ペン画でこれだけ写実的な絵がよく描けるものだと感心します。 特に 顔の描写、体の描写が優れています。 また 無表情な中国老人や凶暴な顔立ちのヤクザ (冒頭中左上の花田竜二) が出てきますが、その描写力にも驚かされますね。

ただ ひとこまヒトコマを詳細に描くとなると、その手間ひまも膨大だろうと想像され、細かく描ききれない小さな顔の細部は端折り気味 (はしょりぎみ) になり、ボーとしたタッチが多くなってしまいます。 それと お約束事なのでしょうが、太った女性は一切登場しません。 ヒロインから脇役に至るまで “妙齢・容姿端麗の女性” ばかりです。

また スチル写真のような、無言で登場人物の感情を表現した顔の絵は独特で、引き込まれて見入ってしまいますね (冒頭中右の君江)。 ただ 説明調的なコミックではないので、その場面に一切説明文はなく、読者が想像するにまかせたものとなっています。 他のコミックだったら、「その時 彼 (女) の心には … ともいえる感情が去来していた」などの文章が入るのだろうと推理します。

特徴はというと 対立する悪の組織の構成員を次々になぎ倒すバイオレンスと血飛沫 (ちしぶき)、生々しいベッドシーンの濃厚なエロスが出てくることで、読み進んでも掘り下げたストーリー展開とはならないだろうと予想でき、3巻目以降は読む気が失せてしまいました。
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しかし iBooks のダウンロードリストにはしっかりと3巻目のアイコンがあり、ダウンロードしてないのに変だなぁと思い、クリックすると __ ”これは有料です。 ダウンロードしますか?” との文章が浮かんできました。 商魂逞しいですね、電子書籍屋さんも。

以上


※追加1_ 本作の主人公はマッチョな男ではなく、人を殺す度に涙を流すナイーブな殺し屋、クライングフリーマン。 百八竜の長となったクライングフリーマンが組織と妻を守るため襲い来る敵を撃退していく、エロス満載のアクション活劇である。

作画の池上は原作の小池から「涙を流す陶芸家の殺し屋」というコンセプトを聞き、マッチョな男より「いい男」を描きたいと思ったという。 またこの当時、漫画業界全体で性的な表現が拡大していった時期であり、本作でも性的描写・性行為が多く見られ、公私無関係にすぐに全裸になり、平気でストリーキングをするという奇行的な行動が現れている。 大西祥平『小池一夫伝説』によれば、本作は (日本の) 漫画で堂々と陰毛・ヘアを描写した嚆矢たる作品であるという。

本作は本来、百八竜に拘束され殺人機械にされてしまった哀れな男の物語であったはずであるが、いつしかストーリーは主人公がただ組織と妻を守るため、襲いかかる強敵を倒していく勧善懲悪ヒーローの物語になってしまう。

これは、適当に名付けたはずの百八竜という青幇 (ちんぱん __ 元々は中国に広がる大運河の水運業ギルドだったが、時代が変わるに連れ 一部が辛亥革前の中国の暗黒面を代表する秘密結社になった) が香港に実在していたことによる。

物語が中盤の頃、小池は百八竜にホテルの一室に呼び出された。「なかなかおもしろい」と評され、高級時計をプレゼントされるなど、その対談は友好的雰囲気のうちに終わったが、さすがにそれでは今後、百八竜を悪の組織として描くわけにはいかず、中盤以降の予定がすっかり狂ってしまったと小池は述懐している。

結果、以後 百八竜は「悪い組織を退治する謎の組織」(大西祥平『小池一夫伝説』p.163 より引用) となったが、この路線変更が本作のさらなるヒットに結びついたとも考えられる。

漫画の他にも、東映アニメーションによってアニメ化され、1988年から1994年にかけて6本の OVA が発売された。 DVD 版もリリースされた。 また香港で2度 実写映画化されたほか (1990年の『紅場飛龍』、同じく1990年の『浪漫殺手自由人』)、1995年には日米合作によりクリストフ・ガンズ監督、マーク・ダカスコス主演で映画化されている。

以上

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