【除染技術問題】ガイドライン効果不十分 道路線量下がらず 実証実験の連携に課題
環境省がまとめた除染ガイドラインの先行実施地域で「十分な効果が得られない」との指摘が出ている。独自に新たな除染技術の導入を検討している自治体もあるが、ガイドライン以外の手法では事業費が国の補助対象から外れることがあり、早くも内容の改訂を求める声が上がっている。ただ、各地で除染の実証実験が続いている中で、専門家の意見や技術の早急な集約は難しく環境省は新たな悩みに直面している。
■効き目に疑問
ガイドラインは、建物や道路など主要箇所の除染の手法・手順をまとめた国の「バイブル」。放射性物質汚染対処特措法に基づき汚染状況重点調査地域に指定された県内40市町村の除染の指針となる。しかし、先行実施している福島市の担当者は「ガイドラインに従い作業しても、放射線量が下がらないケースが続出している」と顔をしかめる。
市内で比較的線量が高く毎時1~2マイクロシーベルト程度が計測されている大波地区の市道では総延長40キロのうち、8.6キロで除染を終えた。ガイドラインに合わせ洗剤を使って高圧洗浄したが効き目がなく、複数の地点で目標とする「毎時1マイクロシーベルト以下」まで線量が下がらなかった。放射性物質がアスファルトの舗装面に、こびりついていることが要因とみられる。「事故後の早い時期なら効果はあったかもしれないが、半年以上過ぎては洗浄だけでは除染は難しい」という。
市は舗装の表面を1ミリ程度削る「ショットブラスト」という手法を用いることで80%近く線量を低減できるとの情報を得て、導入を検討している。ただ、課題は作業経費だ。幅5メートルの道路1キロ当たり約2000万円掛かり、大波地区の道路だけで8億円程度が必要となる。県が示した基準単価の14倍に当たる。
ショットブラストの使用は、ガイドラインに明記されておらず、環境省との個別協議で認定されなければ実施費用は全額、市町村負担となる。
■費用対効果
環境省は県内での除染による放射線量の低減効果を踏まえガイドラインを随時、見直す方針だが、「第二版」公表までには数カ月かかる見通しだ。
複数の専門家の意見を踏まえて内容を見直す考えで、方向性の異なる知見をどう集約するかが課題になるという。さらに、ショットブラストなど新たな手法をガイドラインに盛り込めば、市町村に対する助成費用が膨らむことは確実。環境省除染チームの担当者は「血税を投入する以上、費用対効果を十分に見極めなければならない」と慎重に言葉を選ぶ。
県生活環境部の担当者は「内容の濃い改訂版を早急に示さないと、除染は遅れる一方だ」といら立ちを隠せない。
■三者三様
特定避難勧奨地点を抱える伊達市内では、県の除染技術実証事業に採択された9社が汚染土壌の減容化実験などを繰り広げている。
一方、国は同市霊山町の約3万平方メートルで、除染の実証試験を進めている。宅地や山林、畑、集会所などそれぞれの場所に合った除染手法を確立する狙いだ。さらに、市は独自に宅地の除染を進め、農地の除染実証実験も本格化させている。
ところが、国、市、事業者が三者三様で除染を進めるだけで、効果的な手法を探るために互いに情報を共有する動きは見られない。同市の担当者は「ばらばらに実験、作業しては非効率。連携しなくては時間と資金の無駄になる」と、情報一元化の仕組みづくりを求める。
県と国は20日、除染情報プラザを開設した。2月中には福島市に職員が常駐する拠点を設ける。県除染対策課は「国、県、市町村、事業者の情報共有がプラザの大きな役割になる」と期待しているが、その効果は未知数だ。
【背景】
放射性物質汚染対処特措法の全面施行に合わせて、環境省は放射線量が年間1~20ミリシーベルトの地域での除染方法などを盛り込んだガイドラインをまとめた。汚染状況の調査測定、建物・道路や土壌などの除染方法、除去土壌の収集・運搬などについて説明している。除染の方法として落ち葉や泥の重点的な除去、高圧洗浄やブラシ掛けなどを提示している。環境省は、ガイドラインで示した方法で除染した場合、実施費用の全額を補助する方針を打ち出した。一方で警戒、計画的避難区域の11市町村は国が直接除染を実施する。3月末に始まる見通しで、環境省は除染の優先順位や放射線の低減目標を盛り込んだ工程表を作成する。
(福島民報