原発問題

原発事故によるさまざまな問題、ニュース

【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※30回目の紹介

2014-08-07 21:00:00 | 【原発ホワイトアウト】

*『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽  から何度かに分けて紹介します。30回目の紹介  

 現役キャリア官僚のリアル告発ノベル!

 「政財官の融合体・・・ 日本の裏支配者の正体を教えよう」

-----------------------

カスタマーレビュー)から

救いがあるとすれば著者・若杉冽氏の次の言葉だ。

  「まだまだ驚くべき事実はたくさんあるのです。

  こうした情報が国民に届けば、きっと世論のうねりが起きる。

  私が役所に残り続け、素性を明かさないのは、情報をとり続けるためです。

  さらに第二、第三の『若杉冽』を世に送り出すためにも」(毎日新聞 10月22日)

読み終わって私は、このままでは本書の予言どおり原発事故は再び起こる可能性が高い、と思った。

そして、表紙とびらに引用されたカール・マルクスの次の言葉が本書の内容を言い尽くしていると気づく。

  「歴史は繰りかえす、一度目は悲劇として、しかし二度目は喜劇として」。

この国の統治のあり方を根本的に変えなければ「二度目は喜劇」を防くことができない、と私は考える。

---------------------------

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり

---------------------------

【原発ホワイトアウト】第14章  エネルギー基本計画の罠  ※30回目の紹介

-『原発ホワイトアウト』著者:若杉冽 「第14章  エネルギー基本計画の罠」 を紹介

【登場人物】
 小島 厳 日本電力連盟常務理事 関東電力総務部長を経て日本電力連盟に出向
 日村 直史 経済産業省資源エネルギー庁次長
 赤沢 浩一 保守党資源・エネルギー戦略調査会長
 山野 一郎 保守党一匹狼議員

前回の話:【原発ホワイトアウト】第14章エネルギー基本計画の罠※29回目の紹介 

 場が静まり返った。反論しがたい正論だ。

 山野は有名な政治家一族の三世議員である。政治家の世襲はマスコミからは批判されることが多いが、選挙やカネに気を遣いすぎることなく勉強し、正論を主張できるという意味では、地盤と看板を引き継ぐ世襲は、むしろ長所にもなる。

 少し間を置いて、赤沢がおもむろに立ち上がった。場内の視線が赤沢に集中した。

 「山野先生のおっしゃることは、まったくもって正論であります」

 赤沢は、満座の議員たちを見回した。

 「・・・私どもも皆、放射性廃棄物を出す原子力発電所が、今のままでいいとは思っていません」

 場内がざわつき始めた。

 「再生エネルギーの普及に最大限政策資源を投入していくということは、先ほどの資源エネルギー庁の説明にもありました。その点は、ここにいる全員のご同意がいただけるのであろうかと存じます。

 他方、我々は、長期的な視点でエネルギー問題を考えていく必要があるわけです。再生可能エネルギーの普及だけに賭けるという一本足で本当にいいのか?それは博打ではないか?原子力だって、技術開発が進めば、放射性廃棄物を無害化する核種転換や放射性廃棄物の半減期を縮小する技術も進むことでありましょう」

 今度は山野が立ち上がった。

 「そんな技術が進む確証は、どこにあるんでしょうか?現代の錬金術のような話ではないでしょうかっ」

 赤沢は慌てない。

 「・・・いや、山野先生、落ち着いて。私の話が終わるまで聞いてください。山野先生の議論を、私は正論だと認めているんですよ」

 山野が椅子に腰を下ろした。赤沢が続ける。

 「・・・ただ、放射性廃棄物と温室効果ガスとでは、決定的に違う点が1つある。何かわかりますか、山野先生」

 山野は押し黙った。赤沢は語気を強める。

 「それはっ、国際的枠組みであります!地球温暖化は京都議定書以降、温室効果ガスを削減しようという国際的な約束ができ、その次の枠組みも各国が誠意をもってお交渉中であります。いわば世界共通の課題であります。

 それに対し、原子力発電はどうか?原子力発電は、欧州の一部の国が脱原発を決めているとはいえ、アジアをはじめとした途上国では、むしろドンドン推進していこうという国が多いんですね。この場にいらっしゃる先生方には釈迦に説法ですが、国際的には原発推進が全体的な気運であります。原子力ルネッサンスと言われる時代でもあります。

 そういうなかで、我が国だけが、将来世代の負担を考えよ、などといったキレイごとを述べて脱原発に舵を切ったのでは、わが国の産業は国際競争にまけてしまう。違いますか?」

 「そうだ!」

 「その通りっ」

 合いの手が入る。

 「・・・ですから、仮に将来的に脱原発の国際合意ができるような事態が発生したら、山野先生のおっしゃるような省エネと再生可能エネルギーの二者択一のエネルギー基本計画にすればいい。しかし、そういう事態にならないのに、この世界的な原子力ルネッサンスの時代に、日本だけが脱原発と叫んで、素っ裸になってフリチンで外を走るようなエネルギー基本計画は、断じて認めるわけにはいかないのでありますっ!」

 赤沢はこう、気勢を揚げた。

 場内が大きな拍手に包まれた。
 
 原子力ルネッサンス、というのは、将来、世界的に原子力発電が拡大していく、というバーセプションを広めるための原子力ムラによるキャンペーンの標語である。チェルノブイリ原発事故以降、5年に一度くらい、手を替え品を替え、原子力ムラは、全世界でキャンペーンを張ってきた。

 「国内ではなかなか原発が建たないけれども、世界では原発がドンドン建ちますから、原子力産業の未来は明るいんです」という業界の自己暗示だった。

 敵を欺くにはまず味方を欺け、ということだ。

 原子力業界を継続的にウォッチしていれば、業界が、常に明るい見通しを、素人相手に示すことが習い性であることに気がつく。そうしなければ、人材も、研究資金も、投資資金も回ってこない。原子力ムラ以外の素人の政治家や官僚、そして経験と勉強の浅い記者たちは、素直にこうしたキャンペーンの標語をそのまま飲み込んでしまう。

 しかし、現実の数字を見れば、世界の原発の設備容量は、スリーマイル島原発の事故前に想定されていた10億キロワットには遠く及ばす、1990年代以降は4億キロワットにも満たずに、ほぼ横ばいの状態が続いている。アジアでいくつか原発の立地が進んでいるが、欧州では廃炉が進んでいるからだ。

 

※「第14章  エネルギー基本計画の罠」は、8/3~ 紹介中です。

・・・既得権益側が国会議員を使って行政に圧力をかけ・・国民に見えないところで、こうしたことが当たり前に行われている・・・


★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】終章 爆弾低気圧 ※下の方に1~16回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第4章 落選議員回り ※下の方に17~21回までのリンク一覧あり

★過去紹介した記事>>【原発ホワイトアウト】第13章日本電力連盟広報部 ※下の方に22~25回までのリンク一覧あり


最新の画像もっと見る