*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。30回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第6章 これ以上過ちを繰り返さないために」より
4 エネルギー消費の歴史 P255~
人間が厖大にエネルギーを使い始めたのは、200年前だった
宇宙というものは広大で、その果てがどこにあるのかわかっていません。光の速度で百億年走っても果てまではたどり着けない。そんな広大無辺な空間の中に、青く、美しく浮かび上がるようにしてあるのが、私たちの住む地球です。
宇宙にはたくさんの星々がありますが、地球のように命の根づいた星がほかにあるでしょうか? 人類はそれを長年探し続けていますが、いまだに他の星から明確な生命の痕跡が見つかったことはありません。それほど、地球というのは貴重な星です。
この地球という星は、約46億年前にできたと言われています。そしてやがて原始的な命が生まれ、その命が進化して次々といろんな命を生み、私たちが原始人と呼ぶ人たちがこの地球上に姿を現します。約700万年前のことと考えられています。しかし彼らは絶滅し、今の私たち、現生人類の祖先が生まれたのは約20万年前のことでした。
彼らは食べるために道具を使って狩りをすることを覚えます。それは他の動物を殺すということであるのと同時に、人間同士でも殺し合えるということでもありました。これが約10万年前。さらに年月を経て約1万年前になると、農耕を覚えます。そのために集落をつくって定住していく。定住することを覚えた人類は、やがて他の集落を襲い、奪い取るようなことも始めたわけです。
人類はそうして現代まで脈々と生きてきたのですが、この間、いったいどれだけエネルギーを人間は使ってきたのか、というのを表したのが図24です。縦に伸びる帯は、それぞれの時代の人間が、一人あたりどれだけのエネルギーを使ったのかということを表しています。数百年前の原始人と呼ばれた人類は、ほとんどエネルギーを使っていません。
他の動物たちと同じように自然に溶け込むようにして生きていたからです。それが10万年前ぐらいになると、少しずつエネルギーを使うようになったいきます。それでもまだ大した量ではありません。人間にとってエネルギーが切っても切り離せないものとなっていくのは、集落をつくって定住し、農耕を始めたころからです。農業の高度化に伴い、エネルギーをどんどん必要としてくるようになったのです。
そして左下から右上に向かって伸びている曲線は、それぞれの年に人類が使ったエネルギーの総量を表しています。これを見ると、人類はある時期から急激にエネルギーを使うようになったことがわかります。そのある時期というのはいつか。それまで農業は主に家畜を使っており、裕福な人減は奴隷に労働をさせていました。それが、ジェームズ・ワットたちが蒸気機関というものを発明して一変します。
つまり、18世紀の後半から19世紀にかけて起こった産業革命です。水を沸騰させて蒸気の力で機械を動かす。この機械を動かせば、それだけ生産力が上がるわけですから、家畜や奴隷が不要になり、かわりにエネルギーをたくさん使うようになりました。これがわずか200年前のことなのです。(次回へ続く)
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、2016/1/21(木)22:00に投稿予定です。