*『原発ゼロ』著者 小出裕章 を複数回に分け紹介します。23回目の紹介
『原発ゼロ』著者小出裕章
原発を廃絶させるまで、私は闘いたい。
原発は、都会では引き受けることができない寛大な危険を抱えています。「原子力マフィア」はまさか大事故は起きないだろうと高を括り、人々に対して「原発 は決して大事故を起こさない」と嘘をつきました。それでも不安を払拭できない彼らは、原発を過疎地に押し付けたのです。私は破局的な事故が起きる前に原発 を廃絶させたいと活動してきましたが、福島第一原発事故が起きてしまいました。私の人生すべてが否定されてしまい、自分の非力を無念に思わずにはいられま せんでした。しかし、この事故を忘れまいとする人々もまだ大勢いてくれることを、本当にうれしく思います。被害者の苦しみを少しでも減らし、嘘をついてき た巨大な権力を処罰するために、私自身も決して挫けずに闘いたいと改めて思います。
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**『原発ゼロ』著書の紹介
「第5章 これでも原発を続けるのですか」
8 原発は差別の象徴 P225~ より
電気の恩恵を受けない人が犠牲を強いられる
小泉純一郎元首相が「原発即時ゼロ」と発言したことで、日本国内に波紋が広がっています。私は、人が人を差別することは許せないと思って生きてきましたので、弱者を切り捨てる小泉構造改革を断行した小泉さんは嫌いです。ですが、「最終処分場の目処がつかないのだから原発は止めるべきだ」という論理が正しいのは明らかです。自民党もしくは自民党を支持する政財界、電力業界の人々はこの発言を無責任だと言っていますが、処分場の問題を先送りにして、目先の利欲を満足させようということのほうが、よっぽど無責任だと私は思います。
それで、国会議員は最終処分場についてどのように考えているのかということですが、2013年12月20日号の『週刊朝日』に、原発政策について全衆議院議員に行ったアンケート調査の結果が掲載されており、これを見ると、アンケートを送った480人中きちんと回答して送り返してきたのが110人、そのうち「高レベル放射性廃棄物の地層処分」という項目に答えていたのは58人で、その回答内容は、「日本では無理」が28人、「必ず日本に建設」が21人、「日本に建設しなくても解決方法は存在する」が9人となっていました。
回答した半分以上の方が、日本ではないところに放射能のゴミを棄てようというのです。どこでしょうか? 海はダメです。 宇宙もダメです。 となれば、どこかよその国の土地、ということになります。
実は原発の海外セールスで日本は、ロシアや韓国との競争に負けないように、原発から出た核のゴミを引き取ることをセールスポイントにしています。自分の国で出たゴミも棄てる場所がないのに、どうするつもりなのかと思ったら、もともとウランを掘り出したその場所に送り返すというのです。
大変不思議だと私はいつも思うのですが、ウランが出る場所というのは、米国の場合もそうですし、オーストラリアの場合も、インドでもモンゴルでも、ほとんどが、いわゆる先住民と言われる人たちの住んでいるところなのです。この人たちは、もちろん電気の恩恵はほとんど受けていないわけですが、労働者として駆り出されて働いて被曝をし、使い終わったウランのゴミを投棄されてまた被曝をするという、そういう歴史がずっと続いています。
日本は一時、具体的な核のゴミ棄て場の候補地としてモンゴルを挙げており、モンゴルが拒否したためにその話はなくなったようですが、日本という国は、本当に恥ずかしい国だと思います。
先のアンケート結果と併せて、福島県の被災地から選出された自民党の坂本剛ニ議員による次のようなコメントが載っていました。
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私は「オンカロ」のような最終処分場を国内に作らなければならないと考えていますし、その際は首都機能移転とリンクさせるべきだと以前から訴えてきました。残念ながら、なかなか反響を呼びません。
最終処分場が作られるのは最も地盤の安定した場所です。つまり首都機能を移転させるのにも理想的なのです。新しい国会の真下の廃棄物を馳走処分し、その上で国会議員が働く。
国民に「安全である」とわかってもらうためには、それぐらいの覚悟を議員が示す必要があるのでないでしょうか。
『週刊朝日』(2013年12月20日号)掲載記事「国会真下にオンカロを」より
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まったく、私もそのとおりだと思います。
※続き『原発ゼロ』著書の紹介は、2016/1/7(木)22:00に投稿予定です。