*『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著者 雁屋 哲 を複数回に分け紹介します。8回目の紹介
美味しんぼ「鼻血問題」に答える 雁屋 哲
何度でも言おう。
「今の福島の環境なら、鼻血が出る人はいる」
これは”風評”ではない。”事実”である。
2年に及ぶ取材をへて著者がたどりついた結論はこうだ。
「福島の人よ、福島から逃げる勇気を持って下さい」
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**『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』著書の紹介
線量計の数値がころころ変わるのはなぜか
空気中を浮遊している放射性微粒子の存在を私は身をもって体験しました。
いわき市の海岸でも、福島市の中心でも、線量を測定していると線量計の数値がころころと変わる。
最初は、線量計が安物だからだと思いました。よく見かけるロシア製の黄色い小型のものよりは高級な国産のものですが、それでも携帯電話機程度の大きさで、検出器と線量計本体が別になっている高級なものとは違います。
こんなに数値が見ているうちにころころ変わるのは、この線量計が不安定なのだろうと思いました。
ところがあるとき、福島市のホテルの前で線量を測定していたときに、あるものの存在に気がついて愕然となったのです。
あるもの、とは何か。
それは風、です。
その日、福島のそのホテルの前は風が強かった。
それで、風の向きと強さで、線量計の数値が変わることに気がついたのです。
線量計の数値がころころ変わるのは、線量計が不安定だったからではなったのです。
風の向きと強さが変わると、線量計を取り巻く周囲の放射性微粒子の分布が変わるからだと私は気がつきました。
私の福島取材の同行していた人間が「福島第一原発の方向から風が吹いてくると線量計の数値が上がるみたいだ」といいました。
私は「それは気のせいだろう」といましたが、「いや、待てよ」と思い直しました。2012年の段階で、福島第一原発からは毎時1000万ベクレルを超える放射性物質が放出されていたのです(東京電力が2012年9月25日に発表した数値)。
であれば、福島第一原発の方向から風が吹いてくると、放射性微粒子の数が増えて線量計の数値が上がる、ということはあり得ます。
私はこの風の向きと強さで線量が変わることを体験して、福島の人々の放射線被曝の実状を認識することができたのです。
この私の認識が間違っていないことが、北海道がんセンター名誉院長、西尾正道氏の著書『正直ながんの話』(旬報社刊)の166~167頁を読んで確認できました。
そこでの記述をまとめると、
<<2013年7月南相馬市原町の某小学校前で、10日間大気を吸着させたフィルターをデジタル現像した結果、多くの放射性微粒子が確認された。
また、筑波の気象研究で事故後の大気中に浮かんでいるちりを取り集めた研究では、セシウムを高い濃度で含む不溶性の球場微粒子が多数認められている。>>
福島の人たちは単一の放射線源ではなく、大地、建物、植物、そして大気、という身の回りの環境すべてに存在している放射性微粒子から被曝しているのです。
いい変えれば、放射線源に取り囲まれて生活している。福島にいる限り放射線被曝から逃れることはできない。
これは、耐え難く恐ろしいことですが、今の福島の現実なのです。
福島の人々の放射線被曝の実状なのです。
※続き『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』は、10/26(月)22:00に投稿予定です。