情報公開制度について考える

情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

宮城県情報公開審査会 答申第56号 農地転用許可申請に係る行政文書部分開示決定に対する異議申立て

2004年05月26日 | 確認検査員の氏名/建築士の氏名
第1 審査会の結論
宮城県知事は,本件異議申立ての対象となった部分開示決定において開示しないこととした情報のうち,以下の情報を除き開示すべきである。

イ 農地転用許可申請者の私印の印影,電話番号,経営地総面積
ロ 申請地面積の必要性のうち,ふん1トン当たりの処理に必要な面積
ハ 建築物の設計図面に記録された建築士の私印の印影
ニ 飼養頭数,1日当たりの飼料の重量,1日当たりの用水使用量,1年当たりの平均的なふんの発生重量
ホ 堆きゅう肥の施用場所の所在地,所有者氏名(農地転用許可申請者の情報を除く)
ヘ 堆きゅう肥施用農地面積,堆きゅう肥施用方法(回数,1回の還元量,年間還元量)
ト 「顛末書」の本文の内容

第2 異議申立てに至る経過
(略)


第3 異議申立人の主張要旨
(略)


第4 実施機関の説明要旨
(略)


第5 審査会の判断理由
1 条例の基本的な考え方について
条例は,「地方自治の本旨にのっとり,県民の知る権利を尊重し,行政文書の開示を請求する権利」を明らかにすることにより,「県政運営の透明性の一層の向上を図り,もって県の有するその諸活動を説明する責務が全うされるようにするとともに,県民による県政の監視と参加の充実を推進し,及び県政に対する県民の理解と信頼を確保し,公正で開かれた県政の発展に寄与することを目的」として制定されたものであり,原則公開の理念の下に解釈,運用されなければならない。
当審査会は,この原則公開の理念に立って,条例を解釈し,以下判断するものである。

2 本件行政文書の内容について
審議の対象となる本件行政文書は,本件申請地に係る農地法第4条の規定による農地転用許可申請書,添付資料及び当該許可申請に係る関係資料であり,その具体的な内容は以下のとおりである。

① 本件申請地に係る「農地法第4条の規定による許可申請書」
② 本件申請地に係る登記簿謄本の写し
③ 「事業計画書概要」
④ 本件申請地位置図
⑤ 同上(土地の地番,面積,所有者氏名が追記されたもの)
⑥ 本件申請地に係る公図
⑦ 本件申請地に係る地積測量図
⑧ 本件申請地に係る建築物配置図
⑨ 本件申請地に係る建築物伏図
⑩ 本件申請地に係る建築物正面図,断面図
⑪ 水質汚濁防止法第7条第1項に係る受理書
⑫ ⑪に基づく解除指令
⑬ 「特定施設の構造」「家畜ふん尿等の利用・処理の方法」「用水及び排水の系統」
⑭ 特定施設位置図
⑮ 「排水同意書」
⑯ 「顛末書」
⑰ 「農地法第4条の規定による許可申請に係る意見書」
(以下,それぞれに付された通し番号により,これらの行政文書を,例えば「本件行政文書①」のように表記する。)
このうち,実施機関は,本件申請地に係る行政文書として特定した本件行政文書②については,法務局において何人も閲覧可能な情報であり,条例第8条第1項第2号ただし書イに該当するものとして開示したほかは,条例第8条第1項第2号又は第3号に該当するものとして一部を非開示としている。

3 条例第8条第1項第2号の該当性について
条例第8条第1項第2号は,「個人に関する情報(事業を営む個人の当該事業に関する情報を除く。)であって,特定の個人が識別され,若しくは識別され得るもの又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益が害されるおそれのあるもの」に該当する情報が記録されている行政文書を除き,実施機関は,行政文書の開示をしなければならないと規定している。これは,行政文書の開示による当該行政文書に記載されている第三者の権利利益の侵害を確実に回避し,個人の尊厳及び基本的人権を最大限に保護するため,個人が特定できる情報を包括的に非開示として保護することとしたものであり,また,条例第3条第1項後段は,実施機関に,個人に関する情報が十分保護されるよう最大限の配慮をすることを義務付け,その保護の徹底を図っている。
しかし,特定の個人が識別され,又は識別され得る情報の中にも,例外的に保護する必要がない情報として,条例第8条第1項第2号ただし書は,「イ 法令の規定により又は慣行として公開され,又は公開することが予定されている情報」又は「ロ 当該個人が公務員等(国家公務員法(昭和22年法律第120号)第2条第1項に規定する国家公務員(独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第2項に規定する特定独立行政法人の役員及び職員を除く。),独立行政法人等(独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)第2条第1項に規定する独立行政法人等をいう。以下同じ。)の役員及び職員並びに地方公務員法(昭和25年法律第261号)第2条に規定する地方公務員をいう。)である場合において,当該情報がその職務の遂行に係る情報であるときは,当該情報のうち,当該公務員等の職,氏名及び当該職務遂行の内容に係る部分」が記録されている行政文書については,同号本文に該当する場合であっても,行政文書の開示をしなければならないと規定している。

(1)実施機関が非開示とした情報
本件行政文書に記録された情報のうち,実施機関が条例第8条第1項第2号に該当するものとして非開示としているものは,以下の情報である。

本件行政文書① 申請者氏名,私印の印影,住所,電話番号及び職業,許可を受けようとする土地の所在,登記面積及び耕作者の氏名
本件行政文書③ 事業者名
本件行政文書⑤ 土地の境界線,地番及び氏名
本件行政文書⑨ 建築士の私印の印影
本件行政文書⑩ 建築士の私印の印影
本件行政文書⑪ 届出者氏名
本件行政文書⑫ 届出者住所及び氏名
本件行政文書⑮ 申請者氏名及び住所
本件行政文書⑯ 提出年月日,提出先,作成者氏名及び私印の印影,表題,本文
本件行政文書⑰ 申請者住所及び氏名

(2)本件申請者に係る情報
本件申請者は,農業を営む個人であるが,条例第8条第1項第2号は,個人に関する情報から「事業を営む個人の当該事業に関する情報」を除外している。したがって,農業を営む個人に係る当該事業に係る情報(上記3-(1)に掲げた情報のうち本件行政文書⑤,⑨及び⑩を除くもの)は,基本的には条例第8条第1項第3号に該当するか否かによって開示,非開示が判断されるべきものと認められる。(これらについては,「4 条例第8条第1項第3号の該当性について」において検討する。)
ただし,本件行政文書①に記録されている本件申請者の私印の印影及び電話番号並びに本件行政文書⑯に記録されている本件申請者の私印の印影は,専ら事業用に用いられているものとまでは認められず,むしろ個人に関する情報として条例第8条第1項第2号に該当するか否かによって開示,非開示が判断されるべきものと認められる。そして,これらの情報は,特定の個人が識別され得る情報又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益が害されるおそれのあるものであることから,条例第8条第1項第2号に該当し,同号ただし書に該当せず,非開示とすることが適当である。

(3)本件申請者以外の情報
本件行政文書⑤は,既成の図面に土地の境界線,地番及び氏名を追記したものであるが,実施機関の説明によれば,土地の境界線は法務局で閲覧できる公図とほぼ同一のものであり,土地に付されている数字は公図で確認できる土地の地番と同一のものであり,氏名は登記簿上の所有者にほかならない。したがって,これらの情報は法令の規定により公開されているものであり,条例第8条第1項第2号ただし書イに該当し,開示することが適当である。
また,本件行政文書⑨及び本件行政文書⑩には,建築物の伏図,正面図等を作成した建築士の私印の印影が記録されているが,この印影は専ら事業用に用いられているものとまでは認められず,3-(2)で検討した農業を営む個人の私印の印影と同様に,特定の個人が識別され得る情報又は特定の個人を識別することはできないが,公開することにより,なお個人の権利利益が害されるおそれのあるものであることから,条例第8条第1項第2号に該当し,同号ただし書に該当せず,非開示とすることが適当である。

4 条例第8条第1項第3号の該当性について
条例第8条第1項第3号本文は,「法人その他の団体(国,独立行政法人等及び地方公共団体を除く。以下「法人等」という。)に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であって,公開することにより,当該法人等又は当該個人の権利,競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」に該当する情報が記録されている行政文書を除き,実施機関は,行政文書の開示をしなければならないと規定している。また,同号ただし書は,「事業活動によって生じ,又は生ずるおそれのある危害から人の生命,身体,健康,生活又は財産を保護するため,公開することが必要であると認められる情報」が記録されている行政文書については,同号本文に該当する場合であっても,行政文書の開示をしなければならないと規定している。
同号本文に規定する「権利,競争上の地位その他正当な利益が損なわれると認められるもの」とは,生産技術,営業,販売上のノウハウに関する情報若しくは経営方針,経理,人事等の事業活動を行う上での内部管理に属する情報であって,公開することにより,法人等若しくは事業を営む個人の事業活動が損なわれると認められるもの又は法人等若しくは事業を営む個人の名誉,社会的評価,社会的活動の自由等が損なわれると認められる情報をいうと解される。

(1)実施機関が非開示とした情報
本件行政文書に記録された情報のうち,実施機関が条例第8条第1項第3号に該当するものとして非開示としているもの(aに分類)及び実施機関は同条第1項第2号に該当するものとして非開示としているが,同条第1項第3号に該当するか否かによって開示,非開示が判断されるべきものと認められるもの(bに分類)は,以下の情報である。

本件行政文書①
a:転用面積,転用計画欄の転用後の用途,転用事由の詳細,工事計画,土地造成面積,建築物名称,棟数及び建築面積,自己資金の額,被害防除施設の概要,経営地総面積
b:申請者氏名,住所及び職業,許可を受けようとする土地の所在,登記面積及び耕作者の氏名

本件行政文書③
a:転用目的,土地の所在,面積,申請地選定理由,申請地面積の必要性,用排水計画,被害防除計画,資金計画に係る自己資金の額,建築物種別,棟数,面積,建築費用の単価及び総金額
b:事業者名

本件行政文書④
a:建築物予定地

本件行政文書⑥
a:本件申請地の所在,形状

本件行政文書⑦
a:本件申請地の地積

本件行政文書⑧
a:本件申請地内の建築物の配置

本件行政文書⑨
a:建築物伏図,工事名,設計者の事務所名,事務所登録番号,建築士の級,建築士登録番号,建築士氏名

本件行政文書⑩
a:建築物正面図,断面図,工事名,設計者の事務所名,事務所登録番号,建築士の級,建築士登録番号,建築士氏名

本件行政文書⑪
a:特定施設の種類
b:届出者氏名

本件行政文書⑫
b:届出者住所及び氏名

本件行政文書⑬
a:畜房の構造,畜房の寸法,房数,畜房の面積,畜種,飼養頭数,畜舎の種別,工事着手年月日,工事完成年月日,使用開始年月日,飼料等の使用量,もみがら等の使用量,ふんの発生量,堆きゅう肥生成量,特定施設の構造,寸法,容量,堆きゅう肥施用場所所在地,所有者氏名,面積,作物,堆きゅう肥施用回数,1回の還元量,年間還元量,用水の用途,使用量及び種類

本件行政文書⑭
a:特定施設位置

本件行政文書⑮
a:施設所在地
b:申請者氏名及び住所

本件行政文書⑯
b:提出年月日,提出先,作成者氏名,表題,本文

本件行政文書⑰
a:本件申請地の地番,地目別面積,事業計画,農地の区分別面積及び割合,転用面積
b:申請者住所及び氏名

(2)農業委員会の会議資料及び議事録において明らかにされている情報
農業委員会は,区域内における農地法第4条の農地転用に係る事項を処理し(農法委員会法第6条第1項第1号),農地転用許可申請があった場合,農業委員会はその意思決定機関である総会において当該申請事案を付議することとされている(農地法施行令(昭和27年政令第445号)第1条の7第2項)。この農業委員会の総会は公開で行われることとされており(農業委員会法第26条),さらにその議事録は縦覧に供さなければならないとされている(農業委員会法第27条)。
本件農地転用許可申請については,平成14年1月24日の川崎町農業委員会の総会において付議されているが,その際の会議資料及び議事録において明らかにされている情報は,上記4-(1)のうち,本件行政文書①における申請者氏名,住所及び職業,許可を受けようとする土地の所在,登記面積及び耕作者の氏名,転用面積,転用計画欄の転用後の用途,工事計画,土地造成面積,建築物名称,棟数及び建築面積並びに自己資金の額,本件行政文書③における事業者名,転用目的,土地の所在,面積,資金計画に係る自己資金の額,建築物種別,棟数,面積及び総金額,本件行政文書⑬における畜種並びに本件行政文書⑰における申請者の住所及び氏名,本件申請地の地番,地目別面積,事業計画,農地の区分別面積及び割合並びに転用面積である。
これら農業委員会の会議資料及び議事録において明らかにされている情報は,公開した場合,農業を営む個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が新たに損なわれるほどの農業に関する技術や事業上のノウハウに関する情報とは認められない。したがって,これらの情報は,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
また,上記4-(1)のうち,本件行政文書⑪における届出者氏名及び特定施設の種類,本件行政文書⑫における届出者住所及び氏名,本件行政文書⑬における畜舎の種別,工事完成年月日及び特定施設の容量等並びに本件行政文書⑮における申請者氏名及び住所並びに施設所在地は,農業委員会の会議資料及び議事録から直接明らかになる情報ではないが,本件行政文書⑪,本件行政文書⑫,本件行政文書⑬及び本件行政文書⑮が農地転用許可申請に添付された文書であることから,これらの情報は,農業委員会の会議資料及び議事録で明らかになっている情報から類推が可能なものであると認められる。したがって,これらの情報についても,公開しても,農業を営む個人の事業活動上の正当な利益が損なわれるとは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。

(3)その他の情報
イ 上記4-(1)のうち,本件行政文書①における転用事由の詳細及び被害防除施設の概要,本件行政文書③における申請地選定理由,申請地面積の必要性(ふんの排出重量及び1トン当たりの処理に必要な面積を除く),用排水計画,被害防除計画及び建築費用の単価,本件行政文書④における建築物予定地,本件行政文書⑧における本件申請地内の建築物の配置,本件行政文書⑨における建築物伏図及び工事名,本件行政文書⑩における建築物正面図,断面図及び工事名並びに本件行政文書⑭における特定施設の位置については,農業を営む個人の当該事業に関する情報ではあるが,これらは公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるほどの農業に関する技術や事業上のノウハウに関する情報とまでは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
ロ 上記4-(1)のうち本件行政文書⑥及び本件行政文書⑦は,法務局で何人でも閲覧可能な公図及び地積測量図であり,農業を営む個人の当該事業に関する情報ではあるが,これらを公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるとは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
ハ 上記4-(1)のうち本件行政文書①における経営地総面積は,本件農地転用許可申請に直接関係のない本件申請者の事業情報であり,公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,非開示とすることが適当である。
ニ 上記4-(1)のうち本件行政文書⑨及び本件行政文書⑩における図面を作成した建築士事務所の名称及び事務所登録番号は,本件申請者が図面作成業務を委託した相手方が分かる情報であり,当該申請者の取引先情報ともいえるが,公開することにより本件申請者の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるほどの事業上のノウハウ又は内部管理に関する情報とまでは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
また,これらの情報は,図面作成業務を受託した建築士事務所の取引先に係る情報ともいえるが,公開することにより本件申請者と取引関係にあることが判明したからといって,建築設計業を営む上で当該建築事務所の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるほどの事業上のノウハウ又は内部管理に関する情報とまでは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
ホ 条例の解釈及び運用基準によると,条例第8条第1項第3号にいう「事業を営む個人」とは,地方税法(昭和25年法律第226号)第72条の2第7項から第9項までに掲げる事業を営む個人をいうとされており,建築士業は,同法第72条の2第9項第16号に定める「設計監督者業」に該当し,さらに,実施機関の説明によれば本件行政文書⑨を作成した建築士は被雇用者ではないことから,当該建築士は条例第8条第1項第3号にいう「事業を営む個人」に該当する。したがって,上記4-(1)のうち本件行政文書⑨及び本件行政文書⑩における建築士の級,建築士登録番号及び建築士氏名については,建築士業を営む個人の当該事業に関する情報であるが,公開することにより当該建築士の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるとは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
ヘ 上記4-(1)のうち本件行政文書⑬における飼養頭数は,本件申請者の家畜飼養の規模が明らかになる情報であり,公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,非開示とすることが適当である。
また,実施機関の説明によれば,畜種1頭の1日当たりの平均的な飼料摂取重量,1日当たりの平均的な用水の使用量及び1年当たりの平均的なふんの発生重量は一般に入手可能な統計情報であり,それぞれの数値で全頭分の1日当たりの飼料の重量,1日当たりの用水使用量,1年当たりのふんの発生重量を除すると飼養頭数を推定することが可能になる。したがって,本件行政文書⑬における1日当たりの飼料の重量(全頭分),1日当たりの用水使用量(全頭分)及び1年当たりのふんの発生重量(全頭分)並びに本件行政文書③における申請地面積の必要性のうち,ふんの排出重量は,公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,非開示とすることが適当である。
なお,本件行政文書③における申請地面積の必要性のうち,堆きゅう肥の生成に関し,ふん1トン当たりの処理に必要な面積については,審査会が上記4-(2)において転用面積を開示することが適当と判断していることを前提に検討すると,転用面積をふん1トン当たりの処理に必要な面積で除すると,非開示とすることが適当なふんの排出重量が明らかになる。したがって,ふん1トン当たりの処理に必要な面積は,公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,非開示とすることが適当である。
さらに,上記4-(1)のうち本件行政文書⑬における堆きゅう肥の施用場所の所在地及び所有者氏名(いずれも本件申請者の情報を除く。)は,堆きゅう肥の還元先として本件申請者又は農地所有者の取引先に係る情報であり,また,堆きゅう肥施用農地面積,堆きゅう肥施用方法(回数,1回の還元量,年間還元量)は本件申請者又は農地所有者の内部管理情報若しくは事業活動上のノウハウに関する情報であり,公開することにより当該個人の権利,競争上の地位その他事業上の正当な利益が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,非開示とすることが適当である。
ト 上記4-(1)のうち,本件行政文書⑬に記録された情報で上記ヘで検討した情報以外のものについては,公開することにより,飼養頭数が推定されるものではなく,また,本件申請者の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるほどの事業上のノウハウ又は内部管理に関する情報とまでは認められないことから,条例第8条第1項第3号に該当せず,開示することが適当である。
チ 上記4-(1)のうち,本件行政文書⑯における提出年月日,提出先,作成者氏名及び表題については,農業を営む個人の当該事業に関する情報であり,当該文書が存在すること自体は農地転用許可申請から許可に至るまでの一定の経緯を説明するために必要な情報であると考えられること,公開することにより,事業を営む本件申請者の権利,競争上の地位その他事業活動上の正当な利益が損なわれるとは認められないことから,開示することが適当である。ただし,本文の内容については,当該行政文書の性質上,本件申請者にとって不名誉な内容が記録されており,公開することにより,事業を営む本件申請者の名誉,社会的評価,社会的活動の自由等が損なわれると認められることから,条例第8条第1項第3号に該当し,同号により非開示とすることが適当である(実施機関は,本件行政文書⑯における本文の内容につき,同項第2号を理由に非開示としたが,結論において変わりはない。)。

5 結 論
以上のとおり,実施機関が非開示とした情報のうち,本件行政文書①における本件申請者の私印の印影及び電話番号,本件行政文書⑨及び本件行政文書⑩における建築物の設計図面に記録された建築士の私印の印影,本件行政文書⑯における本件申請者の私印の印影を条例第8条第1項第2号を理由に非開示としたこと並びに本件行政文書①における経営地総面積,本件行政文書③における申請地面積の必要性のうち,ふんの排出重量及びふん1トン当たりの処理に必要な面積並びに本件行政文書⑬における飼養頭数,1日当たりの飼料の重量,1日当たりの用水使用量,1年当たりの平均的なふんの発生重量,堆きゅう肥の施用場所の所在地,所有者氏名(本件申請者の情報を除く),堆きゅう肥施用農地面積及び堆きゅう肥施用方法(回数,1回の還元量及び年間還元量)を同項第3号を理由に非開示としたこと並びに本件行政文書⑯における本文の内容を非開示としたことは妥当であるが,その余の情報を同項第2号又は同項第3号を理由に非開示としたことは妥当でない。

第6 審査の経過
当審査会の処理経過は,別紙のとおりである。

別紙
(略)


コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。