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情報公開審査会の答申などを集めて載せています。

三重県情報公開審査会 答申第315号 県が当事者となった訴訟、非訟、調停、行政不服申立の各事件…

2008年04月21日 | 法令秘情報
答申第315号
答    申

 
1 審査会の結論
 実施機関は、本件部分開示決定のうち、本件異議申立てに係る滞納税目を非開示とした部分を取り消し、開示すべきである。
 
2 異議申立ての趣旨
 異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成19年10月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「県が当事者となった訴訟、非訟、調停、行政不服申立の各事件に関するすべての文書(但し、知事あての分は平成17年8月以降、その他は平成16年度以降分、但し、係争中も含む)」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成19年11月22日付けで行った公文書部分開示決定のうち、滞納税目を非開示とした部分(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
 
3 本件対象公文書について
本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、次のとおりである。
(1) 審査請求書について(平成17年11月18日決裁)
(2) 審査請求に対する弁明書の提出について(平成17年12月2日決裁)
(3) 審査請求にかかる裁決について(平成18年1月16日供覧)
(4) 審査請求に対する弁明書の提出について(平成19年3月20日決裁)
(5) 審査請求にかかる裁決について(平成19年5月29日供覧)
 
4 実施機関の説明要旨
 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
 
○条例第7条第1号(法令秘情報)に該当
 地方税法(昭和25年法律第226号)第22条(秘密漏えいに関する罪)の守秘義務により法令秘情報に該当する。滞納税目は、納税者が納期限までに地方団体の徴収金を完納しない場合に、徴税吏員が税目、金額等を調査し、督促状を発するものであり、税務調査事務に関して知り得た秘密に該当する。
○条例第7条第2号(個人情報)に該当
 本件対象公文書では、課税地を所管する県税事務所が特定されていることから、地域が限定されており、さらに滞納税目を開示すると、税目によっては特定の個人が識別され、個人の権利利益を害することがあり得る。
 
5 異議申立て理由
対象公文書において、地方税法の条項を開示しながら、「滞納税目」を非開示とする理由がない。
 
6 審査会の判断
(1) 基本的な考え方
条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。
 
(2) 条例第7条第1号(法令秘情報)の意義について
本号は、法令若しくは他の条例の定めるところによる、又は実施機関が法律上従う義務を有する各大臣その他国の機関の指示による場合の非開示を定めたものである。 法令若しくは他の条例の定めるところにより公にすることができない情報は、この条例によっても開示できないことを確認的に規定するとともに、各大臣その他国の機関からの法的拘束力を持った指示により公にすることができない情報については、非開示とすることを定めたものである。

(3) 条例第7条第1号(法令秘情報)の該当性について
実施機関は、本決定で非開示とした滞納税目は、税務職員に与えられた調査権限に基づいて知り得た秘密であり、地方税法第22条(秘密漏えいに関する罪)に基づく守秘義務により、法令秘情報に該当すると主張する。確かに、地方税法第22条は税務事務への信頼確保等を目的として定められた規定であり、地方税に関する調査に関する事務に関して知り得た情報は、一般に本号に該当するものと考えられる。
しかし、実施機関は、本件対象公文書においては、滞納処分の根拠となる地方税法の条項を開示していることから、非開示とした滞納税目は容易に推測できるため、本号により非開示とする必要性は乏しい。
したがって、本件対象公文書に記載された滞納税目を本号に該当するとした実施機関の判断は、妥当でない。
 
(4) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について
個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。

(5) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について
実施機関は、本件対象公文書では、課税地を所管する県税事務所が特定されていることから、地域が限定されており、さらに滞納税目を開示すると、税目によっては特定の個人が識別され、個人の権利利益を害することがあり得ると主張する。
しかし、本決定により非開示とされた滞納税目は上記(3)で述べたとおり容易に推測できるところ、当該税目に係る課税客体は多数存することが想定されるため、当該滞納税目を開示しても、特定の個人が識別されることは考えられない。
したがって、本件対象公文書に記載された滞納税目を本号に該当するとした実施機関の判断は、妥当でない。
 
(6) 結論
よって、主文のとおり答申する。
 
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
 
別紙1
審査会の処理経過
年 月 日処 理 内 容
20. 1. 4・諮問書の受理
20. 1. 9・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
20. 1.29・非開示理由説明書の受理
20. 2. 4・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
20. 3.21・異議申立人の口頭意見陳述に代わる陳述書の受理
20. 3.21・書面審理
・実施機関の補足説明
・審議                (第293回審査会)
20. 4.21・審議
・答申                (第295回審査会)

 
三重県情報公開審査会委員
職  名氏    名役  職  等
  会  長岡 本  祐 次元三重短期大学長
※ 委  員丸 山  康 人四日市看護医療大学副学長
※ 委  員藤 野  奈津子三重短期大学准教授
※ 委  員室 木  徹 亮弁護士
  委  員伊 藤    睦三重大学人文学部准教授
  会長職務代理者樹 神    成三重大学人文学部教授
  委  員渡 辺  澄 子元三重中京大学短期大学部教授

なお、本件事案については、※印を付した委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。


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